第17話 ティターン戦争と神膜
「人間たちも薄々は気づいているだろうけど……遥か昔から続く神々の大戦はまだ終わっていない。それどころか広がりつつあるんだ」
クロノスは父ウラノスを倒し王権を簒奪した。
彼を中核とした神々を「ティターン神族」と呼ぶ。
そして、クロノスの子ゼウスを中心とした神々は「オリュンポスの神々」と呼ばれている。
ゼウスは父クロノスに叛旗を翻し戦争をしかけた。
この戦争こそが、今もなお続く
ティターノマキアは勃発当初より、人間界をも巻き込み、そして気の遠くなる程長い期間続いている。
が、ここに至るまで決着を見ることはなかった。
そもそもこの戦争に終わりを求めるには無理があった。
それは、双方共に神人である彼らが不死だからに他ならない。
故に、人が神々の戦禍に囚われ、多大な命を落とすのも日常的天災と考えられていた。
しかし、その神々の中にも。
永遠に続くと思われる戦争に短い命を奪われる人間たちを哀れむ者がいた。
その者は両勢力の垣根を超え、心通う他神の助力を得て。
人間の次元から神々の次元を切り離すことに成功した。
分かつ狭間を〈
「知らなかった、神膜は誰かに創られたものだったのね……」
人が人としての歴史を刻む以前から続いていた神々の戦役なのだ。
神膜が形成された事象など、記憶に留める人間などありはしない。
むろん、エストリーゼにとっても初めて耳にする情報だった。
「人間の世界の上に一枚の薄い
グラウコーピスは、やんわりと小さな
どこの世界も同じだ。
せっかくの神膜も意味をなしてはいないと言いたげだ。
その尊き神膜に関して、女神アテナは力を貸していた。
その理由は定かではない。
グラウコーピスと出会う前のアテナの所業だったのだから。
しかし、彼女は戦の神であるのと同時に守護神でもある。
守るべき者たちという延長線上に、人間の存在を感じていたのかもしれない。
アテナが滅した今となっては、その心を知る由も無いのだが。
「もともと薄い神膜は時折神々の力で破られることもあったけど、アテナはその都度修復を施してきた。だけど、あの時……アテナを失った神膜は徐々に薄くなって、とうとう二つの次元は
「もしかして……アポロンも神膜の存在に力を貸していたりするの?」
「まっさか! あいつはそんな骨のある男じゃない。道楽に溺れる放蕩男!」
グラウコーピスは即座に否定する。
珍しく刺々しい言い回しだった。
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