第十九章 鋼の砦で待つ者は
第99話 覚悟を決めろ
呪われた者は、
激しい炎に焼き尽くされる
その時こそ、
祝福された者と共にわたしを呼んでください
すでにわたしの心は打ち砕かれ、
けれども、わたしは跪き平伏して懇願します
どうか
終末の時をお計らいくださいと
*****
その業火は天をも焦がす。
神が放った炎は、全てを焼き尽くすまで消えはしない。
黒々と立ち上る煙は、柱のように
空を飛ぶ怪物は次々と地に落とされ、地上を駆ける魔物は鋭い槍に突かれて断末魔の叫びを飛び散らかした。
だがタルタロスに巣くう怪物や魔物は、この土地が産みだす生物だ。
殺しても殺しても無尽蔵に生まれ出る。
故に
そうと知った上で、行く手を阻まれれば、切り倒して進むしか方法はない。
アレス率いる軍隊はそれほど数が多いわけではなかった。
先の戦役で多くの戦力を無くしていたからだ。
だがヘカトンケイルによって、
彼らの活躍の波に乗り、アレスの軍は一気に神殿を占拠した。
ティターン十二神は次々と幽閉され、すでに残すはクロノスただ一人となっている。
しかし、勝敗は明確になっているとはいえ彼は未だに王なのだ。
数多の魔物と怪物にその身を守らせ、最後の力を振り絞り、強固な結界を張って持ちこたえている。
あとはその結界を破り、ゼウスがクロノスを討てば王権はゼウスへと移るはずだ。
そしてオリュンポス神族の時代が本当の意味でやってくる。
炎に混ざるように、赤いトーガの少女はティターン神殿へと降り立った。
熱風に黒髪を靡かせ、その腕には翠緑の剣を握っている。
再度この神殿へ来て、思い出すのはあの女。
テテュス――。
彼女も幽閉されたのだろうか。
冷たい水色の髪と目。
そして真っ赤な唇がエストリーゼの心に憎しみを滲み出させた。
同時に、以前感じたのと寸分違わぬ罪の意識が、自分を容赦なく襲う。
家族やドリピス村の運命を変えようと望まなければ招くことのなかった悲劇。
そのためにクロノスに干渉され、奪われてしまった多くの命。
――女神になんてなりたくはなかった。
――こんな力など
だからこそ、これが自分への罰なのだろう。
犯した罪が重ければ、それに見合った罰が下される。
それこそ自然の
覚悟を決めろ。
それが償うということだ。
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