第392話【馬鹿】

ガツガツをパンを貪る怪人。




『おいしそうな物食ってるねぇ』


『ん』




別の怪人が現れた。




『そのパン如何した?』


『逃げてる馬鹿から貰った』


『おいおい逃がしちゃったのか?』


『別に逃げても良いだろ、 喰うか?』


『貰おう』




怪人は豊かな生活が保障されている、 とは言え食事の量は1人分と決まっている。


もっと食べたくても一人分、 食べ盛りには少し寂しい。




『バターロールかよ・・・せめてアンパンだろ・・・』


『アンパンは先に食ったよ、 美味しい物は早く食べなきゃな』


『けっ・・・それにしても逃がして良かったのかよ』


『良いんだよ、 ああいう馬鹿は痛い目を見ないと分からないからな』


『確かに逃げる奴は馬鹿だな』


『勇気が有る、 けれども馬鹿だ』




ケラケラと笑う怪人達。




『如何なると思う?』


『食料全部奪ったのか?』


『いやいや、 ギリ足りる位は残してやったよ


辿り着けないのは可哀想だからな』


『鬼畜だなぁ、 ジャムくれよ』


『持ち合わせが無い』




怪人の中にはイチゴやコケモモ、 ブルーベリーと言った様々な果実の怪人も多く居る


怪人達の配給品の中にはそんな怪人達の木の実から作ったジャムも含まれている。




『けっ、 食い過ぎだ』


『何時死ぬか分からないのに取っておく必要も無かろう』


『全く持って正しいがねぇ・・・』




むしゃむしゃとバターロールを貪る怪人。




『逃げた連中は何処まで行けるかね?』


『運が良ければ、 いや運と諦めが悪ければ支配領域の外に出られるんじゃねぇの?』


『如何だろうなぁ、 今敵さんに包囲されてるんだから


敵さんに出くわすんじゃねぇの?』


『そりゃあ蟻の子一匹逃さない包囲網だ、 人が逃げられる訳も無し


そして出くわせば確実に死ぬだろう』




水筒から水を飲む怪人。




『ふぅ、 でもクルセイダーズならワンチャン有るんじゃね?


あいつ等怪人を殺す怪人だし』


『さぁなぁ、 でもこの街から逃げ出した住民の振りをして


不意を突いて攻撃とかは良くやるし殺されるんじゃねぇの?』


『悲しいなぁ』


『どの口が言うか、 さてと俺達もそろそろ戻らねぇか?


巡回の時間ももうそろそろ終わりだ』




懐中時計を見る怪人。




『おっともうそんな時間か、 じゃあ早く帰って飯にするべー』


『まだ食うのかよ』


『お前は食えないのか?』


『まだまだ余裕だ』

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