第89話 魔力0の大賢者、またまたダンジョン探索③

 ミスリルの鉱脈まで解放した僕たちだったけど、目的のものはまだ手に入っていない。

  

 だからここから下は僕とラーサとアイラの3人で下っていくことになる。


 第6層は石や金属が好きな蟲系の魔物が多い地帯だった。

 

「……キラキラしてる」

「宝石みたいですね」

「ダイヤモンドスコーピオンだね。ダイヤの原石を食べると消化された成分でダイヤみたいに輝くんだ」


 見た目もそのまんまダイヤみたいなサソリだ。ただ、ダイヤだけに衝撃に弱い。だからちょっと殴るだけで粉々になっちゃう。


「ほら、簡単に割れた」

「……マゼルだからだと思う」

「私が杖で殴っても無理みたいなのです」


 うん、流石に杖じゃ厳しいかな。でもハンマーでガンガン叩けばいけるんじゃないかな?


「お兄様拾われないのですか?」

「これじゃあ剣は作れないからね」

「……そうだけど」


 あれ? 何か2人ともダイヤモンドに興味ありそうだね。


「必要なら遠慮しないで持っていってもいいんだよ?」

「……マゼルに拾って欲しい」

「わ、私もお兄様に取ってもらいたいです!」


 えぇ? 結構粉々に砕けたから、2人でも拾えると思うけど、う~ん、でもまぁそこまで言うなら。


「じゃあ、はい。一番綺麗そうなのを拾ったよ~」

「……嬉しい」

「うぅ、お兄様からの贈り物! 私大事にします!」


 え? いや贈り物ってほどではないと思うんだけど拾って手渡ししただけだし……でも喜んでくれたならいいかな。


 そこから更に先に進むけど、宝石系の魔物がよく出てきたね。宝石鬼とかいう、やたらネックレスや指輪をギラギラ身につけた魔物も出てきたよ。


 倒したけどね。2人に魔物が落とした他の宝石もいるか聞いてみたけど、そんなに幾つも貰っても折角の価値が薄れるとか言うことで拾わなかった。


 う~ん、そういうものなのかな? 宝石のことは僕も詳しくないからね。


 そして地下8層まで降りてきたけど、そこからまた一変。天井から壁、床までアダマンタイトの混じった石で出来ていた。変色の仕方が独特だからわかりやすいんだよね。


 8層を攻略していく僕たちだけど、懐かしい魔物と出くわした。


「ゴオォ……」

「アダマンゴーレムだねぇ」

「……こ、これがアダマンゴーレム……」

「すごく、おっきぃ、です」


 確かに見上げるほど大きいね。僕がラーサとアイラを肩車してもまだ追いつかないほど大きいよ。


 さてさて、前回戦った時よりやっぱり年数も経っているし手強くなっているかな?


「ゴオォオオォオオ!」

「2人共ここは僕に任せて」

「……離れてみてる」

「お兄様なら勝てると信じてます!」


 アダマンゴーレムがその巨大な拳で殴りかかってきた。なんの! ヒョイッと避けて見せるけど、更に腕を振り子のように振って連続パンチを放ってくる。


 振るごとに勢いがましていく。上半身も∞のように独特の軌跡を描いて動いているね。

 だけど、顎がガラ空きだよ! 僕は踏み込んで顎目掛けて拳を突き上げた。アッパーカットというパンチ技だ。勿論そのままだとリーチが足りないけど、氣を乗せることで衝撃がその顎を貫くはずだ。


 尤もこれだけの巨体だし、こんなアッパーひとつでなんとかなるとは思ってないけ――


――パァアアァァン! パラパラパラ……。


 ……あれ? 何か拳を突き上げた瞬間、アダマンゴーレムの頭が破裂して、そのまま横倒しに倒れちゃった。


 う~ん……。


「はは、倒しちゃったみたい」

「……これが伝説の超金属破壊魔法オリハルコンブレイク――」

「お兄様、私、信じておりました。それにしてもまさに一閃! 素晴らしいです!」


 う~ん、まぁこれはアダマンタイトなんだけどね。ラーサがキラキラした瞳で僕を見てきていてちょっと照れくさい。


 それはそれとして、アダマンゴーレムがいたのは広めの部屋だったんだけどキョロキョロと見回してある発見をした。


「あ! この辺りはアダマンタイトの鉱脈だよ。良かったね、上のみんなも喜んでくれるかな?」

「……マゼル、多分、他の人じゃここまで降りてくるのが困難」

「途中の宝石の魔物も普通に考えれば十分脅威ですもんね……」


 え~? そんなに大変かなぁ? う~ん、ここまで降りてくればアダマンゴーレムも意外と脆いしいけると思うんだけどね。


「でもお兄様。これで目的の金属が手に入りましたね!」

「え? いや、まだかな~」

「……アダマンタイトでも駄目?」

「う~ん、確かにアダマンタイトも鉄よりは強いけど……」


 この金属はちょっと重いんだよね。父様に贈る剣のイメージとはちょっと違う気がして。


 だからもう少しだけ2人に付き合ってもらうことにした。


 その後は、下への階段を見つけたから降りて、地下9層にはこれまで倒した魔物の強化版みたいのがいっぱい出てきたけど――


「……アダマンランス」

「サンダーブレイク!」


 こんな感じで2人も魔法で積極的に魔物を狩れるようになっていたよ。うん、なんだかんだでラーサやアイラも強くなってるね。8層でアダマンタイト絡みの魔物を多く倒したことでアイラの錬金魔法でもアダマンタイトが構築出来るようになったし、ラーサも目的だった雷魔法を会得したしね。


 さて、そんなわけでいよいよ10層までやってきたけど、雰囲気的にここはメインの番人がいる層だね。

 

「ここが最後っぽいかな」

「目的の金属が見つかればいいですね」

「……ボスなら倒したら宝箱が出るかも」

 

 うん、そうだね。ここまで来ちゃったから最後の望みは宝箱になるかな?


 なので扉を開けて、中にはいる。そこにいたのは――


「ヒヒー!」


 全身が燃えたような体を持つ巨大な猿といった様相の火狒々ヒヒヒだった。


 これは、もしかしたら。とにかく僕たちはボスと戦いを演じることに。


「……アダマンゲージ」

「ギガサンダー!」

「ヒヒヒヒヒヒッ!」


 アイラは魔法で出来た檻で捕らえようと、ラーサは巨大な電撃で仕留めようとそれぞれ魔法を行使するけど火狒々はすばしっこい動きで魔法を避け、縦横無尽に立体的な動きで駆け回りながら炎を連射してくる。


 2人にも炎が近づいていたけど、地面を殴って床を突き上げ、壁を作って当たるのを防いだ。


「そっちが炎なら僕は氷だ! はぁああぁああああ!」


 僕は気化熱を応用し周囲の熱を一気に奪い、ラーサとアイラに影響が出ない範囲で部屋全体を凍らせた。


 どうだ! これで少しは効いて!


――ピキィイイィイイイン!


「……ボスが凍ってる」

「炎ごと凍ってますね。こ、これが大賢者の伝説の永久氷結魔法というエターナルゼロ……」


 いやいや、そんな物騒そうな名前の魔法なんかじゃないからね! これ物理だし!


 ふぅ、とにかく凍った火狒々は拳で砕く。するとキラキラと煌く宝箱が出現した。


 うん! これは期待が出来るかな。そして中身を確認したわけだけど。


「やった! これはヒヒイロカネだ!」

 

 良かった、これなら父様の新しい剣を作るのにピッタリだよ!

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