第364話【買い出し】

ジム・マークスはジャーナリストである。

主に怪人をテーマにした記事を書いていた。

主なので怪人以外にも様々な記事を書いていたが主に怪人の記事を書いていた。

ジムがこの国に来たのはC2号部隊の記事を書く為だったが

半年前の怪人達の襲撃、 世界同時多発スタンピートで海外渡航すら出来ない状況だった。

怪人達は情報インフラのみならず航空、 航海インフラも破壊したのだった。


そんな訳でジムは仕方無しに働く事になった。

当然ながらジャーナリストとしてではなく、 ガタイの良い体を活かした仕事である。


「じゃあ、 そろそろ買い出しに行って来る」

「いてらー」


両親が海外赴任で現在独り身の家出少女マミを家政婦代わりに

勝手に住み付いたマンションの一室でジムは生活していた。


マンションの大家が殺され、 それから好き勝手住む連中が居るのだ。

最早この国の治安は相当悪い。

しかしジムを始めとしたこの国の住民は知らないが

他国は更に治安が悪くなっていた、 核攻撃すら起きたのだ。

世紀末の様な有様になっている。


閑話休題、 ジムは仕事場に来た。

仕事場には大勢の男達が居た。


「おうジムか」

「ようボス、 景気は如何よ」

「まずまずだな、 今日のノルマは50個だ」


ジムの仕事は水の運搬である。

ガソリンの輸入もストップし、 電気やガス、 水道も使用不可になってしまった。

その為、 水源から水を汲む仕事が成立する状況になっていた。

朝から晩まで働いてノルマの数の水のボトルを全て運んで

水源の持ち主であるボスに水を持って来るのだ。

その水でボスは様々な物資を調達すると言う訳だ。


「今日は休む」

「そうか、 じゃあ買い出しか?」

「おう」

「まいどあり」


仕事場の敷地にある建物に入るジム。

そこは店の様な様相だった。

とは言え異様な店だった。

店内の肉や魚は全て燻製になっている、 恐らく日持ちする様にしているのだろう。

野菜も泥が付いている、 恐らく取れたてなのだろう。


「ジムサン、 イラサイ」


ボスの愛人と噂される何処かの国の元ホステスのレジ係が挨拶をする。


「薫製肉500gと大根、 人参とボトルで水を1本くれ」

「ハイ、 2000Pね」


2000Pとはこの店でのみ使える通貨である。

円の価値は最早無いに等しい、 地方通貨が幅を利かせている状況なのだ。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る