第334話【花火大会かと康太は思った】

少し時間は遡って塾から家に帰る康太。


「だだいま”ぁ”!!」


家に帰っても誰も出て来ない。


「あ”れ”ぇ”? なんでだれも”いないんだぁ”?」


首を傾げる。

そして家の中をうろうろする、 うーんうーんと考えて

あ、 そうだ、 と手を叩く。


「ぞうだっだ!! みんなりょごういっでだんだっだ!!」


康太以外の家族は康太が居ない間に予約していた旅行に出発していたのだった。

前々から予約していなければならないので康太はいけないのだった。


「ぞーだ!! あじだよでいないじ、 どがいにい”っでなにがぐおう”!!」


留守番をしてくれとも言われなかったので

思い立った康太は数百万円を懐に入れて家の鍵を閉めて

鼻歌交じりに長距離バスに乗ったのだった。

明らかに過剰に持って行きすぎだがまぁパ―っと使おうと言う腹である。

まぁ康太は大してそんなに使わないので十分の一でも充分である。


「♬”~♪”~」


るんるん気分で長距離バスに揺られる康太。

都会に行ったら何を食べようか、 まず何処かに泊ろうとかそういう事を考えていた。

何処かで遊ぼうか? ボウリングでもしようか、 バッディングセンターでも行こうか

それとも総合アミューズメントでも行こうか、 何処か旅館で温泉にでも漬かろうか。

そして何を喰おうか、 ステーキ、 すき焼き、 しゃぶしゃぶとか肉か?

シュラスコなんかも興味深い、 鮨や焼き魚とかも心躍る。

美味しいパスタのお店とかも行ってみたい、 いっその事バイキングにでも行こうかと

心を躍らせながら子供の様にはしゃいでそんな事を考えていた。

明後日までには新しい居酒屋の開店に間に合えば良いし

御手洗とそこで合流すれば良いと考えていた。


「ん?」


畑間市から離れた時に異変に気が付いた。

ふと畑間市の方を振り返ると空が明るかった。


「なんだぁ”?」


とても明るい、 まるで花火大会かと康太は思った。

後に畑間飛行機事故及び畑間スタンピートと呼ばれる大事件が起きるとは思いもしなかったのだった。

幸いにも康太は難を逃れる事に成功し、 大金を手にしていたので立て直しは容易かった。

しかし現在畑間は地獄絵図になっているのだった。

その事を康太は知らない。


楽しみにしている康太は着くまで暇なので軽く一眠りする事にしたのだった。

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