第70話 大地の女神ガイア
大きくもなく。
かといって小さくもない女性の姿。
その顔にエストリーゼはハッとする。
ガイアという存在を知り、自分が頭に思い描いた人物そのままの顔立ちがそこにはあった。
輪郭がはっきりしてくるにつれて、女性の容姿はエストリーゼの心臓をさらに締め上げた。
――似ている。
自分の母親と寸分違わぬ姿。
あの日、メッシーナ劇場へ向かう日の朝、優しく自分を送り出してくれた……。
「そんな……」
エストリーゼの眼底がぐっと熱を帯びた。
死んだ母がこんな場所にいるはずはないと頭では理解しているのに。
「ふん。わらわに
ガイアは不平不満を口にした。
「わらわは実体を持たぬ
再度、ガイアは今の姿が気に入らないといった物言いをした。
母親と同じ容貌は、エストリーゼの心を激しく揺さぶる。
しかし当然、ガイアが発する言葉からは母親の愛情など欠片すら見いだせるわけはない。
さらにガイアの頭部に飾られている七色の冠が、なぜか酷くその事実を訴えてくる。
火・水・風・土・光・闇、そして——無。
七つの要素を表す冠は、人間が
間違えるな。
目の前の女性は母親ではない。
エストリーゼは頭を軽く振り、沸き上がる想いをその身から引き剥がした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます