第114話 闖入者
好きな音楽をいつもひとりで奏でていた。
それを寂しいと感じたことはなかったが、一度誰かと奏でる楽しさを知ってしまった今は、ひとり竪琴を弾く時間を空しく感じていた。
彼女の声に合わせて弾きたい。
ああ、それ以上に会いたくてたまらない。
その時、コツコツと石の扉がノックされた。
アポロンは咄嗟に飛び起きる。
彼女かもしれない――。
その期待に左胸が高鳴るのを感じて、自分自身へ驚愕した。
いつもよりずっと激しく早鐘を打つ心臓はどう考えても異常であるはずなのに、とても心地よいのだ。
けれどその期待は見事に打ち砕かれた。
美しく彫刻された扉から現れたのは、いつもの女官だった。
アポロンはあからさまに舌打ちする。
女官はその手に瑞々しい果物が乗った
重傷を負った彼への見舞品だろうか。
「誰からの贈り物?」
うんざりとした口調で発せられた問いに、女官は淡々と「さぁ、分かりません」とだけ答える。
アポロンは特に気にかける様子もなく「そう」とだけ言って女官を下がらせた。
――どうせ彼だろう。
負傷してからというもの、毎日のように見舞品が送られてくる。
それもアポロンの嗜好をよく理解して選んでいると思われる品々だ。
暫くして、またコツコツと扉がノックされた。
どうせまた女官だろうと、アポロンは振り向くこともなく寝台に横になっていた。
「もしかしてまだ治ってないの? ごめんなさい、そんなに深い傷になるとは思わなかったの……」
その声に。
アポロンはすぐに
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