2.ひよこのルポとメイド喫茶
カィザマニャラフについて語る前に、触れておかないといけないことがある。
もしかしたら、敢えて語る必要もないかもしれない。ただ、それでもこのこと――オーパステオテオについては、記しておくべきだと思う。
端的な表現をすれば、オーパステオテオは、概念だ。そこのところがカィザマニャラフとは違う。意外とこれが認知されていないということには気を付けておきたい。
なぜこのことに関する認知度が低いのかと言うと、それはやはり、カィザマニャラフとオーパステオテオについて、まとまった情報がないからだと思う。
ネットでは――特に、にちゃんねるのカィザマニャラフスレにおいては、これは定番の話題だった。そのころのやり取りにはノイズも多かったけど、かなり深い考察がされていたということは、風化させずに語り継ぐべきゼロ年代の歴史だと僕は思う。
重ね重ね、そこで語られた内容が書籍などでまとめられなかったことは残念だ。
これは今まで表に出せなかったことなのだけど、実はあの時、いくつかのメディアから書籍、または教則DVDのような形ででも、出せないかという打診があったらしい。
これはだいぶ後になってから、当時のコテハン・はろいらいん氏から聞いた話だ。
「どうしてその時、その話を受けなかったんですか?」
秋葉原の店で、僕ははろいらいん氏に尋ねた。メイド喫茶のどこかだったと思う。あの頃、秋葉原のメイド喫茶はサロンの様相を呈して、あちこちでそんな会話がされていた。
「だって、カィザマニャラフを語らずにオーパステオテオだけを語るなんて、そんなの邪道じゃないか?」
はろいらいん氏は紅茶のカップを片手にそう答えた。彼の隣には、つまらなそうな顔をしたメイドさんが座っていた。
「入口としてまず提示する、という方法だってあるはずです」
「しかし、オーパステオテオは劇薬だ……わかるだろ?」
「必要な薬ではあるはずでしょう?」
「……」
それで、はろいらいん氏は黙ってしまった。隣のメイドはもはや、話に入るのを諦めてただそこに座っていた。
彼の言いたいことはわかる。オーパステオテオをそれそのものとして語るのは、当時の僕らにとってはあり得ないことだったのだ。
だが、カィザマニャラフに付随する概念として現れたオーパステオテオそれそのものが、いわば一つのコンテンツとしてキャッチーであり、多くの人を惹きつけたということは無視できない。当時のニコニコ動画でも、オーパステオテオに関する動画は多く投稿されていたのだ。
「卵が先か鶏が先か、みたいな話ではあるけどね」
彼はため息まじりに言う。
「問題は、オーパステオテオは卵というよりも……そう、鶏に対するDNAの配列情報みたいなところがある」
「ああ、それは言い得て妙かも」
僕はそのころ、カラーひよこの選り分けに関するルポを書いていたからその例えは納得できた。
だけど――そのことが、カィザマニャラフを歴史の闇に埋もれさせていい理由にはならないはずだ、とも思った。
それで僕は、そのあとある人に会いに行った。
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