第210話【無双】

何だこれは、 と鶴瓶は思った。

確かに孤児達は怪人になり立てで怪人としての戦力は低い。

しかし100人単位の怪人を相手にこうも一方的に倒されるとは思っていなかった。

次々と孤児怪人達を屠る夢宮と癒し屋。

だが一方的にやっている訳では無い。


『くぉら!!』


孤児の一人が体を構成する蔦を絡ませて夢宮の甲殻の剣をグルグル巻きにして使い物にならなくした。


『うおおおおおおおお!!』


次々と攻撃を加える怪人達、 効果は殆ど無いに等しいが

効かないのならばと関節技に持ち込み始めた。


『これならばイケる・・・』


しかし、 癒し屋がカバーに入り的確に怪人達をバラす。


『くっ・・・駄目か、 誠也君、 君の能力で彼等を攪乱する必要が有る』


大麻の怪人である誠也に能力の使用を促す鶴瓶、 しかし


『・・・・・誠也君?』


誠也が居ない、 何処に消えた?

実は誠也は危険だと最初から感づいて別のルートから脱出していた

この場所が何処だか分からないが怪人としての身体能力が有るのならば問題無く

人里に出られると判断したらしい。


『・・・・・逃げたのか』


鶴瓶は悟った。


『鶴瓶!! 一体如何する!?』


周囲の孤児達が鶴瓶に不安そうに尋ねる。


『・・・・・フルスコップ10を使いましょう』

『!! で、 でもそれはもう他の連中が壊した筈じゃあ・・・』

『残りが有る事を信じてやるしかない!! なるべく時間を稼いで!!』

『分かった!!』


孤児の怪人に指示した後で鶴瓶は走った、 別の出口に

鶴瓶は悟った、 連中は危険だ、 今の内に孤児達を囮に逃げるしかない、 と

誠也が先に逃げた、 ならば自分も逃げよう。


孤児達がなるべく時間を稼ぐ動きを見せる。

彼等が厳しい生存競争を生き延びたとは言え戦闘経験の数は埋められる物では無い。

夢宮と癒し屋は次々と襲い来る怪人達をなぎ倒しながら前に進んだ。

警備員もやって来たが鶴瓶達の仕込みで殆どの武器が使用不可になっているので

彼等も物の数では無かった。


やがて周囲は静寂が満ち始めていた。


『静かになったな・・・』

『はぁ・・・はぁ・・・少し疲れたよ・・・』

『だらしないな・・・如何する休憩する?』

『うーん、 水分を取りたいかな』

『そうか、 そこに自販機有るけど何か飲む?』

『じゃあ水頂戴』


夢宮は自販機を叩き切って中から水を取り出した。


『ありがと』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る