第4話 トリックスター


真実はいつも語りかけている

知る者と 知らない者の違いは

耳を傾けたかどうか それだけ


真実は誰に対しても 公平なのだから


 太陽が空のてっぺんから、大地に向かい始めた。

 王子は黙々と、老賢人の小屋を目指して道を進んでいた。

 森の景色は王子のお決まりの日常と同じように、一向に変わる様子はなかった。同じ風景の「繰り返し」は王子を不安にさせたが、しばらく歩くと道の先に木漏れ日を見つけた。その光のベールが王子を迎え入れてくれているように思えて途端に嬉しくなった。


 王子は卵を再び強く握り締めると、光のベールに向けて大きく足を踏み出した。

 その瞬間だった。後ろから突然、王子を呼ぶ声がした。

「やぁ! 君はどこまでいくんだい? 」

 声の調子は、王子と同い年くらいの男の子だった。

 王子がゆっくりと後ろを振り返ると、そこには男の子ではなく奇妙な格好をした男が突っ立っていた。


 男は襟元が立っている赤い派手なコートを羽織っていて、靴の先っぽは空の方を向いていた。被っている黒の帽子は妙に縦長で、変てこだった。その服装は城の貴族とも、兵士たちとも、商人とも漁師や農民の格好とも違っていた。

 背丈は大人くらいあって、子供でない事は分かるのだが、顔を見てもちっとも年齢の見当がつかない不思議な男だった。

 その不可思議さに呆然としてしまい、王子はしばらく何も考える事ができなかった。

「どこに行くのか教えてくれないのかい? 君ってずいぶん冷たいんだね」

 王子の沈黙を破るように、彼はまた王子に話しかけた。

「そうだ! 僕はなんて失礼な事をしてしまったんだ! 自己紹介がまだだったね。僕はルキっていうんだ! なぁなぁ、自己紹介したんだから、君がどこに行くかもう教えてくれてもいいだろ? 」

 王子が答える前に、彼は早口でまた言った。

「僕は親切心で言っているんだよ。何せ僕は森に詳しいからね! 君が行きたい場所まで道案内してあげるよ。新入りは先輩に従うものだろ? 」

 王子は口をつぐんだままでいたが、それでもルキと名乗るこの男は急き立てるように、王子に何度も話しかけてきた。


 王子は何も答えなかった。

 正直を言うと、王子はルキがとても恐かったのだ。

 会話というものは相手があって成り立つものだから、一方的に話してはいけない──

 王子はこれが会話のルールであると教わっていたし、事実そうだと思っていた。しかしルキは、いとも簡単に引かれたはずの線をはみだした。


 彼にとって線をはみ出す事は、小鳥たちが木の枝をヒョイと移動するのと同じくらい簡単そうに見えた。そして、何より恐かったのは、彼が線をはみ出しても何も感じる様子がなく平然としている事だった。

 王子は少し間を置いてルキから視線を大きくづらすと、小屋への道へと向かいなおした。

 それから大きく深呼吸をして道の先に目をやり、足早に小屋への道を進み始めた。

 振り返らないで小屋まで一気に進もう。これはいつか聞いたことがある幻というやつだ。きっと、そうに違いない──

 王子は何度も自分に言い聞かせると、黙々と小屋への道を進んだ。


 本当のところ彼が後ろにいるような気がして、王子は歩きながらずっと背中のあたりが気になっていた。

 しかし、その度に何か別の事を考えてごまかした。

 特に老賢人に会う瞬間は何度も想像し、頭の中で自分の考えをまとめたり、しまいにはお辞儀の仕方なども考えた。

 するとそのうち、本当にルキの事は気にならなくなり、だんだんと気配も感じなくなった。

「やっぱり幻だった! 」

 王子はそう呟くと安心して道を進んだ。


 木々の大きなトンネルを勢いよく進んでいくと、道の先に大きく左にそれた一本の曲がり道が見えた。

「ひたすら道を真っ直ぐ」

 王子はポツリと呟いて、小屋への道に集中した。

 そして、まるで曲がり道はないかのように、王子は真っ直ぐに小屋への道を見つめた。それからゆっくりと顔を上げて、木々の間からほんの少しだけ顔を覗かせる空と向かい合った。

 きっと老賢人の小屋はもうすぐだ──

 王子は心の中で呟くと、顔を正面に戻して大きく左足を前に出した。

 その瞬間、再び後ろから王子に話しかける声が聞こえた。

「この道を左に曲がったところに、暖かい水が湧き出る泉があるぞ! 俺は森の事は何だって知っているんだ」

 ルキの声だった。

 本当に幻だった! と納得したばかりだったので声に驚きはしたが、不思議とさっきのような恐怖は感じなかった。

 王子が道を進んでいる間、ルキは黙って王子の後をついてきていたのだ。そう考えると、彼はそんなに危険な人ではないのかもしれない。それと、彼の言う「暖かい水が湧き出る泉」というものにも心引かれた。水はもともと冷たいはずなのに、森には自然に水を温める仕組みがあるのだろうか?


 王子は森や泉に関して知っていることを、できる限り考えてみた。いくつか良さそうな案は浮かぶのだが、どれも正解ではないと感じて王子は難しそうな顔をした。

 すると、王子の興味を察したかのようにルキは言った。

「そんな泉、見たことがあるかい? 泉に入ると凄く暖かくて気持ちがいいんだ。君は入ったことがないだろ? 初めての体験ってやつだ! 初めての体験ってのはいつでもいいもんだ。どうだい、少しでいいから一緒に泉に入って体を温めようじゃないか! 」


王子は休むことなく歩いてきたので、体が汗ばんでいた。それに正直言えば、一度その泉というものを見てみたいと思った。

 しかし、王子の心が寄り道しそうになった瞬間、小さい頃に世話係をしていた老女が話してくれた妖精の話を思い出した。

 全てを覚えてはいないが、おおまかな話の内容はこんな感じだった。


 ある妖精が、森を守るために天の国から地上に使わされた。

 妖精の仕事は雨の日も風の日も、森のそばにいて根っこや枝や葉に、力を与えることだった。

 妖精は毎日、森で歌い、ある時は踊りながら木に力を与えた。

 妖精は青々とした葉をつけ、堂々と大地に根を下ろす木々を見てとても満足だった。

 しかしある日、その森に何人かの人間が立ち入ってきた。

 妖精は好奇心から耳をすまして、人間たちの話を聞いてみた

 彼らは森にいる間中、笑ったり、怒ったり、また時には急に悲しんだりした。

 人間の世界の事は良く分からなかったが、妖精は長い時間彼らを見ていて思った。

 人間って、なんておもしろいんだろう──

 彼らが森を去るとき妖精は考えた。

 少しくらいだったらきっと大丈夫──

 妖精は、人間たちを追いかけるように森を出た。

 そして、すぐに戻ってくるつもりだった妖精が、森に戻る事は二度となかった。


 老女は、こうも言っていた。

「王子様、色々な事に興味を持つのは悪いことではありません。でも、寄り道ばかりしていると人は、自分が本来、歩いていた道を忘れるようになってしまうものなのですよ」

 そこで王子はもう一度、自分の心に聞いてみた。

 結論はすぐに出た。

 僕が歩く道はこっちだ。


 王子は、自分の心が出した答えに満足だった。卵を力一杯握り締め、森の大木のように堂々とした振る舞いで、小屋へと続く道の方へ一歩を踏み出した。

 しかし、王子が足を踏み出してすぐに、後ろから大地を軽快に鳴らす馬の足音が近づいてくるのが分かった。

 軽快な音は心地よく、王子は少しの間そのリズムに耳を傾けた。そうやって王子が足音を聞いている間に、馬はあっさりと王子たちを追い越した。

 前方を見ると、馬の上には綺麗な服で着飾り、眩いほどの光を放つ装飾品を身につけた男がまたがっているのが分かった。この格好は貴族に違いない、と王子は思った。

 男がまたがる馬は絹のように白い毛並みで雄雄しく、いかにも立派だった。

 するとルキが、慌てて貴族を制止するように大きな声で話しかけた。

「立派な殿方、どこに行くんだい? 」

「この道を左に曲がって森の泉へ! 」

「いやー実に立派だ! あんたも馬もね! 」

「先を急ぐので、では! 」

 会話は短かったが、貴族の受け答えは堂々としていて自信に満ち溢れているように見えた。

 王子は憧れにも似た眼差しで、貴族の後姿を目で追った。貴族に気を取られる王子を見て、ルキはまた話しかけた。

「仕方がない! 君にとっておきの秘密を教えてあげるよ」

 ルキに隙を見せてしまったことを少し後悔しながらも、王子は耳を傾ける事にした。

 王子の心を見透かしているかのように、ルキは嬉しそうな顔をして、もったいぶるように目の前の道をゆっくり左右に動き始めた。

「左にあるのは泉への道、残りは君の目の前にあるまっすぐな道……ところが、実は道はそれだけじゃぁない! 君には見えるかい? 第三の道が! 」

「第三の道」という言葉に驚いて、王子はきょろきょろと辺りを見回したが、ルキのいう第三の道はどこにも見当たらなかった。

「君には見えない? でも、僕には見える! 僕は森のことなら何だって知っているって言っただろう? 第三の道はこっち! 」

 そう言うとルキは道の右端に飛び跳ね、木々と草が生い茂る方向を指差して笑った。

「道に見えない第三の道……でも、第三の道の先には『とっておき』が君を待っている! 道の先に何があるのか知りたいかい? 」

 王子はルキの勢いに圧倒されて、小さく頷いた。

「そうこなくっちゃ! なんと第三の道の先には……熊のねぐらがあるんだ!君は野生の熊を見たことがあるかい? 本にのっているような本物の熊だよ!君は本当についているよ! 今日って日は本当についてる! さぁ一緒に熊を見に行こう! こんなチャンスはめったにないぞ! 」

熊と聞いて、王子は急に数年前のある日を思い出した。

 

 その日、王子は学者から動物たちについて教わっていた。

 動物たちの名前、どんな習性があるかなど、とにかくその日は色々な事を教わり王子は動物の勉強に夢中になっていた。多くの動物に関しての知識は、王子を納得させるものだった。例えば犬という動物はとても忠誠心が強いとか、そのような事は……

 しかし、熊は違った。

 熊に関しては、まず体の大きさや鼻がとても利くという事を教わった。その点に関して王子は納得した。しかし、次の学者の説明にはどうしても納得がいかなかった。

 学者が「熊は魚や肉以外にも小さな木の実を良く食べるのです」と説明したからである。

 あんなに体が大きいのに、本当に小さな木の実をおいしそうに食べるのだろうか? ──

 王子はどうしても信じることができなかった。学者は付け加えて「コッカク」だとか「ブンルイ」の話をしていたが、詳しい事は耳に入らなかった。

 ただ何とかして自分の目で、熊が木の実を食べているところを見てみたいと思い、本物の熊を見るために山に行きたいと、王様や大臣に数日間もせがんだ。

 そんな事があったから、王子は他の動物より熊に少しだけ強い思い入れがある。

 しかし、王子の心は決まっていた。そして、その気持ちは不思議なことに誘惑に出会うたびに強くなっているように思えた。王子は少しだけその気持ちに浸ってみることにした。

 ルキも黙っていたし、小鳥たちも静かだった。

 風さえも、風景の中に溶け込んだように動こうとしなかった。


 短い静寂を破るように王子の後ろで、突然パキッと枝が割れる音がした。王子が慌てて後ろを振り返ると、音の主が道の隅にある一本の大木に寄りかかるのが見えた。

 それは汗だくの大きな男だった。顔の下半分は、手入れされていない髭で覆われていて、それどころか覆われていない部分もところどころが黒く汚れていた。

 着ている服もところどころ破れていて、見るからに裕福でない事が分かった。

 しかし、不思議なことに男の目だけはキラキラと輝いていて王子を引き付けた。肩には大きな魚を抱えていてその腕はとてもたくましかった。

 少しして、男は王子たちに気が付くとくったくのない笑顔を浮かべて、ゆっくりと、そして堂々とした足取りで二人に歩み寄ってきた。

 近づいてくる男にルキが尋ねた。

「兄さんはどちらまで? 」

 男はゆっくりと顔を右にむけて、自分が進む方向を教えると、大きな声で答えた。

「この草むらの奥にある熊のねぐらまでだよ」

 すかさずルキは男に質問をした。

「やっぱり! この奥には熊がいるんだね! 」

「あぁ何頭もね! 」

男はそう答えると、道の端まで移動して、ねぐらへの道を探るように左手で背丈の高い草をかき分けはじめた。

その様子を眺める王子を見て、ルキは飛び跳ねながら言った。

「君も男の話を聞いただろう? 僕が嘘をついていない事が証明されたわけだ。  

 考えてみたら、今日だけで二回も証明されているじゃないか! 人を信用するには証拠が必要だけど、僕はそれに値する人間なんだ。なぁ、君だってもう分かっただろ? 僕が言うことに間違いはない。さぁ僕たちも彼に続くぞ! 」

 ルキは、今まで以上に嬉しそうに言った。

 あまりに彼が喜んで話すので少し可哀想な気もしたが、王子はここで自分の気持ちをはっきり伝える事にした。それが王子のためでもあり、ルキのためでもあると思えたからだ。

 王子はルキの正面に体を向けて、彼に初めて声を出して答えた。

「君は色々な場所に僕を誘ってくれるけど、僕には大切な用事があるんだ。もう行かなくちゃいけないから、ここでさようならしよう」

 そう答えてからも、王子は視線をずらさないようにしっかりとした眼差しで

ルキの目を見た。

 王子の真剣な様子を見るとルキは悲しそうな顔をして、しばらくするとうつむいてしまった。そして、何も言わないままその場にただ呆然と突っ立ったままでいた。

 それから、王子はルキに軽く会釈をすると、今度こそは小屋への道に向けて足を踏み出した。ルキの事は気になったが、心のひっかかりを消すように森の大地を何度も踏みしめた。

 しかし、王子が歩き始めてしばらくすると、後ろから大きな泣き声が聞こえてきた。声の感じから、泣き声はルキのものだとすぐに分かった。

 それは、あたりにいた小鳥たちが一斉に空へ逃げてしまうほど大きな泣き声だった。

 きっと彼の演技に違いない──

 王子はそう考えた。

 彼は演技が得意なんだから──

 自分を納得させようと、王子は何度も考えた。

 そして、何もなかったかのように装って道を進んだ。

 しかし、王子がどれだけ歩みを進めても、彼の鳴き声が止むことはなかった。

 そこで、王子は彼の元に戻らなくてもいいもっともらしい理由をまた考えた。

 彼の演技に付き合っていたら、老賢人に会うチャンスを逃しかねない──

 王子は、自分の答えに頷きながら歩みを進めた。しかし、前に進めば進むほど足取りが重くなっているのが分かった。それに、王子は前に進んでいるはずなのに、耳に入ってくる彼の泣き声の大きさは全く変わらないように思えた。

王子は一度、歩くのをやめて自分の心に聞いてみる事にした。

 心は王子にすぐに答えた。

 何かを置き去りにしたままじゃ、心は前に進む事はできないんだ──

 王子は、前に進むのをやめて駆け足でもと来た道を引き返した。


 ルキは王子と別れた場所から、一歩も動かずにいた。

 しかし、さっきと違って、彼は道の真ん中に仰向けになって倒れていた。

 うつろな目からは大粒の涙が溢れ出し、頬どころか顔全体がびしょ濡れだった。口は奥が見えそうになるくらい大きく開けていて、雲の上まで届きそうなくらい大きな声で泣いていた。

 王子は倒れているルキのそばまで駆け寄ると屈んでから、心配そうに顔を覗きこんで聞いた。

「どこか悪いのかい? 一体、君は急にどうしてしまったの? 」

王子に気が付くと、ルキは一旦泣くのをやめて、ヒクヒクと喉を鳴らしながら答えた。

「ぼく、実はここのところ何日も何も食べていないんだ。もう体をピクリと動かす力も残っていないよ……でも僕なんて、こうなって当然なんだ。なぜなら君を騙そうとしたんだからね」

 騙そうとしていた、と聞いて王子は少し戸惑ったが、彼が王子の握っている卵を見つめているので、すぐに彼の言っている意味が分かった。

「僕って奴は本当にずるいんだ。子供の君からなら卵を盗めるだろうって……そう考えて君に近付いたんだから。僕みたいな奴はここで終わってしまって当然なんだ。君は先を急いでるんだろ? 僕みたいな奴に構っていないで、早く先を急いだ方がいいよ。ほら、さっさと僕を置いていきなよ! 」

 王子は話をする彼の目を見て、すぐに彼が嘘をついていないと分かった。

 王子は晴れた日には、城の屋上から良く空を見上げていたので「一点も曇りがない」というのがどんな事だか分かっていた。

 今の彼の目は、まさにそのようだった。

 王子は彼の目を見たまま、また自分の心に質問をして小さく頷いた。

 それから王子は彼の後ろに回り、ルキの背中を片方の手で力いっぱい押した。そして彼の上半身が起ききったところで、彼の目の前に戻り、もう一方の手で優しく彼の手を握った。

 そっと握られた二つの手の真ん中には、あの卵があった。

 卵は二人の手の真ん中で輝いていたが、その輝きはもう二人にとってあまり重要ではなかった。目には見えないが、もっと美しいものがその瞬間に二人を包んだのを感じたからだ。

 しかし、その心地よさにひたることなく、ルキはすぐに我に返って慌てて首を左右に振った。首の振り方はまるでキツツキが木を叩く様だった。しかし、その様子を見ても、王子の決心が変わることはなかった。

「僕の心が決めたことだよ」

 とだけ言って、静かに立ち上がり小屋への道に向かいなおした。それから大きく深呼吸をすると、後ろを振り返らずにそのまま道を進んだ。


 王子の足取りは、さっきよりも軽やかだった。

 試験に落ちてしまったのだから、小屋にたどり着いても老賢人の話を聞くことはできない。しかし、不安も後悔も王子の心には浮かんでこなかった。

 その代わりに浮かんできたのは、ゴトーの顔だった。王子は心の中で彼に話しかけた。

 心が選んだ道に従いました──

 王子がそう言うと、彼は心の中で笑顔を浮かべたので、王子は安心して道を進んだ。


 それからほどなく歩くと、王子は道の先に小さな小屋を見つけた。

 小屋は本当に質素で飾り気がないものだった。

 王子は、他の人がこの小屋の近くを通っても見向きもしないだろう、いや、もしかしたら気づかないんじゃないだろうか、とさえ思った。

 平らな屋根には何本もツタが絡まっていて、小屋はまるでまわりにそびえる大木の一部のように見えた。

 ゆっくりと小屋の入り口まで進み、扉のそばに来ると王子は少し戸惑った。小屋の扉はかなり古びていて、とてももろそうだったのだ。取っ手も不格好に打ち付けられているだけで、強く叩けば壊れてしまいそうでノックするのがためらわれた。

 王子は心を落ち着かせようと、木々の隙間から見える空を見上げた。


太陽は大地へと傾き、それに合わせるように空は赤へ衣替えをしていた。

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