島流し
祖父は幸次郎を自分の部屋にいれた。
「幸次郎。おまはんの度胸、こら大したもんや。あきんどは度胸がないと商機を逃すさかいな。お勉強だけではあかん。そやけど人さんの心を怖がらせてはあかん。人さんに怖がられては本音は話してはくれまへん。」
「はい」幸次郎は正座をして聞いている。
「今回おまはんのやったことは将来わてらの商売相手になってくれるかもしれへん人に傷をつけた。いや仮に商売相手にならんでも人さんに傷をつけてはあきまへん。人間としておまはんが信用されななることや。それをおまはんもわかってるな?」
「はい」
「ほな、罪をつぐわなあきまへん。たとえ華族の子弟でも乞食の子ぉでもおなじことだす。」
「へえ」
「島流しや。」と祖父は言った。
「へ?」
「そやからおまはんは来月から島流しにいってもらいます」
「おじいさま、どこの島ですか?」
「ぶりてんって島があります。そこの大学にいってもらいます。ええな」
「はい」
といって幸次郎は退室した。
「ぶりてん」というのは佐渡島より遠いのだろうか?とぼんやりと考えていた。
翌日源太に話すと
「ヨーロッパのイギリスだよ。グレートブリテンっていうんだ」
「そうか、佐渡島どころじゃないな。」
「大体なんでお前だけなんだよ。喧嘩を吹っ掛けたのは相手だろ?」
「いいんだよ、どうせこの国じゃ俺の居所はないんだ。」
「俺たちの、だぞ」と源太は付け加えた。
翌月船でイギリスのケンブリッジ大学の寮に入るため横浜港から幸次郎は旅だった。
港には源太や孫六、そして祖父の幸太郎も集まり幸次郎を送った。
「これであの子も大きゅうなってくれればええんやが。。」と祖父は漏らした。
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