第215話【先客】

ノギクボの秘密研究所からノギクボの本社に逃げるトラックの一団。

その中に秘密研究所副所長、 高野目 丈二はトラックの荷台の一つに居た。


「高野目さん、 所長の事は残念でしたね」

「あぁ・・・父親の様に思っていたのに・・・あんな事になるなんて・・・残念だ」


部下の一人が慰めをかける。

因みに高野目の家庭は母子家庭、 父は高野目が若い頃に女と逃げている。

高野目にとって父親は不倶戴天の敵である。

何時か蹴落としてその座を奪おうと虎視眈々と気を伺っていたのだ。


「・・・・・」

「野木久保君、 息子さんの事は残念だった」


同乗していた野木久保 翔に慰めの言葉をかける高野目。


「えぇ、 残念でした、 強力な怪人としての能力を持っていたのに」

「そっちか・・・」

「他に何が?」

「息子さんだろ?」

「薬物を使用する親不孝者ですよ、 親から貰った体を何だと思っていたのやら」

「そうか・・・研究資料はちゃんと持って来れたな?」

「えぇ、 こちらに」


HDDドライブを見せる翔。


「良し、 それならば大丈夫だろう」

「大丈夫ですかね、 怪人溶液や機材の殆どを失いましたよ

これからの怪人研究は間違い無く遅れが生じます」

「会長を説得して何とかして見せるさ」


走っていたトラックが停車する。


「もう着いたのか?」

「すみません、 秘密の入口に着いたんですが先客がいるみたいです」


ドライバーが荷台に向かって喋る。


「先客?」


荷台から降りる高野目と翔。

秘密の入口には既にトラックが停車している。


「これじゃあ入れないな・・・おーいちょっとー」


高野目が声をかけると此方に人影が歩いて来る。


「すまんが退いてくれないか? 入れないんだが・・・」


気が付いた高野目、 猛ダッシュで振り返って逃げようとするも間に合わず拘束される。


「高野目さん!?」


翔が叫ぶも次の瞬間には首を刎ねられていた。


「怪人だ!! 逃げろ!!」


ネコ科の怪人が次々とノギクボから出て来る。

ドライバーが声を張り上げるも、 ドライバーは直ぐに殺害され。

トラックが発車する前にトラックに居た全ての人員は悉く皆殺しにされたのだった。


「くそ・・・何で・・・魚目を殺してやっと所長に慣れると思ったのに・・・」


涙を流しながら悔しがる高野目

その高野目にネコ科の怪人は迷いなく爪を振り上げた。

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