第16話 歯車


社長にかかってきた電話は調査班からだった

調査班のメンバーの1人

リーダーの「ニンジン」からだ

調査班の奴らはみんな野菜の名前で呼び合ってる

コードネーム的なものだろ

社長のセンスがちょっとヤバい


「もしもし、ああニンジンか。なにか分かったか?」


真剣な顔で「ああニンジンか」と言う社長を見て思わず吹いてしまった

即座に社長は俺を睨み

話を続けた


ニンジンからの報告はこうだった

鬼神の組織を調査しててわかったこと

まず組織名が「vida loca (ヴィダ・ロカ、スペイン語で狂った人生という意味らしい)」

そしてNo.2の奴がメキシコ系アメリカ人のエルサルバドル出身の男だ

中米にある大規模なギャングの幹部でエルサルバドルの刑務所に収容されていたらしく、刑務所内から外に指示を出していたかなりの有権者らしい


そしてNo3が司(ツカサ)という日本人で

素性は分かっていない

見た目はメガネをかけた小綺麗なサラリーマン風の男らしく

恐らくライフサイバネティクスの社員らしい


ニンジンはライフサイバネティクスの自社ビルの前で張り込んでいたようで

黒のセダンの車に乗った司が出てくるのを発見した

ニンジンは持っていた銃型の弾がGPS発信機になっている銃を撃ち

司の乗った車のテールランプの下につけ

追尾をしたらしい


そして司が着いた先は横浜の湾岸沿いにある工場地帯で

物流センターのような場所に入っていった

ニンジンは距離を置きながら車で追尾をしていたようだったが敷地内の為、近くに車を止め歩きで敷地内に入っていった



そこは既に廃工場になっていて今は一切使われていないらしい

司の車が止まっているのは

工場内にある立体駐車場みたいな所で

おそらくトラックの荷下ろしとかにつかわれていた場所らしい


司のいるところに近づく前に

ニンジンから社長に電話が来て今に至っている


社長と電話を繋げたままニンジンは気づかれないギリギリのところまで近づき

ニンジンは報告を続けた


そこには司の車が一台止まっていて

司は車から降り話をしている

相手は20人くらいいて

全員中国人らしく、チャイニーズマフィアらしい

司は笑顔で話をしているが

向こうはかなり敵意むき出しで、怒りを露わにしているらしい


今いるエリアは結構広さはあるし、距離も100m以上離れた場所の物陰にニンジンは身を潜めているようで

かなり声が響くらしく、電話の奥から奴等の話し声が聞こえてきた


「話ガチガウネ!アナタタチ、ワタシタチナメテイルデショ!」

片言の日本語でチャイニーズマフィアの男が司に向かって言った


「我々はきちんといいましたよ。摂取量には気をつけてくださいって」

「ソレイワレテモ労働デ使ッテル人達欲シガル!仕方ナイ!ソレヨリソノ人達ミンナ人形ミタクナル!ツカイモノナラナクナル!コノ薬ワタシタノ、オ前タチ!金ハラエ!ハラワイナラ殺ス!」

「言いたい事は分かりました。ただOUTでだいぶ稼いだんじゃないですか?それって私たちがOUTを売ったからですよね?違いますか?」

「人ガツカエナクナッタライミナイ!」


チャイニーズマフィア達はいっせいに腰に隠し持っていたナイフやらこん棒、バール等を取り出した


司は呆れたようにため息をはいた

「やれやれ、救えないですねあなた達は。リチャードさん!お願いしますよ!」


司は車の方に向かって言った



車のドアが開き男の声がした

「なんだよ。まだ終わらないのかよ」

中から出てきたのは

肩ぐらいまで伸びた黒髪の長髪で

身長2m近い長身

黒のスラックスに白いタンクトップ

指先から顎の下まで洋彫のタトゥーがビッチリ入っている

口の周りには髭があって

目の下には涙模様刺青


ニンジンから聞くには見た目のインパクトもあるが放つオーラが凄すぎるらしい



長身の男は後部座席から自分の上半身くらいの長さがあるククリナイフを取り出し

チャイニーズマフィアの方へ近づいていった


司は長身の男の後ろに下がった


「よお。俺がNo.2のリカルドだ」


マイクまではいかないが日本語も流暢に話しているこの男がヴィダ・ロカのNo.2リチャードことリカルド





そしてこの後の出来事で事は動いていくことになる










  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る