第244話【雑草】

車を走らせて洋館から帰る浦吉。


「しかし、 これは予想外の収穫だな・・・」

「何がです?」


運転手に問われる浦吉。


「件の薬、 如何やら再現も可能らしい」

「それは凄いですね」

「あぁ、 この薬をこっちで複製して大儲けも出来る

場合によっちゃ、 舎弟に注射して強化も楽々だ」

「それは凄いですね、 俺達全国制覇行けるんじゃないですか?」

「気が早ぇえよ」


そう言いながら満更でもない浦吉。


「ふふふ・・・」

「・・・ん?」

「如何した?」

「いや、 道に何か・・・草かな・・・」

「山道だし草位有るだろ」

「そうですね」


車を進める運転手、 しかし車は急に止まった。


「おい、 如何した?」

「いや、 急に動かなく・・・」


エンジンをかけるもまるでびくともしない。


「ちょっと外を見ますね」


運転手は車の外に出た。


「ぬかるみにでも嵌ったか?」


浦吉は外の様子を伺う、 するとガラスに思い切り運転手の顔が叩きつけられる。


「!?」


懐から銃を出す浦吉。

だが突如、 車が浮き上がった!!


「!?」


咄嗟に車から飛び降りる浦吉。

車は何かの植物の様な物で持ち上げられ宙づりになっていた。


「何だ!?」


浦吉は銃を構え狼狽していた。

そうこうしている内に自らも植物に縛られてしまった。


「くっ、 離せ!!」


植物に向かって銃を撃つ、 しかしダメージにはならず弾切れになる。


「何だって言うんだよ!!」

「あんまり動くなよ」


物陰から草臥れたスーツを着た男が現れた。

その男の眼は狂気染みていて血走っていた。


「てめぇ・・・何者だ!?」

「お前には役目が有るそれを熟している限りは命は保障しよう」

「何だと!?」

「言う事聞かないと殺すぞって言っている」

「・・・何が目的だ」

「金と薬を寄越せ」

「・・・強盗の類か!?」

「まぁそうなるなうん」


男は震える手で自家製の煙草に火を点けた。

匂いから大麻だと浦吉には分かった。


「薬中か、 お前!?」

「そうなるかなうん俺は五野井九重だ金を寄越せ金を金と薬隠しているんだろう隠し場所に案内しろ」

「・・・分かった、 まず降ろせ」

「おろしてやれ」


植物は意志を持っているかの如く、 しゅるしゅると滑らかに浦吉を下ろしたのだった。

自動車も一緒に降ろす。


「乗れ」

「・・・・・」


運転席に乗る浦吉。

そしてアクセルを思い切り踏みしめたのだった。


九重と草はそれを黙って見送ってしまった。

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