第四巻・・・raison d'être(レーゾンデートル)私の存在理由・・・
中学2年生のある日、私は以前から好きだった同級生のある男の子に告白する事にした。
彼とは幼馴染で小さい頃からずっと一緒にいた。
小学校の頃は普通に仲良く遊んだりしていたけれど、思春期になったからなのか、お互いにあまり一緒にいる時間も少なくなって来てしまった・・・
女子生徒「ねぇ、愛華?最近彼とあまり話していないけど、何かあったの?前迄凄くベッタリしていたのに?」
愛華「えっ!?特に何も無いよ?・・・って言うかちょっと格好良いからって誰にでも優しくし過ぎるんだよね?私ああ言う男は彼氏にしたくないなぁ・・・」
女子生徒「えぇっ!?それって超贅沢な意見じゃない?彼ってモテモテだからちゃんとモノにしておかないと後悔するわよ?」
愛華「べっ・・・別に私は・・・」
その頃の私は思春期になってから間もなかったのか、とても心の中で複雑な感情を抱いていた。素直になれないと言うか、本当の気持ちを伝えられないと言うか・・・
加賀谷 政樹(かがや まさき)「愛華?どうかしたのか?最近何だか様子が違うみたいだし・・・」
愛華「別に?あなたに話掛けられると、私に気があるみたいに思われて嫌がらせされるからあまり話掛けないで欲しいわね!」
政樹「・・・・・そうか・・・俺のせいで、悪かったな!じゃあ、お前とはもう話しないよ!」
愛華「・・・・・・・・・」
加賀谷 政樹(かがや まさき)・・・私の幼馴染。本当は凄く優しくて、私が困っていると直ぐに助けてくれる様な私にとっては、王子様みたいな存在・・・でも私は素直になれなかった・・・皆に憧れを持たれる様な彼は私なんかでは勿体無さ過ぎてとてもこの気持ちを彼に伝える事は出来ない。
女子生徒「ちょっと、愛華?それは言い過ぎじゃないの!?いくら何でもそう言う事を言うから皆あんたの事嫌いになっちゃうのよ?」
愛華「ははは・・・そうだよね・・・私なんかじゃ・・・私なんかじゃ彼とは不釣り合いだよ・・・」
女子生徒「愛華?・・・ちょっと屋上に来て欲しいの!」
屋上にて・・・
女子生徒「もう、自分の気持ちに気付いているだろうからはっきりと言うよ?あんたは加賀谷君の事が好きなんでしょう?」
愛華「えっ!?・・・どうしてそう言う事になるのよ!」
女子生徒「ねぇ、知ってた?加賀谷君ね、親の仕事の関係で海外へ行っちゃうのよ?」
愛華「嘘っ!?・・・だよね?」
女子生徒「その様子だとまだあんたには言って無かったみたいね・・・」
愛華「どう言う事?ずっと一緒にいた相手に大切な話すら言えないの?最低だよ・・・そんなの・・・」
パシンッ!!!
愛華「いたっ!!何するのよ!!」
女子生徒「最低なのはあんたの方よ!彼がどれだけあんたに気を使っていたのかずっと一緒にいたあんたなら分かるはずでしょ?それなのに自分の事ばかりウジウジ悩み続けて・・・あんた本当に彼の事が好きならもっと大事に・・・大切にしてあげたいって思わない訳?」
愛華「・・・・・・・」
女子生徒「来週、学校側からも話があると思うわ!?それ迄にあんたの本当の胸の内を整理して彼にどう接するべきなのか自分で答えを導き出しなさい?それだけだから・・・」
愛華「・・・・・・・・・・・・恭子・・・・私・・・」
春風 恭子(はるかぜ きょうこ)・・・私の同級生で世話焼きのとても優しい子・・・当時私も素直な気持ちが出せなくて彼女には凄くお世話になったな・・・この屋上での一件が無ければ私は政樹に・・・
放課後、教室にて・・・
愛華「あの・・・さ?・・・さっきの事なんだけれど・・・」
政樹「・・・・・・・・・・」
愛華「その・・・言い過ぎちゃったわ?・・・話掛けないでと言うのは本当は嘘で・・・」
政樹「ぷっ・・・はははははははははは!」
愛華「えっ!何?何なのよ!?」
政樹「いや、お前ってさ?嘘付く時必ず目がキョドるんだよな!さっきもそうだった!」
愛華「えっ!?・・・私が?・・・」
政樹「あぁ♪幼少期の頃からずっと変わらないお前の癖だよ!いつも俺に嘘付く時バレバレだったからさ?」
愛華「じゃぁ・・・さっきの事も・・・?」
政樹「うん!本心じゃないって事位お見通しだぜ!」
愛華「バカ・・・・・」
政樹「なぁ、愛華?今日久しぶりに一緒に帰らないか?」
愛華「えっ!?・・・・う・・・うん・・・いいよ?・・・」
そうして何とか私の言った戯言は嘘だと見抜いてくれていたからその場は丸く収まった・・・
帰り道、私は政樹に告白しようと思った・・・昼間、屋上で恭子が教えてくれた事もあったのだけれど、やっぱりこの想いを隠しとおす訳にはいかなかった・・・そして・・・
愛華「ねぇ?・・・政樹?・・・ちょっとこの公園寄って行かない?」
政樹「あぁ!別に良いよ?・・・何かあったのか?」
愛華「うん・・・実は政樹に大切な話があるの!」
政樹「・・・・・分かったよ!」
公園の少し奥の方は雑木林になっていて、私はその手前辺りの木の所へ彼と一緒に向かった。
愛華「ねぇ、政樹?小さい頃、よくこの公園で遊んだよね?」
政樹「あぁ・・・よくお前はこの雑木林で迷子になっていたよな!」
愛華「うん・・・その度に必ず政樹は私を見つけ出してくれたよね?」
政樹「そうだったな・・・泣きべそかきながら俺にしがみついて来て、結構大変だったんだぞ?」
愛華「ふふふっ♪ごめんね?色々と・・・」
政樹「お前のその笑顔久しぶりに見たよ!」
愛華「えっ!?・・・あぁ・・・そうかも?・・・」
政樹「最近のお前、つれなかったからな・・・本当は凄く素直で可愛くて、俺は大切に想っていたのにさ?」
愛華「政樹?私ね?・・・うん!今迄黙っていてごめんなさい。私、本当は政樹の事が大好きだったの!素直になれずに中学校へ入ってしばらくしてから辛く当たってしまって・・・全部私の気持ちの反面であなたを傷付けて来た・・・でも本当は私・・・あなたと一緒になりたかった!私と・・・私と・・・こんな酷い女だけれど、付き合ってくれませんか?」
政樹「・・・・・・・ありがとう・・・・・俺も愛華の事は大切に想っていたんだ!・・・でも、ごめんな?・・・どうしてもお前を恋心を持って接する事は出来ないんだ・・・俺のこの気持ちはお前を家族みたいな感情だろうと思うんだよ・・・だから、こうして意を決して俺に伝えてくれた気持ちは大切にしたいと思うんだ!でも・・・恋人としては・・・本当にごめん・・・」
愛華「良かった・・・」
政樹「えっ!?」
愛華「私の本当の気持ちが政樹に伝わってくれたから・・・私・・・もう思い残す事は無いよ!本当に、今迄ありがとう♪」
政樹「おい、お前・・・それはどう言う?・・・」
愛華「ううん?気にしないで?政樹は政樹の大事な事があるだろうし、私の事は忘れてね?もう、雑木林で迷子になったり、政樹を困らせたりしないから・・・ね?」
バッ!!
政樹「ちょっ!何処へ行くんだ?待てよ!」
虫の良過ぎる話だって言うのは分かってた・・・いくら本心じゃ無かったとは言え、ずっと政樹に辛く当たって、政樹を困らせていた・・・それなのに今日、突然手の平を返したみたいに告白して・・・それで「良いよ」って付き合えるなんて訳ないもん・・・それに・・・やっぱり言ってくれなかった・・・一緒に帰って来たのに私に・・・どうして?・・・
私の存在理由は一体?・・・
翌週、学校にて・・・
あれから政樹と私はギクシャクした感じで今日迄過ごしていた・・・
担任「はい、静かに!・・・実は、もう知っている人もいると思うが、加賀谷のご両親のお仕事の関係で、外国へ行ってしまう事になった。本当は今週半ばに出発予定だった様だが、急遽今日の夕方出発する事になった様だ・・・加賀谷!今迄ありがとう!少し話をしてくれないか?」
政樹「はい!・・・皆、今先生が話をしてくれた通り、俺は今日で日本を去る事になりました。今迄仲良くしてくれた皆、色々とあったけど、本当にありがとう!皆、元気で・・・」
愛華「・・・・・・・」
結局その後、政樹は何事も無かったかの様に午前中の内に、帰宅した・・・
放課後・・・
愛華「もう、私の事は何とも思っていないのかな?・・・政樹がいなくなったらもう私・・・私である意味が無い気がする・・・あんなに大切な話を私にもしてくれなかった・・・私・・・私・・・あれ?・・・涙が出て来た?・・・私、泣いてるのかな?・・・あっ・・・このビルって初めて政樹と出会った場所・・・でも、もう廃墟になっちゃったのね・・・久しぶりにここを通ったから知らなかったな・・・少し入ってみようかな・・・」
私は誰かに引っ張られるかの様にその廃墟となったビルへ入って行った・・・そして、エレベーターは使えないから階段で屋上迄昇って行った・・・
愛華「懐かしいな♪小さい頃、イベントがあって、確か政樹はヒーローショーを見ていたんだよね?私はその反対側で可愛い動物の着ぐるみを着た催し物を見に来ていて・・・確か・・・そうだ、この辺りで親とはぐれちゃって、泣きながら親を探していて・・・そこへ政樹が心配して来てくれたんだっけ!・・・「おい、君?どうしたんだ?迷子になっちゃったのか?一緒に探してやるから手を繋ごう?」そう言って政樹は私と親を探してくれたんだっけ!・・・懐かしいな♪凄くはっきりと覚えている気がするよ・・・大切な私の想い出・・・大切な私の・・・政樹・・・政樹?ごめんね?先週告白した最後にもう政樹の迷惑は掛けないって言ったけれど、最後だけ、私の我儘に付き合ってね?・・・って言ってもそろそろ政樹も日本を出る頃だろうから、私の事なんて考えもしていないだろうな・・・考えてみれば、政樹と初めて出会ったこの場所から私は政樹の事だけだった・・・うぐっ・・・えぐっ・・・あれ?・・・どうして泣いてるのかな?もうこんな事考え無くても済むはずなのに・・・どうして?・・・もう、夕日が落ち掛けている・・・綺麗♪・・・そう言えば親が見付かったのもこんな感じで夕日が落ち掛けていた時間だったかな・・・あの時は本当に安心して、泣いちゃってたもんね・・・皆、ごめんなさい・・・私、もう・・・大好きな皆?・・・私はもう疲れました・・・家を出る時に遺書を書いて来たから、そろそろ誰かが帰って来て読んでいるかもしれないね・・・でも場所は書いていないから誰も分からない・・・」
茜「もしもし?政樹君?茜です!繋がったって事はまだ日本にいるのね?」
政樹「はい、実は、18時の便に乗るはずだったのですが現地の天候がかなり悪くなっているみたいで数日後に延期されちゃったんですよ!」
茜「あぁ・・・こんな時に言う事じゃないけれど、本当に良かった!」
政樹「えっ!?もしかして何かありましたか?」
茜「大変なの!愛華が!愛華が遺書を残して帰って来ないの!」
政樹「えっ!?どうして!?・・・まさか!!!」
茜「心当たりがあるのね?・・・でも理由より先に愛華を探し出したいの!心当たりのある場所があればそこから当たって欲しいのだけれど?」
政樹「・・・あっ!?2か所ありますので直ぐに向かいます!俺、今家にいるので!じゃあ、又連絡します!」
愛華!俺が告白を断わったからなのか!?それとも海外へ行く事を告げられなかったからなのか!?・・・どちらにしても俺のせいだ・・・本当にごめん・・・
何だろう!?息が苦しい・・・胸が貫かれた様に痛い・・・何でだ!?・・・愛華・・・待ってろ!?・・・愛華・・・俺は・・・
はっ!!そうか・・・俺って・・・俺が本当に想っていた愛華に対する気持ち・・・分かった!そうか!俺・・・勘違いしていたんだ!やっぱり・・・俺は・・・愛華の事が大好きだった!それは家族の様なものだと思い込んでしまっていた・・・でも今気付いたよ!そうじゃない!凄く近くて似た様な気持ちだった・・・俺は本当にダメだな・・・よし!雑木林だと思ったけど、やっぱりあっちだ!待ってろ!あの時みたいに・・・頼むから!間に合ってくれ!!!!!
愛華「夕方になったから、少し風が出て来て冷たい空気で少しだけ寒いかな・・・真下を見るとフラフラするな・・・目に涙が溢れて来ていて・・・うぅっ!・・・政樹・・・お父さん・・・お母さん・・・お姉ちゃん・・・今迄本当にありがとう♪私、とっても幸せだったよ?・・・産んでくれてありがとう♪それから、素敵なこの恋する気持ち・・・今迄本当にありがとう♪・・・私はこれで終わります・・・皆・・・元気でね?・・・さようなら・・・」
バタンッ!!!!!
愛華「えっ!?」
政樹「愛華ぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!死ぬなぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!」
愛華「まっ・・・政樹?・・・政樹なの?・・・」
政樹「あぁ!そうだ!ごめん・・・俺・・・本当の気持ちに気付いたんだ!」
愛華「でも、日本を出たんじゃ?」
政樹「あぁ、本当はその予定だったんだけど、現地が悪天候になっていて、数日先迄待機になった!」
愛華「そうだったんだ・・・でもどうしてここへ?」
政樹「お前、遺書書いてたんだろう?茜さんから電話が入って、急いでお前を見つけ出して欲しいって言われて俺もパニックになり掛けた・・・」
愛華「そうか・・・私も思い出に浸っていたから間に合っちゃったんだね・・・」
政樹「そのおかげで間に合った!ごめん、本当に俺のせいで・・・」
愛華「何が?政樹は何も悪い事はしていないでしょ?いつも政樹に迷惑を掛けてしまって、意地悪しちゃったり、困らせていたのに、それでも私に気を掛けてくれて・・・そんな政樹がどうして私なんかに謝るの?」
政樹「先ず、海外へ行く事を最後迄お前に言えなかった事・・・それから・・・この間の告白の事だ!」
愛華「うん・・・」
政樹「言い訳にしかならないけど、俺、やっぱり好きな子に離れ離れになるなんて言えなかった・・・辛くて・・・もし言ってお前がどう言う表情をするのか考えただけで吐いてしまったり、眠れなかったんだ・・・」
愛華「そんなに・・・?」
政樹「お前は俺に告白してくれたのに、お前は俺からその事を告げられずに更に苦しい想いをしてしまったと感じたんだ・・・俺なんかの比にならない程に・・・」
愛華「・・・・・・・・」
政樹「告白を受けた時、俺は家族の様にしかお前を見られないと言った・・・だけど、さっき茜さんに電話をもらって、お前を探し出そうとしていた時、息が出来ない程苦しくなってしまって・・・胸を何かで貫かれたみたいな痛みが走ったんだ・・・それと、今話をしたお前と離れ離れになると考えた時の苦しい感情、色々と混ざり合って・・・一つになった時、本当の俺の気持ちが分かったんだ!」
愛華「それって・・・・」
政樹「あぁ・・・俺は最低な男だなと・・・大切で大好きな女の子の気持ちも受け入れる事が出来ずに、自分の本心すら見失っていた・・・」
愛華「そんな事ないよ!!!」
政樹「いや、言わせて欲しい!こんな馬鹿野郎、こんなクズ・・・でも、こんなクズで馬鹿な男は、君みたいな子がいないと生きて行けないんだよ!・・・勝手な事言っているのは分かっている・・・でも・・・俺・・・愛華がいないと生きていけそうにないんだ・・・だから頼む・・・しばらくの間は離れ離れだけれど、必ず俺はお前の元へ戻る!だから・・・俺と付き合ってくれませんか?」
愛華「・・・・・・・・あ・・・・・・・あぁ・・・・・・政樹・・・・はい!こんな素直になれなかった私だけれど、宜しくお願いしますね♪」
政樹「愛華・・・・・大好きだ!」
愛華「私も・・・やっと・・・やっと・・・長年の夢が叶った♪」
チュッ💛
そして数日後・・・飛行場にて・・・
政樹「愛華?泣かないでくれ!絶対に俺は戻って来るからな!」
愛華「うん・・・きっとだよ?・・・待ってるから!私・・・ずっと政樹の事待ってるからね?」
そして18時の飛行機で彼は日本を去って行った・・・
私は彼を待っている・・・ずっと・・・ずっと・・・いつか「ただいま、愛華♪」
とそう言うセリフを言って私の目の前に立っている姿を思い浮かべながら・・・
でも・・・それは現実のものにはならなかった・・・
私が空港から帰って来て夜ご飯を食べている時にテレビのニュースが流れていた・・・
フランスへ行く予定だった18時発の飛行機が墜落した・・・
その翌日、搭乗者全員の死亡が確認されたと言うものだった・・・
フランス行き18時発の飛行機・・・そう、それは政樹と政樹の両親が乗った飛行機であった・・・
愛華「あれ?・・・私寝ちゃってた?・・・辛い夢を見ちゃったな・・・思い出したい想いと思い出したく無い想いがいっぱい詰まった事実・・・もう、政樹は天国にいるんだよね?・・・政樹?私、一度あなたに助けてもらって、色々と頑張ってよ!政樹のおかげで小説を書く事にして、それを読んでくれたファンの子が同じクラスの子で2人もいたんだよ!凄い偶然だよね!?凄い運命だよね!?その2人は幼馴染でつい最近結ばれたんだよ!?私たちみたいに♪良かったよね・・・お互いが生きていて、お互いの本当の気持ちを告げて・・・幸せになって欲しいな♪・・・私みたいにはなって欲しく無い・・・政樹・・・政樹・・・えぐっ・・・えぐっ・・・うぅぅっ・・・」
次の小説は少し涙を誘うお話も良いかもしれないな・・・
翌日、学校にて・・・
夏葉「愛華さん、お早う御座います?あら?如何なさいました?お顔の色が優れませんが・・・」
愛華「えっ!?・・・あぁ・・・ごめんね?少し寝不足だったものだから・・・ははは・・・」
智也「おっ!?香波?又ゲームか?ってまあそれはいいや・・・お前ら?知ってるか?何か数年前に飛行機が墜落したって大事故があったと思うんだけどさ、今朝テレビ観てたらどうやらあれは誤報だとか言ってたんだけど・・・」
愛華「えっ!!?・・・・誤報!?・・・それって確か、18時発のフランス行きだった飛行機の事?」
智也「おっ!詳しいな!確かフランスって言ってたよな・・・?」
夏葉「えぇ!私も拝見していましたが、確かに18時発のフランス行きの便だと言っていましたわ?」
愛華「そっ・・・そんな・・・じゃあ・・・政樹は!?」
智也「えっ!?政樹って?・・・もしかして?・・・」
愛華「うん・・・私の彼氏になるはずだった子・・・あの日のあの便に乗っていたはずの・・・」
夏葉「じゃあ、愛華さんの彼氏は・・・」
愛華「・・・・・・・・生きてる・・・・」
智也「それは大変だ!早く連絡を取れる様にしないと・・・どうやって探そうか?」
夏葉「待って下さい!もし生きているとして、今迄彼から連絡等は無かったのでしょうか?」
愛華「うん・・・あのニュースを見てから死んじゃったものだと思い込んでいたから・・・私も連絡していないし、彼からも連絡が入った事は一度も無かった・・・」
夏葉「何か理由があったのかもしれませんわね?」
智也「一先ず、連絡を付けたい所だよな?」
政樹が生きてた!・・・良かった・・・死んでいなかったんだ!・・・でも今何処にいてどうやって連絡を取れば良いのだろう?・・・私は政樹の事で頭がいっぱいだった!そして帰宅後・・・
愛華「お姉ちゃん!大変だよ!政樹が・・・生きてるかもしれないって!」
茜「えっ!?それってどう言う事!?だってあの日の飛行機で、彼は・・・」
愛華「今日、学校でクラスメイトがニュースを観ていて、あの日のあの飛行機が墜落したのって誤報じゃないかってニュースを観たんだって!?」
茜「本当に!?・・・その情報が正しいとすれば、彼たちは・・・」
愛華「でも今何処にいてどうやってコンタクトを取るか分からなくて・・・どうすれば良いのかな?」
茜「ちょっと待って?・・・ニュースで何か言ってるわ?」
ニュースの音声「それでは続いて、3年前に起こった墜落に関するニュースです。3年前の10月3日18時出発のフランス行きの飛行機が墜落して全員死亡とされていた事故が実は誤報であったと今朝から様々なニュースが飛び交っておりましたが、ここで事実であると確定された話が挙がって来ております。どうやら、当時墜落していたのはフランス行きでは無く、イギリス行きの便であったと出て参りました。丁度同時刻での出発となり、途中迄ルートが近かった為による誤報だったと考えられます。ここに来て事実が出て来たのは非常に似た機体であったと言う話も浮上しておりましたが、実はもう一つの事実が挙がって参りました。フランス行きの飛行機も墜落してしまった様で、当時混乱していた状況だったとも捉えられます。ただ、フランス行きの墜落に関しては死者は出ていないとの事で、負傷者のみだった事が挙げられています。」
茜「どうやら混乱が招いたニュースだったみたいね?・・・でも負傷者が出ていた事に違いは無いみたいだし、彼たちもきっと大変な状況に置かれていたのだろうと思うわね!」
愛華「うん・・・生きていてくれるだけでも良いって思ったけれど、やっぱり事故で怪我をしちゃってどうする事も出来ない状態なら辛いね・・・」
茜「あっ!?そう言えば、秋月さんの会社ってフランスの方でも精通していなかった?」
愛華「あっ!そうだったね!最初そんな話を聞いた事があって、政樹の事も少し話した事があったよ!」
♪プルルルル♪プルルルル♪
愛華「あっ!?丁度秋月さんから電話が・・・出るね?・・・はい、香波です!」
秋月「先生?今お電話大丈夫でしょうか?」
愛華「はい!大丈夫です!もしかして?・・・」
秋月「はい、その様子だとご存じなのですね!先生の彼氏が乗っていた飛行機の事故の事です!」
愛華「朝、クラスメイトに聞きましたが、今テレビで新しい情報が出ていましたよね!?」
秋月「はい!負傷者は出ていましたが、どうやらフランス行きの搭乗者全てが命に別状は無いみたいで・・・」
愛華「はい!ひょっとすると政樹も無事じゃないかって今、姉と話をしていました。」
秋月「ただ、彼とのコンタクトをどの様に取れば良いのか・・・と言った所でしょうか?」
愛華「そうです!連絡を取りたいのですが、手段が無いと・・・教えてもらった連絡先に連絡を入れてみましたが繋がらなくて・・・」
秋月「私も色々と編集長たちとさっきしていたのですが、弊社のフランス支局があるのですが、そちらの者に一度状況を確認してもらって、彼が見付かれば先生を直接彼の元へお連れすると言う流れで進めて良いか連絡を取らせて頂いた次第なのですが・・・如何でしょうか?」
愛華「本当に、良いのですか!?ありがとう御座います。是非そのお話で進めて頂きたいです!!」
秋月「分かりました。では、先生の許可を得た事を伝えますので、しばらくお時間を要するとは思いますが、必ず結果をお伝え致しますので色々とモヤモヤとしておられるとは思われますが、先生はいつもの様に学業、執筆活動共にやって欲しいです!」
愛華「はい!私も良い案も浮かび始めていますので頑張りますね!宜しくお願いします!!」
茜「どうやら良い話みたいね?」
愛華「うん♪秋月さんが編集の方と話をして、向こうにフランス支局があるからフランス支局の人たちで探してくれるみたい!連絡が入って見付かれば私も現地へ案内してもらえる話で進めてくれるって!」
茜「それは良かったわね!やっぱり大きい会社だから日本国内だけじゃなかったわね!」
愛華「うん♪政樹が生きているって分かっただけでも嬉しいけれど、会える可能性が少しでも出て来てくれたら私はそれでも十分嬉しいよ♪」
政樹の母「政樹?・・・あなたは眠りながらどの様に思っているのかしら?・・・やはりあの日無理矢理にでも連れて行こうとしていた私たちを憎んでいるのかしら?出発前にあの子に告白したって喜んで私たちに教えてくれた・・・私たちのせいで、あなたは・・・」
政樹の父「そんなに自分を責めないでくれ・・・私が海外へ一人で行っていれば、この様な事にはならなかったのだ・・・あの時怒ってでも連れて来てしまった私の責任だよ・・・君は何も悪くは無い・・・全ては私が・・・」
政樹「・・・・・・・・・・・・・・・」
政樹の母「愛華ちゃんをこちらへ呼んでみたらと思ったのだけれど、もう、連絡先も事故の時に無くしてしまって音信不通になってしまったし・・・」
政樹の父「そう言えば、ニュースでは我々は墜落して全員死んだと言う事が伝わっているみたいだが、数日前に誤報だと発覚し、我々は本当は生きていると言う事を改めて報道しているそうだよ!」
政樹の母「そうだったの・・・だとすればきっとあの子たちにも伝わっているはずね・・・」
政樹の父「あぁ・・・きっと真実を知ってくれているだろう・・・ただ、今のこの状態で彼女が見たらきっと・・・」
政樹の母「そう言えば、あなた、日本の編集の方で知り合いがいたんじゃないの?確か・・・秋月さん?あの人に事情を説明して愛華ちゃんたちにコンタクトを取ってもらう事は出来ないの?」
政樹の父「そうだな・・・支局の方にも話を付けてみるが、先に日本へ掛けてみよう!」
♪プルプルプルッ!プルプルプルッ!
「はい、丸川書店編集部です!」
政樹の父「お忙しい所恐れ入ります。私、丸川書店営業部の加賀谷と申しますが、そちらに秋月さんはいらっしゃいますでしょうか?」
「えっ!?もしかしてフランスへ行かれた加賀谷さんですか?ご無事だったのですね!お待ち下さい、直ぐに秋月に変わりますので!」
秋月「もしもし!加賀谷さんですか!?秋月です!ご無事だったのですね!良かったです!!」
政樹の父「何やら誤報がそちらの方へ入っていたと言う事で、私もしばらくの間、事故の件もあって支局の方へも出向けなかったんです。息子も今もまだ、眠り続けたままでして・・・」
秋月「そうだったのですか・・・ニュースだとフランス便の搭乗者の命は全員無事だったと言われていましたが、やはり事故は事故でしょうし・・・あっ!すみませんでした、今日はどうされました?」
政樹の父「あぁ、実はですね・・・私の旧友であります、香波と言う知人がいるのですが、安否を伝えてもらえないかと・・・後、息子が当時付き合う事になっていた香波 愛華さんと言う方にも一度コンタクトを取りたいと思っておりまして・・・何とか探し出して頂け無いかと・・・私が住んでいた街にいると思うのですが・・・」
秋月「まさか!先生がお付き合いされるはずだった男の子って・・・!?加賀谷さんの息子さんだったのですか!?」
政樹の父「先生?・・・それはどう言う事でしょう?」
秋月「はい!実は、香波 愛華さんは現在うちで預かっている小説家の先生なのですが、それで分かりました!先生の初めて投稿した小説が自分の体験談を基にした作品だったのです!」
政樹の父「そうだったのですか!?・・・彼女が・・・では、その頃はさぞかし辛い想いをされて来た事でしょう・・・」
秋月「確かに最初、私がお声を掛けさせて頂いた時にこの事について触れていましたが、あまりにも辛い面持ちだったので深くは聴けませんでした。ですが、気分を変えてもらおうと編集長が官能小説染みた作風で一度書いてみては?と言う提案があり、彼女は予想もしない方向で大ヒットを生む事になったのです。」
政樹の父「そうでしたか・・・いや、運命と言うものはいたずらをするものだと思っていましたが、今回は特に踊らされて来た様に思えます。」
秋月「実は、愛華さんをそちらへお連れしたいと部の方で話が挙がっていたのですが、愛華さん本人も是非行きたいと言う回答を先程電話で確認を取らせて頂きましたので、もし加賀谷さんが宜しければと考えていたのですが・・・息子さんは今も?・・・」
政樹の父「そうです・・・あの日に私が怒鳴って無理矢理家内と一緒に連れて来たのが祟ったのだろうと思います・・・本当に愛華さんにも息子にも迷惑を掛けてしまいまして・・・」
秋月「それは違いますよ!」
政樹の父「えっ!?」
秋月「家族が離れて暮らすのは私は反対です。ましてや年頃の子供を離れ離れにするなんて事決してあってはならない事だと思うからです。どれだけ遠くに行くのだとしても、家族はやっぱり出来る限り一緒に過ごすべきです!」
政樹の父「秋月さん・・・」
秋月「すみません、私事なのですが、私は高校生の頃、父親を亡くしています。ずっと仲が良かったと言う訳ではありませんでしたが、やはり思春期の女子高生になると父親が鬱陶しく思えて来る時期だってあります。私も反抗したり父に対してとんでもない酷い事をしたり言ったりして来ました。でも本当はとても大切な家族だったんです!私も粋がって調子に乗っちゃっていましたが、そろそろ謝ろうかなと思っていた矢先、事故で他界してしまったんです。もう手遅れですよね・・・この世にいないのだから・・・でも加賀谷さんは違いますよね?息子さんは意識不明の重体かもしれませんが、必死に生きようとしてくれている!もしかして、愛華さんが会いに行ったら、不思議な事が起こるかもしれませんよ?」
政樹の父「秋月さん・・・本当にありがとう!君に話が出来て本当に良かったと思うよ!」
秋月「いいえ、では、一応現状はお伝えしますが、恐らく愛華さんの決断は硬いと思いますので、都合を空けておいて下さいね!一応連絡先もお伝えしますので・・・」
♪プルプルプル♪プルプルプル♪
愛華「あれ?秋月さんからだ!何か進展があったのかな?・・・はい、香波です!」
秋月「愛華ちゃん?良かったわね!」
愛華「えっ!?もしかして!?」
秋月「うん、連絡がついたの!丁度向こうに連絡を入れるつもりでいたんだけれど、加賀谷さんから連絡があったの!」
愛華「あれ!?私、名字が加賀谷だって言いましたっけ?」
秋月「あぁ!私もまさか加賀谷さんの息子さんが愛華ちゃんの彼氏だったって知らなかったから・・・実は、加賀谷さんはうちの営業部の部長なのよ!フランス支局へ転勤になったからあの日飛行機で旅立ったの!」
愛華「そ・・・そんな事実が!?・・・凄い・・・!!」
秋月「実は先に愛華ちゃんに確認しておきたい事があるのだけれど、いいかしら?」
愛華「はい・・・何でしょうか?」
秋月「少し辛い事かもしれないけれど、よく聴いてね?・・・実は、息子さん・・・政樹君の状態の事なのだけれど・・・今も意識不明の状態なの・・・」
愛華「えっ!?・・・全員命に別状は無いってテレビで言っていましたよ?・・・」
秋月「確かに皆生きていると言うのは現時点では事実の様だけれど、実際墜落した事により怪我をしたり彼の様に意識不明になったりと言う現状は出ているみたいなの・・・」
愛華「そんな・・・・・・・!?」
秋月「ねぇ、愛華ちゃん?彼がその様な状況だけれど、あちらへ行く事は可能かしら?」
愛華「えっ!?・・・でも・・・」
秋月「遠慮はいらないわ?あちらのご両親も是非来て欲しいって強く思っているの・・・私もお話を聴いていたけれど、あの日にお父さんが強く怒鳴ってでも無理矢理連れて行った事に対してお母さんも悔やんでいらっしゃるみたいなの・・・それから、あなたに対してもお詫びのしようも無いって、本当に申し訳無かったって言っているわ?」
愛華「そんな・・・・・だって、家族だから・・・一緒にいるのは当たり前ですよね?」
秋月「その言葉を聴いて安心したわ!」
愛華「それってどう言う意味ですか?」
秋月「私と全く同じ意見だって事♪じゃあ、現地へ向かう日取りを決めちゃいましょう?」
愛華「えっ!?もうですか?」
秋月「早くしないと政樹君が寝取られちゃうわよ?・・・なんてね♪」
愛華「もう・・・秋月さんの意地悪ぅ・・・」
秋月「まあ、愛華ちゃんのご家族の方にもお話しないといけないだろうし、一先ず連絡待ってるわね?その後調整に入るから!じゃあ、私も色々と根回ししないといけないからこの辺でね!」
秋月 小波(あきづき こなみ)・・・丸川書店編集部の敏腕編集者で愛華の担当者。
色々と起点の利いたしっかり者。早くに父親を亡くしているが、その時の自分の言動や行動を悔い、今も引きづる一面も・・・気前も良く、後輩からも慕われている。編集長お墨付きの片腕となれる程の実力派。男運が少し無いのが本人も気掛かりだとか・・・
愛華「お姉ちゃん!連絡がついたって!今、おじさんから秋月さんに連絡が入ったみたい!」
茜「えっ!?どう言う事?」
愛華「何だかおじさんが丸川書店の営業部長だって言ってたよ?そんな話初めて聞いたよね?」
茜「うん・・・確かに聞いた記憶が・・・はっ!?確か一度だけチラッと私聴いた事があったかもしれないわ!確かうちの親とは旧友で昔、その様な話を耳にした事があった気がするわ・・・ごめんなさい・・・私・・・」
愛華「ううん!でも良かったよ!直ぐに見つかって・・・でも・・・」
茜「何?何かあったの?」
愛華「政樹、まだ意識不明だって・・・」
茜「そう・・・なの・・・」
愛華「私、会いに行って来る!」
茜「そう・・・うん!会ってあげたら彼も意識が戻るかもしれないわね!」
愛華「うん!でも、いつ行こうかな・・・」
茜「早い方が良いでしょう?今丁度学校も休みが無い時期だし、それなら早目に行っておいて良いんじゃないかな?」
愛華「じゃあ、今週末の休みが連休だからその前の日から行くね!」
茜「保護者として学校へは連絡を入れておいてあげるわね!」
愛華「ありがとう!お姉ちゃん♪」
そうして、週末になって、私はフランスへ・・・政樹の元へと急いだ!
病院へ到着し、政樹の病室を訪れた・・・
♪コンコンコン
政樹の母「どうぞ!」
愛華「失礼します・・・愛華です・・・」
政樹の父「おぉ!!よく来てくれたね!愛華ちゃん・・・大きくなったね!」
愛華「おじさん、おばさん、お久しぶりです・・・生きているって知って・・・私・・・うっ・・・えぐっ・・・・」
政樹の母「遠く迄ごめんなさいね・・・それから、今迄私たちが死んだと誤報が入っていたって最近知って・・・本当に申し訳無い気持ちでいっぱいよ・・・」
愛華「いいえ・・・私・・・私は・・・生きてくれていたって知っただけでも凄く嬉しくて・・・本当に・・・本当に・・・・・」
政樹の父「愛華ちゃん・・・本当にすまなかった・・・私がこいつを無理矢理連れて行ったが為に、この様な状態になってしまったのだよ・・・本当に、謝らなければならないのは私なんだ・・・本当に、申し訳無かった。」
愛華「おじさん、謝らないで下さい。家族が一緒に暮らす事の大切さは恐らく秋月さんにも言われていたと思うんです。私もそれは凄く分かるし、政樹が私にその事を打ち上げられなかった想いもちゃんと政樹から聴いていましたので・・・頭を上げて下さい。」
政樹の父「何とか処置は施してもらったのだが、今だ意識は戻らないままなんだよ・・・」
愛華「でも、生きています・・・死んでいないからきっと大丈夫!・・・私はそう信じて今日ここへやって来ました。」
政樹の母「愛華ちゃん・・・この子もこんな素敵な子に想われて幸せでしょうね・・・」
愛華「いえ・・・私、政樹に色々と迷惑を掛けちゃったんです。フランスへ行く事が決まった事を知った後に、素直になれなかった私がようやく告白する事が出来て・・・その後も色々と数日間ギクシャクしていて、私が自殺しようとしていた所に政樹が助けに来てくれて・・・告白を一度断られちゃって、今度は政樹の方から告白してくれて・・・それで今の私がいるんです!」
政樹の母「愛華ちゃん・・・・・・」
愛華「今度は私が政樹を助けないと・・・ですね!こうして・・・手を握っています。ずっと・・・政樹?ごめんね?もっと早く来てあげたかったけれど、中々真実を見抜く事って難しいよね?・・・私もテレビのニュースを観て完全に間に受けちゃってたよ!本当は死んでいない、でも飛行機が墜落した・・・あなたはこうして今も苦しみ続けている・・・私が知らない空の下で・・・こうして・・・いつ目が覚めるのか分からない状態で、きっと早く目が覚めて欲しいって思っていると思うんだ・・・えへ・・・よく小さい頃私が熱出した時に政樹が手を握ってくれていたよね?思い出すよ♪こうやって温かい手を私の冷たい手に添えて・・・「愛華?大丈夫だよ?直ぐに良くなるから、俺が付いているから安心しろよな?」って慰めてくれた・・・本当に嬉しかった・・・不思議と直ぐに穏やかな気持ちになって眠っちゃってた・・・そして気が付いたら熱も引いていて・・・不思議だよね?人と人との気持ちって・・・体温を感じる事って・・・ねぇ・・・私待ってるよ?・・・えぐっ・・・あなたが目を覚まして・・・うぐっ・・・「愛華?何でお前こんな所にいるんだ?」って空気読めないセリフを言って・・・ひっぐ・・・ずっと・・・ずっと・・・」
政樹の母「・・・・・・・・」
政樹の父「・・・・・・・・」
愛華「今度は私が側にいるからね?安心して目を覚ましてね?・・・」
政樹「・・・・・・」
ピクッ!!
愛華「えっ!?・・・」
政樹の父「おい!今動いたんじゃないのか!?」
政樹の母「えぇ!!手が一瞬!?」
愛華「はい!確かに今、指が動きました!!政樹?聴こえているの?私よ?愛華だよ?」
政樹「・・・・・・ん・・・・・あい・・・か・・・?」
愛華「政樹!?政樹!?そうだよ!私だよ!愛華だよ!気が付いたの!?」
政樹「あぁ・・・・うん・・・確か飛行機が墜落した所でその後の意識が・・・」
政樹の父「お医者さんを呼ばないと!ボタン押そう!」
「はい、どうされました?」
政樹の父「息子が、息子が目覚めました!」
「直ぐに向かいます!」
医者「息子さん目が覚めたのですね!」
政樹の父「はい!この子が来てくれたおかげだろうと!」
医者「政樹君?意識ははっきりとしていますか?」
政樹「はい!今目が覚めてからしっかりとしています!」
医者「一度脳波を見てみましょう!恐らくもう大丈夫だろうとは思いますが!」
検査が終わり、結果を聞く事に・・・
医者「お待たせしました。政樹君の脳の状態と脳波、どちらも全く問題無いです!これなら直ぐにでも退院出来そうですよ!」
政樹の父「良かった・・・・・先生、本当にありがとう!ありがとう御座いました。」
政樹の母「長い間、ご迷惑をお掛け致しました。本当に先生、ありがとう御座いました。」
医者「私の憶測ではあるのですが、そちらにいらっしゃる、彼女さんですか?恐らくあなたの愛の証だろうと私は思います。本当の所、私もお手上げだったのです・・・どれだけ処置を施したとしても全く反応が無く、先日の処置もダメで・・・今日、あなたが来てから目が覚めた!これは間違い無くあなたが起こした奇跡だと思います!」
愛華「いえ・・・私はただ・・・」
政樹の父「やはり、愛華ちゃんを呼んで正解だったみたいだ・・・本当に愛華ちゃん、ありがとう!!君は天使の様な子だと思う!」
政樹の母「そうね・・・本当にありがとう!愛華ちゃんが来てくれなかったらきっとこの子もずっとこの状態のままだったと思うわ?・・・本当に・・・本当にありがとう!」
政樹「あの・・・さ?本人目の前にして恥ずかしいセリフばかり並べないでくれないかな?」
愛華「ふふっ!ふふふ♪」
こうして、奇跡が起こり、政樹は目を覚ましてくれた・・・その後、政樹は日本へ戻って1人で生活する事になった・・・私と一緒に帰国する事になり、荷物を揃えて私たちはフランスの地を後にする・・・
飛行機の中・・・
愛華「ねぇ?本当に日本に戻って来ても平気なの?1人で?」
政樹「あぁ!もう心配無いよ!それに俺1人じゃないだろ?愛華がいてくれるしさ?」
愛華「うっ・・・うん♪でも私の家に一緒に住むんだよ?平気なの?お姉ちゃんもいるし!」
政樹「まぁ、年頃の女の子の家に一緒に住むんだし、俺だって緊張してるよ・・・うん!」
愛華「あぁ~♪今変な事想像したでしょ?もう~・・・政樹のエッチ!」
政樹「何で!?何も想像なんてしてないだろ!?緊張してるだけだって!」
日本へ到着し、連絡を入れておいたお姉ちゃんが迎えに来てくれた!
茜「お帰り~♪2人共~♪」
愛華「お姉ちゃん只今~♪政樹も連れて帰って来ちゃった♪」
政樹「あっ!茜さん、ご無沙汰しています!お元気そうで良かったです!」
茜「良かった!政樹君、ちゃんと目が覚めたんだね!お帰り!今日から私たちの家に泊まるって話だから一緒に車で送るわね!」
政樹「ご厄介になりますが宜しくお願いします。」
愛華「お姉ちゃんの料理とか凄く美味しいから楽しみでしょ?」
政樹「そう言えば、昔1度だけ食べさせてもらったっけ?あれ凄く美味くて最高だった様な気がする!」
茜「あら?そんなに褒められたら今日はフルコースにしないといけなくなっちゃうじゃない?」
愛華「お姉ちゃんの料理は毎日フルコースだよ!」
茜「あらあら?愛華は私の料理の大ファンだもんね♪」
愛華「本当に凄いからね♪」
茜「はい、到着ね!荷物運ぶの手伝うわね?」
政樹「あっ!すみません、じゃあ、これだけお願いしますね!後は大丈夫ですので!」
こうして、無事に家迄辿り着いた・・・これから政樹と一緒の生活が始まる・・・って恥ずかしいな・・・一応部屋は分かれているけれど、隣り同士だもんね・・・両親が今いないから、お姉ちゃんと私だけだし・・・
政樹「あっ!愛華?お前って今小説家なんだって?凄いな!俺が日本を出る前迄そんなそぶりすら感じられなかったけどさ?どんな小説書いてるの?」
愛華「ちょっ!ダメだよ!勝手に見ないで!?」
政樹「ん?どれどれ?「お前を淫らに変えてやる」「涎が出たのは上じゃなく下だろ?」・・・ってこれってもしかして・・・・・?」
愛華「だから、見るなって言ってるでしょ!?」
政樹「「俺の彼女は官能小説家だった」ってタイトルで俺も書いてみようかな?」
愛華「ちょっと!そんな事したら殺すから!絶対に!!!」
政樹「お前になら殺されても良いよ!」
愛華「えっ!?それって?・・・」
政樹「だって、俺を目覚めさせてくれたのってお前だろ?だったら殺すのもお前で良いよ!」
愛華「何変な事言ってるの?」
政樹「なんてな!はははははっ♪」
愛華「もう!変な事言ってないで出て行ってよ!これから小説書かなくちゃいけないんだから!!」
政樹「えっ!?又官能小説書くのか?それに、このペンネームって・・・くっ・・・ぷぷぷっ・・・八鬼人空 食多郎って面白い名前だよな?」
愛華「それは言うな!!!・・・って今度は一般向けを書くのよ!だからこのヘンテコな名前は封印するの!」
政樹「えっ!?どうして!?こんな面白い名前受けるだろ?絶対にこいつ男だって思って俺も安心・・・いや、官能小説ならこう言う名前アリだと俺は思うよ!うん!」
愛華「なぁに~♪今の「安心」って?もしかして、嫉妬しなくて済むからって事かなぁ?ニヤニヤ」
政樹「いや・・・笑い飛ばせると言う意味では安心だって事だよ!うん!」
愛華「ねぇ?知ってる?政樹って嘘付く時キョドるんだよ?」
政樹「えっ!?嘘だろ!?俺そんな事・・・」
愛華「私が告白する前に私が嘘付くと目がキョドるって言ってたよね?あの時言い返してやろうかと思ったんだよ?政樹は体自体がキョドるから・・・はははっ♪」
政樹「まぁ、あれだ・・・そうだよ!安心だろ!?お前を取られなくて済むしさ・・・お前は俺だけの・・・彼女だし!・・・」
愛華「政樹・・・」
政樹「愛華・・・」
♪チュッ💛
数日後・・・学校にて・・・
担任「はい!皆さん、聞いて下さい。今日から新しいクラスメイトが来てくれました!自己紹介をお願いしますね!」
政樹「はい、今日からこのクラスでお世話になる事になった、加賀谷 政樹と言います。実は、事故で中学二年の頃から意識不明の状態でつい最近目が覚めたので色々と学力も足りていないだろうし、皆にも迷惑を掛けてしまうかもしれませんが、宜しくお願いします!」
♪パチパチパチパチパチ
担任「それから、これは本人から確認している事なので皆にも説明しますが、加賀谷君は、お父さんのお仕事の都合でフランスへ飛行機で行く途中、墜落する事故に巻き込まれてしまい、つい数日前迄意識が戻らなかったそうです。そこで、数日間休んでいた香波さんの知人だったと言う事もあり、香波さんが現地へ訪れて直ぐに彼が目を覚ましたそうです!色々と思う所があるかもしれませんが、皆仲良くして下さい!」
女子生徒A「ねぇねぇ、加賀谷君ってさ!凄くイケメンだよね!?」
女子生徒B「ダメだよ!香波さんの男なんだから勝手に取ろうとしちゃ!?」
夏葉「あら!?随分とハンサムですわね!これだと愛華さんも色々と大変なのでは無いかしら?」
智也「おぃおぃ、香波!?お前凄いイケメンと幼馴染だったんだな!俺男だけど負けそう・・・」
愛華「そっ!?そうかな?・・・私は小さい頃から一緒だったからあまり意識してないな?・・・」
はっきり言うと、政樹はかなりのイケメンだと思う・・・私もその位は自覚していた・・・
だって、中学の頃も告白していた女子生徒も沢山いたし、猛烈な政樹のファンが、ファンクラブ迄作っていたみたいだし・・・
夏葉「愛華さん?余計なお世話かもしれないけれど、しっかりと唾付けとかないと直ぐに寝取られてしまいますわよ?」
智也「お前、最近寝取られ系の小説に嵌っているもんな?実際問題そんな事ってあまり起こらない気がするのだが?・・・」
夏葉「智也も・・・うん!智也も気を付けて下さいね?私だけの智也であり続けて頂きたいですわ!?」
智也「おい、お前!恥ずかしいセリフ言うなって・・・大丈夫だから、俺はお前だけだってもう痛い程分かったからさ!」
夏葉「あぁ・・・♪それでこそ私の見込んだ殿方ですわ!」
愛華「あ・・・あはははは・・・・相変わらずだね?・・・」
夏葉「感激のあまり、おもっ・・・いえ、気絶しちゃいそうでしたわ♪」
愛華「まだ・・・引きずってるんだ・・・そのネタ?・・・」
こうして、私にも穏やかな日常が戻った・・・
そう!私の隣には政樹が・・・安心している所で電話が入って来た!
♪プルプルプル♪プルプルプル♪
愛華「あっ!秋月さんからだ!もしもし?香波です!」
小波「先生!色々と幸せな状況の所申し上げにくい事がありまして・・・」
愛華「えっ!?何かあったのですか?」
小波「以前お話していた一般向けの小説の件、締め切り日が私が最初お伝えしたより1月程早かったみたいで、今週末が締め切りだったのですが・・・本当に申し訳ありません。こちらから説明させて頂いたのですがあちらの方も調整に入っておりまして・・・間に合いそうでしょうか?」
愛華「えっ!?・・・そっ・・・そうですね・・・丁度今週辺りから始めたいなって私も考えていたのですが・・・分かりました!秋月さんには本当に色々と良くして下さっていますので今回私頑張ります!」
小波「あぁ!本当に先生は素晴らしいお方です・・・ありがとう御座います。何かご協力出来る事があれば遠慮無く言って下さい!全力でバックアップさせて頂きますので!では、ご連絡お待ちしていますね!」
政樹「愛華?秋月さんって、官能小説の件か?」
愛華「だ~か~ら~!!一般向けだって言ってんでしょ!?もうあれは封印するんだから!思い出させないでよ!?」
政樹「でも一般向けで八鬼人空 食多郎は無いよな?」
愛華「だから、どうしてそこに拘ろうとするのよ!?」
夏葉「いいえ?八鬼人空 食多郎先生は、もっと素敵なお名前もお持ちなのよ?愛瀬 瑠奈(あいせ るな)先生!一番最初の投稿した時に付けられた素敵なお名前よ!」
政樹「愛瀬 瑠奈?そんなペンネーム迄あったのか!?何だか素敵だよな!そっちの方が!」
愛華「・・・・・恥ずかしい事言わないでよ・・・もう・・・」
政樹「今度お前が書いた一般向けの小説ってのも是非読んでみたいものだな!」
智也「あっ!それならこのサイトがデビュー作だぞ!?」
政樹「ん?こんなサイトがあるんだな!?ええっと・・・」
智也「この作品が凄く感動するんだよ!時間ある時にでも読んでみて欲しい!」
政樹「あぁ!分かったよ、ありがとう!」
帰ってから俺は智也に教えてもらったサイトから愛華が書いた初めて投稿したと言っていた小説を読んでみる事にした・・・
うん、確かに良い話だな・・・そして・・・これはきっと俺が事故に遭った後に書いたのだろう・・・全てが重なる・・・ただ一つだけ除けば・・・
最後の2人幸せにと言う所以外だけど・・・まあ、俺が生きていたからこの最後の物語は俺が組み立ててあげれば良いかな・・・愛華にとって本当に幸せに思える様に出来るか心配だけど・・・俺は俺なりに・・・愛華の事を幸せにしてあげたいと強く思っている!
もう、あんな悲劇を生まない為にも・・・そしてこれから先ずっと愛華と一緒にいる為にも・・・そう心に強く自分自身に誓った!
第四巻 終
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