第49話 花の名前とあなたの瞳

草原の中で 座り


緑のチェックのシャツを着て


アコースティック・ギター奏でながら


謳うあなたの、


黒くて長い前髪から見える


美しく澄んだ瞳と


甘く、優しく高く、でも震えながら


でも凄く生命力の強い、叫びの様な


声。


あなたの歌の世界は


能天気な夢を見て、逃げて居る時の私には、


心の奥の傷と闇を掘り返されるように、感じていて。


けど、今は。


誰にも分かって貰えない


貰えているようで、助け求めると


いつもいつも、無理解な蔑視の答が返って来て。


でも、今、あなたは


あなたの声と、歌は、瞳は


シャツの、襟の開けた隙間から、見える首筋は、肌は


私の心を死にそうな程、捉えて離さない。


何も知らない侭、あなたに、抱かれてると想って


死んでしまいたい衝動。


あなたなら、この誰も解ってくれない苦しみを


同じ魂と。


幼い時の侭ずっと受けて、生きて来て


まだ、抜け出せずに居て


誰も居ない寂しさを


あなたが、分かってくれると


同じ魂だと


きっと逢えると、言ってくれているその言葉を


真実だと、想ったまま、思い込んで夢見たまま


抱かれながら、死ぬ夢を見たい。


もう十年も前の、あなたを、観て聴きながら。


もっともっと、愛の歌を、死の歌を、迷いの歌を、孤独の歌を。


口付を、逢いたいと、一緒に死のうと、一緒に居たいと、同じ痛みだよと


もっと、もっと、謳って、


私を救いと、幸福と、恍惚で、見惚れさせて、


あなたの歌と瞳の、廃人に、私をしたまま


夢の中で抱き合って、


心中させて。


来世で、逢えることの


夢の中で。一瞬の永遠の孤独をどうか


嘘でもいいから、癒して。


騙したまま。


騙されたまま。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

想いの雑記帳 春の雪 @omoino_kakera_

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ