第393話【現実】


「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」




神都畑間から逃げ出した人々。


彼等はもう限界に近付いていた。


食料を怪人に殆ど持って行かれたからだ


とは言え怪人は怪人の巡回ルートを教えてくれた。


そのお陰で比較的楽に逃げる事が出来ている。




「くそ・・・眩暈がする・・・」


「しっかりしろ・・・」




食料も底を突いた。


死が目前に迫っている。


しかし希望も目前である。


怪人から山中の地理も聞いてある、 これならば食料が尽きても・・・


そんな思いを抱きながら彼等は逃げていた。




「おい・・・街だ・・・」




森が晴れ、 街が見える、 ひとまずは一安心と言った所だろうか。




「おい・・・あれは・・・」




大勢の怪人!! あれは獅子堂一派だ!!


大勢の猫科の怪人が陣を展開していた!!




「ど、 如何する?」


「如何するって・・・逃げるしか!!」


「逃げて如何する・・・」




食料は無いのだ、 希望を目前にして逃げて生きていられる保証は無い。




「・・・・・命乞いをしよう」


「正気か?」


「だってそうするしか無いだろう、 あいつ等だって非戦闘員を殺す筈が無い・・・」


「おいおい、 冗談じゃないぜ、 俺は逃げる」


「逃げても食料無いだろ」


「知るか!! 俺は生きるんだ!!」




後ろに振り返って山に向かって逃げる男。




「・・・・・」




どさっ、 と倒れる。




「え?」




猫科の怪人が血に濡れた爪を舐めながらこっちにやってくる。




「ま、 待て!! 巡回の情報を我々は持っている!!


我々の命を助けてくれれば教える!!」


『・・・・・』




猫科の怪人達はそんな事にはお構いなしに逃亡者たちに爪や牙を突き立てる。




「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああ!!」


「助けてくれええええええええええええええええええええええええええ!!」


「お前達も人間だっただろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」


「おかあさあああああああああああああああああああああああ」


「げほ」


「ぎゃああああああああああああああああああああ!!!」


「死にたくない!!死にたく」




数分後、 彼等は肉塊となった。




『全くこいつ等一体何しに来たんだ?』


『こんな連中ほっといても良いんじゃね?』


『ボスからの連絡だ、 スパイかもしれねぇから殺して置けって』




これが現実である。


強者が弱者を踏み潰す、 何と悍ましい事か。


しかし、 それは彼等にも適用される。




『ん?』


『如何した?』


『バイクの音が聞こえる・・・』

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