第225話【万策尽きる】

一晩明けて再度やって来た栗貫。

面会室で再度向かい合う二人。


「貴方の精神虚弱と言う事は如何でしょうか?」

「如何でしょうか・・・って何が?」


栗貫の言葉にオウム返しする胎太鼓。


「貴方の無罪を勝ち取る作戦ですよ」

「無罪を勝ち取る作戦・・・って精神病院送りにされるのはなぁ・・・

正直辛い・・・如何にかならないのか?」

「如何にかってうーん・・・貴方にやる気がないなら難しいですかね

精神虚弱に見せるにも神経使いますし」

「嫌な神経の使い方だな・・・真っ先に精神病院送りの策を出すと言う事は・・・

碌なアイデアが無いと言う事か?」

「そうですね・・・もう正直弁護不可能です」

「匙を投げられたか・・・・・」


頭を抱える胎太鼓。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・栗貫さん

私には策が思いつかないですよ」

「私もです、 万策尽きましたな」

「潔く死刑台に、 は行きたくないです」

「誰だってそうでしょう」

「・・・・・私は自分の罪を全面的に認めようと思います」

「諦めるのですか? それとも情に訴えると?」

「・・・それは・・・」

「情に訴えても貴方は死刑になる可能性が有ります

怪人誘致はそれ程迄に重罪なのです」

「・・・・・」

「貴方がした事は殺人計画を見過ごしている事と同義です

これは反省の意志を見せた所で如何にもなりません」

「・・・・・」


再度頭を抱える胎太鼓。


「せめて娘の結婚式の写真を見るまでは死ねない・・・

何とか情状酌量出来ませんか?」

「厳しいです」

「・・・・・分かりました、 もう腹を括りました」

「胎太鼓さん?」

「どうせ死ぬのならば無様な姿を子供達に見せずに死にます

大人しく胸を張って、 いや反省をしながら死にます」

「・・・・・そうですか、 ならば何も言いません

私も出来る限り弁護をしてみます」

「よろしくお願いします、 栗貫さん」

「なんですか?」

「こんな案件に貴方を巻き込んでしまい申し訳無い」

「私は無敗の弁護士ですが

一番の自慢は弁護を依頼されて断った事が無いと言う事です

貴方を見捨てる事はしませんよ」

「ありがとう・・・本当にありがとう・・・」


涙を流す胎太鼓。


「いえ、 こちらこそ力足りずですみません」

「こちらも考え足らずだったから良いですよ・・・」

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