第224話【離婚】

「り、 離婚か・・・」


がっくりと肩を落とす胎太鼓。

予想していなかったとは口が裂けても言えない。

自分が見過ごして来た事を思うのならば当然だろう。


「・・・・・理由を聞いても良いか?」

「貴方には御世話になりましたが今回の事で私達の立場が危うくなりました」

「・・・立場?」

「私は大企業の重役の妻だと言う事でご近所づきあいも有利に進めていたけども

今回の件で爪弾きになりました」

「う・・・」

「子供達も学校でいじめられてはいませんが白い眼で見られています」

「・・・・・」

「私達の為にも離婚して下さい、 あなた」

「・・・・・」


机に突っ伏して泣き叫ぶ胎太鼓。


「うおおおおおおおおおおおお!!! うおおおおおおおおおおお!!!」

「おい如何した!?」


外から看守が入って来る。


「泣いているだけです、 ほっといて下さい」

「しかし・・・」

「この人が泣く時は何時もこんな感じなんです、 ハンカチでも添えてやってください」


ハンカチを手渡す看守、 涙を拭いて鼻を噛む胎太鼓。


「きったねぇなぁ・・・」

「こういう人なんです・・・」


落ち着いた胎太鼓はしゃぐりながら話し始めた。


「私は悪い事をしたのは分かるよ、 だけど、 だけども!!

じゃあ如何しろって言うんだ!! 子供三人を大学に通わせて

家のローンを払いながら、 車も購入して!! そんな良い給料の払いの企業が無いだろ!!」

「・・・・・私も働きに出て居れば良かったと?」

「そんな事は無いさ!! 君が支えていたからこそ安心して仕事に行けた!!

悪かったのは私さ!! 申し訳ない!!」


頭を下げる胎太鼓。


「・・・・・」

「ただ・・・一つ頼みがある、 君に行っても仕方ないが・・・」

「何?」

「末の娘の・・・朋美の結婚式に呼んでくれとは言わない

結婚式の写真だけでも送って貰えないだろうか?」

「・・・・・貴方のせいで結婚出来るか分からないわよ」

「それでも今まで生活出来たのは私が稼いだ金のお陰だろう

それ位の事はしてくれてもいい筈だ!!」

「・・・・・分かったわ、 じゃあ離婚届にサインをして貰える?」

「如何やって?」


面会室には仕切りが有るので物を渡す事は出来ない、 看守に頼んで離婚届を持って来て貰い

サインする事で事なきを得たのだった。


「じゃあ、 達者でな・・・」


道子は黙って面会室を出たのだった。

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