第381話【酒場にて】

前回から三日後、 滝が町を出て他の街に移った。

その街はそれなりに大きく栄えていた。


「さてと・・・」


この半年の間に世の中の常識も大分変わっていた。

テレビもネットも電話もEメールも郵便も新聞も機能しなくなっていた。

そうなると人々は昔の様に一ヶ所に集まって情報交換を行う訳である。

集まる場所はベタだが酒場になる、 かつては喫茶店だったが

今は酒場になっている店も少なくない

何しろコーヒーに使う水やお湯が供給できない場合も有るのだ。

ならば酒を供給する、 という考え方である。

酒場に入る滝、 主に情報収集の為である。


「なぁ、 聞いたか? 怪人ハンターへの依頼料渋って

怪人ハンターに出て行かれた町が有るんだって」

「知ってる、 ドヤ顔で法律知識ひけらかして

それで依頼料下げさせようとしたけど怪人ハンターに逃げられたとか」

「馬鹿だなぁ、 怪人に襲われ放題じゃねぇか」

「怪人の襲撃が有ったってよ」

「交渉した女弁護人はリンチに遭ったとか」


そんな話を耳にしながら何か仕事が無いか探す滝。


「うん?」


ポスターを見かける滝、 どうやら仕事の募集である。


”怪人ハンター急募、 依頼料要相談、 三食風呂付”


今のご時世ならば良い条件に見えるが依頼内容が書いていないのが気になった。


「なぁマスター、 あのポスターって何の仕事だ?」


酒場のマスターに尋ねる滝。


「あぁノギクボ教の私兵集めらしい」

「ノギクボ教って怪人の宗教団体だろ? 何でそんな奴が怪人ハンターを雇うんだ?」

「知らね、 興味が有るなら行ってみれば?」


罠だと踏んだ滝はポスターをスルーした。


「マスター、 何か良い仕事は無いかい?」

「掃除とかかなぁ・・・」

「掃除って・・・そんなちゃちい・・・」

「一回の清掃で三食飯付き風呂付らしい、 勿論給料も出る」

「・・・・・なんだそれ怪しいな」

「特殊清掃だからな」

「あー、 死体掃除とかかぁ・・・」


怪人を殺していたがそう言う仕事は御免被りたい滝だった。


「俺は怪人ハンターだけどよ、 そんな俺にぴったりな仕事は無いか?」

「怪人ハンターはこの街には結構居るから他の街に移ったら如何だ?」

「マジかー・・・」


前の町の貯蓄が尽きる前にさっさと新しい仕事を探したい所だったが

仕方が無いと酒場を出ようとする滝だった。

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