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読者選考のある賞には応募しないと牧野さんが仰っていたので、今回に限って言えばそれは違うと思いましたので筆を取りました。
オーバー30歳主人公コンテスト 大賞『木星で春を待つ鬼』について
https://kakuyomu.jp/contests/over30_main_character#result
この結果を見て、まず皆が驚いたことでしょう。決して低くないクオリティの作品群から、よりによってハードSFを大賞に持ってきたのですから。
この意味は、カクヨムとカドカワからの我々に対する挑戦状です。
いや、試金石と言った方がいいかも知れない。言葉の響き的にも。うん。
カクヨムでSFを推進する立ち位置の私だからこそ、あえて自虐として言いますが、そもそも書籍化を前提としたコンテストでSFを選ぶことは、売り上げを想定しなければならないレーベルにとってかなりリスキーな選択であることは間違いありません。はっきり言って売れないのです。
これが早川書房や、東京創元社のように既存のハードSFファンを固定層として持っているなら話は変わってくるのですが、富士見L文庫のメイン顧客は恋愛要素を含んだ後宮モノが大好きな乙女達。おまけに既刊本にはSFのジャンル自体が存在しない。唯一のアドバンテージは、活躍する女性が主人公というだけ。
「あら、富士見から新刊が出てるじゃない。ふむふむ、ヒロインはアラサーの考古学者? きっと考古学の教授と禁断の愛に溺れるか、研究室の学生と乳繰り合いながら色んな処を発掘しちゃう話ね!」
と早合点して読み始めたら、いきなり宇宙人の人工生命と量子コンピュータが出てきて
「なんじゃコラ? なめとんのか! 何言うとるのか分からんのじゃボケぇ!」
とキャラを忘れて怒り狂うに決まってます。
こんなことは誰もがあり得ないと思って当然の判断なのです。
それでも、編集部がこの暴挙に出た理由は何があるでしょうか?
大きな要因として以下が考えられます。
・異世界転生ジャンルが行き詰まりを感じてきた
・小説サイトが乱立し、生き残りをかけて独自色を出していかなければならない
・SFは当たれば大きい
この三つです。
当該作品の売上げを見て、今後の舵を切るべき方向を見定めようとしているのです(須藤的妄想)。これは年々売上げが低下し続けている出版社にとっても同様のことが言えるかも知れません。
しかし、彼らが目論見通りに儲けるためにはいくつもの課題があります。まず書籍の表紙が肌色でないと買わない層を切り捨てる覚悟が必要でしょう。異世界モノの客層はほぼこれです。どちらかと言えばハードSFファンは銀色表紙を好むのです(須藤的偏見)。
そして、次に重要なことはSF警察の撲滅。彼らの存在がSF界を圧迫し、新たな芽を育成し難くしていることは、歴史が証明している事実なのです。何よりコメント欄が荒れてしまいますので、折角の良作であっても普通の人が書き込みし難くなりますし、かと言ってSF警察を取り締まるためのSF公安を発足しても同じことになります。対策は色々とあると思いますが、カクヨム自身がその土台を作っていかなければなりません。
話が逸れましたが、重要なことは、今出版界では大きな転換点を迎えていることです。今までの傾向、今までの対策は今後通用しなくなる可能性が出てきました。
牧野さんは職業病として常に賞の傾向を研究されて挑んでいましたが、それ故に今回の選考基準は想定外過ぎて対応出来ませんでした。むしろ分析が的確であればある程に当然の帰結です。ですが、彼らがジリ貧の今こそ、その特性は牧野さんの武器ではありませんか。探偵サウナとブスのヒット数をきちんと分析されておられますか? 私が見る限り、読者選考の有無ではなく、読者が読みやすく楽しませることを主眼に置いた作品が評価されている部分は同じではないかなと思いました。
まずは体調を整えて、ウィルスと人類の関係について考察を進めれば、牧野さんならきっと良いSFが書けると思うのですが(かける)。
作者からの返信
須藤様
熱いコメントありがとうございます。
読者選考……精神力の減り方がエゲツないんですよ……豆腐メンタルの私では読者選考期間を耐え抜ける気がしない……
そういえば死んでいたので、30コンの突破作品の事を何も調べていなかったので見てみました。
確かにSF。富士見L文庫さんから発売するとしたら大博打ですね。
でも……
これは確かに、見方を変えるととてもチャンスな気がします。
SFは博打するには硬化したジャンルである気もしますが、その代わり風穴があけば嵐が巻き起こせる。確かに確かに。編集部が万馬券握りしめている姿が見える……あ、でも勝てないジャンルではないですよね。愛好家は多いですし(だから硬化しやすいんだし)
SF警察の話。Twitterで須藤さんがあげてらっしゃった記事も読みました。そしてそのネタとなっていたものも。あれはよろしくない。そもそもの「娯楽」というものを勘違いしているレビューでしたね。こちとら論文探してるんじゃねーよ。あ、話が逸れた。
散々「今売れる作品しか興味がない」「自分で面白い作品を見つける気がない」と罵られてきた編集部が、重い腰をあげたような気がします。
そうなると、確かに私が普段やっている傾向と対策では上手くいかないですね。
でも、そこを逆手に取ってニッチジャンルの隆盛の足掛かりを作るチャンスではあると思います。
私も、ネットを海を徘徊しまくって(介護中動けないから目しか使えなかった)感じた情勢とそれを打破したいと燻っている人たちがいる事、空気は間違いなくそちらに動き始めようとしている事、その風と波を逃がさないように、今後動いていこうと思います!
手始めに、今回受賞に至った作品の分析ですね。そういえばやってなかったです。まずは読んでみたいと思います。
あ!
なんか最後にサラっと勧誘された!!
SFジャンル……エージェントオブシールドはSFに入れても良いです?
スチームパンクはSFに入りますか?
それであれば……ちょっと考える事ぐらいからなら出来る……かも……?
いや、かけるかどうかは分かりませんからねっ!!!
元気でました。
コメントありがとうございました!
あけましておめでとうございます!
このエッセイの更新を見ることができてほっとしています。
最愛のワンコの介護が終わりって、まさか……と思いましたが、そのまさかなんですね。今までの経過から溺愛されていただろうワンコ様のことを思うと辛いです。
(今ふと思いついたことがありますが、別枠で述べます)
保護者S様のコメントを自分も読みました。思わずなるほど、と思いました。
むしろ行き詰まっている今だからこそ、新たな活路を求めている、そうかもしれませんね。そして新しいジャンルだからこそ、何度か外れもありながらいつかそれが定番になる。だから一個一個にめげることなく沢山ボールを投げ続ければどこかでヒットするかもしれない、のかもしれませんね! ニッチ層ってでも大事だと思いますよ、特に自分は「売れる作品」はそもそも書ける気がしないので、ニッチ層にヒットしてくれることを祈りながら自分の書けるものを書くしかできないです。
牧野様のように分析して狙えるのはすごいことだと思います。
無理せずに、楽しくお互い頑張りましょう!
作者からの返信
木沢様
コメントありがとうございます。
あけましておめでとうございます!
すっかり遅くなってしまいました……
そうですね。老犬介護だったので、終わりとはつまり……ですね。
(ワンコの方の話はあちらで返信しますね)
今の飽和状態による息苦しさで、派生系・亜種系ジャンルが出てきていますが、そんな小さな変化ではなく、ドカンとくる変化が待っている気がするのですよね。
昔、スレイヤーズ(ファンなんです)やオーフェンで出来た異世界・魔法モノ隆盛の後、来たのがハルヒを代表する学園ものでした。(正直ハルヒは学園ものというよりSFな気がするけど)。
過去にもそういった流れがあるので、今はまさにその時のような気がしています。
ここでふと思ったのですが。
『売れる作品』というより、今流行ってる作品が私たちには肌に合わないだけのような気がしますね。
例えば、木沢さんはショートショートや短編が得意で、かつ、(個人的な感覚ですが)世にも奇妙な物語的な流れの作品がお得意ですよね。
世にも奇妙な物語が、テレビで毎週やっていた時代があるように、そういったものが好まれる風潮も過去あったワケです。
だから、『今現在』と違うだけで『今後はわからない』のですよね、やはり。時代は繰り返すとよく言われますし……
だから、まぁやっぱり『書き続ける』しかないのかもしれませんけどね。
分析は職業病です……(お客様の要望から、本当は何を望んでいるのかを感じ取るのがIT系の要件定義に必要なので)
しかも、分析した通りに書けてるワケではないので(苦笑い
でも、頑張りますね。
コメントありがとうございました!