第212話【倒れた老人】

研究所を上へ、 上へと進んで行く夢宮と癒し屋。


『78、 何か変だとは思わない?』

『何がだ?』

『さっきから怪人とか警備員をよく見かけるけど

研究員とは見かけないじゃない、 ここは研究所でしょ?』

『確かにそうだ・・・もしかしたら別ルートで逃げているのか?』


その通りである、 重要な研究施設は地下に存在し

上層階は警備員の詰め所や装備品の保管所、 また重要役職の部屋となっている。


『ん・・・』

『如何した?』

『血の匂いがする』

『さっきからずっとしているだろう』

『いや、 この先からしている』

『なんだと?』


既に何か起こっているのかと警戒する二人。

そして進むと老人がはいつくばって進んでいた。


「ぐ・・・ぐう・・・こんな所で死ねるか・・・」

『・・・・・』


良く見ると老人の腹部や足には銃弾が撃ち込まれている様だった。


『・・・ちょっと痛むぞ』

「な、 なんじゃ・・・」


老人を仰向けにして患部に指を突っ込んで銃弾を抉り出す癒し屋。


「ぐおおお・・・な、 何をする・・・」

『・・・・・良し、 これで銃弾は摘出出来た』


粘液を垂らして老人の傷口を塞ぐ癒し屋。


「お・・・おぉ・・・治って行く・・・じゃと?」

『さて・・・と』


怪人から人間態に戻る癒し屋。


「お前は葵!?」

「誰でも良い、 お前は誰だ?」

「こ、 この研究所の所長の魚目だ・・・」

「その所長が何で銃で撃たれている?」

「副所長の高野目が所長の座を奪い取る為にどさくさに紛れて撃って来たんだ!!」

「そうか、 君に幾つか質問が有る」

「答えられる事なら何でも答えよう、 だがなるべく早くしてくれ」

「そうか、 まず研究員を見かけないんだが・・・」

「研究員は地下の研究施設から逃げて居る筈だ」

「地下か・・・盲点だった」

「私も所長室から逃げる途中だった、 一刻も早く逃げよう」

「逃げる? 私達から逃げられるとでも?」

「そうじゃない、 お前達が怪人相手に無双いた時点で本社からは

この施設を処分せよと命令が下ったのだ」

「処分?」

「自爆だ」

「・・・・・・・」


沈黙が包んだ。


「自爆!?」

『自爆ねぇ、 僕は甲殻が有るから平気だし君も治せるだろ?』

「中枢がやられたらアウトなんだよぉ!! あとどれ位で爆発する!?」

「大体後十分位・・・」

「マジ!?」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る