第333話【出来る事をやるだけだと中目黒は言った】

移動のヘリコプターの中で静かに待つ中目黒。

畑間市近郊の畑間山に差し掛かった。


「隊長、 この前の視察と言い最近C2号部隊が可笑しな雰囲気になっている気がします」


若い隊員が重々しく口を開く。


「確かにな・・・獅子堂さんの肝いりで造られた部隊なのに

身元が不確かな者が居たと言うのは不自然だ

でも我々は何処まで言っても暴力装置みたいなもんだ

出来る事をやるだけだ」

「・・・・・」


俯く隊員。


「確かに暴力装置とは聞こえが悪いだろう

だけどな怪人を殺す力も無い対怪人部隊なんて居る価値が無いだろう

そもそも怪人がこの世に居ては誰も安心して外を出歩けない

我々がやるしかないんだよ、 給料も貰っているし

何処ぞの野党政治家みたいに怠ける事も出来ないしな」

「ぷっ」


噴き出す隊員。


「全く、 政治家は楽な仕事だな」

「全くです」


はははと笑う隊員達。


「考えようによっては我々は怪人を倒すヒーローの様な者だ

腐らずに頑張ろうでは無いか」

「隊長!! 大変です!!」

「如何した!?」

「ああああああああああああああ、 あれを!!」


ヘリコプターのパイロットが取り乱しながら叫ぶ。

ヘリコプターの眼の前に落下しながら向かって来るジャンボジェットが!!


「なっ!? 回避しろぉ!!」

「無理です!! 間に合いません!!」

「くっ、 ならC2システムを起動して皆で飛び降りるぞ!!」

「高度が高過ぎます!! C2システムを使っていても命の保障は出来ません!!」

「ジャンボジェットと正面衝突するよりは生存率は高い!!」


隊長含めた隊員達はキーを入力した。

『safety OUT』と機械音声が流れる。


『『『『『起動!!』』』』』


一斉にC2システムを起動して飛び降りる隊員達。

ヘリコプターがジャンボジェットと激突して爆発炎上するのが見える。


「うわああああああああ!!」

「ぎゃあああああああああああああああ!!」


逃げ遅れた隊員達の断末魔が響く。


『くっ・・・すまない!!』

『隊長!! 駄目かもしれませんが受け身を取って下さい!!』

『分かっている!!』


地上に激突するまで100m、 80m、 50m、 30m、 10m

そして0


グシャボキドガッ、 ガギと骨が折れる音や機械が壊れる音

そして絶叫が周囲に響き渡ったのだった。

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