第243話【偶然か?】

「話を戻すがこの薬、 再現は可能か?」


浦吉が話を戻す。


「再現は可能ですね、 揃えるのは少し難しいですが

一般に流通されている物でも再現は可能です」

「そうか・・・成分表の様な物は有るか?」

「あります」


一応作っておいた成分表を渡す鶴瓶。


「御苦労、 おい、 持ってろ」

「はい」


合田が成分表を鶴瓶から預かる。


「所で誠也、 聞きたい事が有るんだが良いか?」


浦吉が懐から煙草を取り出す。


「何だ?」

「そこの女・・・鶴瓶とか言ったか?」

「あぁ・・・」

「色々調べたんだが、 その女、 ノギクボ製薬の研究員だったそうじゃないか」

「・・・らしいね」

「お前が人間を怪人にする研究をしていたノギクボ製薬の人間と帰って来た所に

怪人化の薬が出回る・・・これは偶然か?」

「・・・何が言いたい?」


緊迫した雰囲気が漂う。


「まぁ要するにだな・・・」


懐をまさぐる浦吉。

そしてライターを取り出し煙草に火を点ける。


「お前達が裏で何かしてるんじゃないかと怪しんでいるんだ」

「それだったらこんな屋敷でのほほんとしたりしないし

アンタの解析の依頼も断るだろう」

「見張りを付けたからな」

「幽霊にビビる連中だがな」

「まぁ兎も角お前とその女を疑っていると言う訳だ」

「研究者として言わせて貰えばこの薬は下の下だよ」


鶴瓶が二人の会話に割って入る。


「怪人になるとしても体の一部

そもそも怪人になれるかどうかすら博打紛いの物を

一般流通させるのは如何考えても異常だ

死ぬ危険を孕んでその程度の物を市場に流すのはアホのやる事だと思う」

「・・・・・」

「ふん・・・言うね」

「一応科学者だからね、 言う事は言うよ」

「まぁお前達だけに的を絞るつもりも無いよ、 他にも色々と調べるつもりだ」

「それが賢明だよ」


浦吉が立ち上がる。


「応援は居るか?」


合田に尋ねる。


「い、 いえ大丈夫です」

「幽霊にビビってるのにか?」

「・・・・・」

「冗談だ、 だがこれから4時間ごとに連絡を入れろ」

「分かりました」


浦吉は屋敷から出て行った。


「・・・・・鶴瓶さん、 ノギクボの社員だったんですね」

「そうね、 ノギクボが無くなる前日に

ちょっとゴタゴタが有ってドロップアウトした」

「そうですか・・・」

「・・・そういえば俺の親父、 どうしているかな」


父親の事を思い出す誠也だった。

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