第307話【りんりん地区】

「いやいや、 何も考え無しに食べている訳じゃないよもぐもぐ」


小林がフグを頬張る。


「考えが有って食べているってどんな考えですか」

「りんりん地区に行くんだろう? あそこはヤバいと噂されている」


りんりん地区、 元々はドヤ街だったが不景気になった事で

大勢の労働者にあぶれており治安が悪いカオスな地区になっている。


「いえ、 この状況ならりんりん地区の方が安全では無いでしょうか」


木天蓼は語る。


「何故?」

「りんりん地区には暴力団事務所は無いですから

暴力団の抗争は置きませんよ」

「そうなのか」

「それでも治安の悪い所は治安の悪い、 もう二度と食べられないかもしれないし

フグは食べて置いて損は無いだろう」


そう言ってフグを貪りつくす小林。


「あー!! 小林さん全部食べちゃったんですかー!?」


絶叫する美亜。


「御馳走様でした、 美味しかったですよ」

「もー私前々食べて無いのにー・・・もう一軒付き合って下さいよぉ」

「えー、 私はもうお腹一杯なんだが・・・」

「私は食べ足りないですよー!! もう一軒はしご飯行きましょうよぉおお!!」

「じゃあこうしよう、 草佐々君、 君もあんまり食べて無いだろう?」

「まぁ、 そうですね」

「美亜ちゃんと二人で御飯食べに行きなさい」

「えぇ、 この状況でですか?」

「こんな若い娘捕まえて嫌な顔しないで下さいよー!!」

「でもなぁ・・・」

「良いから行きましょうよ!! あ、 そうだ木天蓼さん!!

この辺で美味しいお店って何処か有りますかー!?」

「そ、 そうですねぇ・・・串カツのお店何かがおススメですね」

「串カツ!! 良いですねぇ食べたかったんですよ!! 行きましょう!!」

「わ、 分かったから一回放せよ!! 服が伸びちまうだろうが!!」


草佐々を引き摺って行く美亜であった。


「そうそう小林さん、 もう一つ伝えて置く事が有ります」

「何ですか?」


木天蓼が小林にそっと耳打ちをする。


「予測通り黒猫が横切った」

「やはり・・・ですか」

「私には何の事だがさっぱりですが・・・」

「そうでしょうね、 私と森永さんで通じる暗号符丁の様な物ですから」

「なるほど・・・」

「さてと、 では私もこれで失礼しますよ」

「分かりました」

「あ、 公安宛てで領収書下さい」

「用意しております」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る