第17話 欺瞞


「いくぞ。中国人ども」


リチャードはチャイニーズマフィア達から3メートル以上離れた場所にいたが

一言発言した途端

一瞬で間合いを詰めた


そして先頭にいた2人をまとめて

ククリナイフを掲げ、斜め上方向から叩き切った


ひとりは頭を叩き切られ即死

もうひとりも首を切り落とされ即死


チャイニーズマフィア達は叫びながら

リチャードに突っ込んでいった


だが一太刀でひとり、またひとりと切られ死んでいく


10人くらい殺されて

圧倒的強さのリチャードに恐れをなして

チャイニーズマフィア達は走って逃げ出した


「ひとりも逃さねぇぞ中国人ども」

リチャードは笑いながら

即座に逃げ惑う奴等を追いかけ切りつけていく


時間としては5分程度

その短い時間でリチャードは20人以上の人間を皆殺しにした


「完全にバケモノです。ケタ違いです、、、」

ニンジンは怯えながら俺らに伝えた


社長の電話をスピーカーにして俺も聞いていたが

No.2もこのレベルとは正直驚いた

そして鬼神はさらにこの上を行くんだと考えると

正直恐ろしい

ただ

アイツらを殺るのは俺しかいない

さらに俺は覚悟が深まった


また電話からリチャードの声が聞こえてきた


「おい司、なんだよコイツら?全く手応えねぇぞ?」

「リチャード、、、あなたが強すぎるんですよ」

「そおかー?ところで司ひとつ聞きたいんだが」

「なんですか?」






「さっきからそこでコソコソしてる奴は誰だ?」




バレた

ニンジンは慌てて俺らに

「バレました!通信を辿られないよう電話破壊します!とりあえず退避してまた連絡します!」


そして電話が切れた



「一瀬!ニンジンの元に向かってくれ!!」


社長はすぐさま俺に指示をした


「はい!」

場所は社長が既にニンジンの携帯のGPSから割り出していた

すぐさま俺は準備をし

駐車場に置いてあるバイク

BMW R nineT Racerにまたがり

会社を出た




ニンジンとの出会いは4年前

被災地にある原発から近い、放射能レベルのかなり高い場所で除染作業をさせられていた

当時の彼は30歳だった




ニンジンが小学校低学年の時

母親は父親の暴力に耐え切れず家を出て行った

それからは生活保護を受けながら酒を飲むことしかしないアルコール依存症の父親と生活していた


高校を出て近所の工場に就職して

父親を養っていた

ある日家にヤクザが押し寄せてきた

父親は外で酒を飲んで暴れたり

無銭飲食したり

挙げ句の果てには500万以上、借金をしていた


家に金目の物はなく、父親には金を稼ぐ能力がないため、代わりにニンジンが連れてかれた


それから約6年間

除染作業をひたすらやらされていた

給料なんてないし、休みも、寝る時間もないただひたすら働かさせられていた

食事は出るが3食カップラーメンかレトルト食品

携帯も無ければ娯楽もない

やることは寝ることか他にいる奴と話すしかない

皆で寮みたいなところで暮らしていたらしいが全員似たり寄ったりな境遇で

監視役もつねにいるため

逃げることすらできず

仕事で失敗すればサンドバッグにされる

そしてニンジンが連れていかれてから3年後に父親は病で他界したらしい

ニンジンには夢も希望もなにひとつなく

ただ働かされているだけの毎日だった


そんなニンジンと会うキッカケになったのが

かなり悪徳な闇金融を凌ぎにしている

ヤクザを殺りにいった時だ

借金のカタにハメられて

無理矢理働かされている人達がいるのは

聞いていて

ヤクザを殺った後に

解放した人の1人がニンジンだった


それから4年

調査班としてニンジンは真面目に働いていた

指示に忠実でしっかり仕事をこなす優秀な人材で

一緒にやってきた大切な仲間だ



フルスロットルで飛ばしまくって

使われていない物流センターに到着した

バイクに乗ったままニンジンがいる場所まで上がっていった


そこには人影もなければ

もの音もしない

司の車もなければ

リチャードもいないし

中国人の死体もない


ただそこにはボールのようなものが転がっていて

確認しようと近づいた


正直こうなることはわかっていた

だが希望を捨てたくなかった

社長もそうだったと思う

だからこそ

俺に行かせたんだと思う

覚悟はとっくにしてるけど

やっぱ無理だよ



転がっていたのはニンジンの頭だった

頬にはvida locaとナイフで彫られている



ごめんな



もう誰も失いたくない




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