第126話【認識のズレ】

ソファに座り机越しに日暮 根古と相対する鶴瓶と誠也。


「・・・・・アルバイト?」

「えぇ・・・そう言う話では無かったのですか?」

「・・・・・」


さっき見た資料ではそんな話は無かった。

アルバイトと偽ってモルモットを調達してはいない、つまり・・・


「素で勘違いしていると言う事か」

「はい?」

「いや、 こちらの話だ」


如何やらノギクボ製薬の説明を都合よく解釈したのだろうと

鶴瓶と誠也は解釈した。


「それで一体如何言う御用件で・・・」

「・・・・・娘さん、 帰って来てませんか?」

「? いいえ、 まだ帰って来ません・・・・・まだ帰って来ないのですか?

何時帰って来ても良い様に新しい事業を始めたりしているのですが」

「さっきのコンビニのオーナー?」

「えぇ・・・以前に始めた事業は大コケして借金をして

結果葵に迷惑をかける事になってしまいましたが・・・今回は成功させますよ!!」

「一度借金までして事業をやってまた新しい事業・・・

そこまでして事業起こしたいんですか?」

「お金が必要なんですよ・・・葵が将来大学に行く為の資金が必要なのです」

「・・・・・・・・・・」


娘を売っておいて何を言っているんだと言う目をする鶴瓶と誠也。


「あー・・・それだったら奨学金を利用しないか?」

「何言っているんですか!! 最近奨学金で破産したとか良く聞くじゃないですか!!」

「私、 奨学金を利用した事有りますが、 この国の奨学金って相当に甘いですよ

返済を待ってもらえたり色々と制度が充実しています」

「え・・・」


呆然とする根古。


「じゃあ無理してお金を稼がなくても良いと言う事ですか?」

「そうなりますかね

奨学金制度に関してはもっと詳しい方に聞くと良いでしょう

では我々はこれで失礼します」

「ちょ、 ちょっと待って下さい!!

働く必要が無いのならば葵を返して貰えないでしょうか!?」


根古が誠也の腕を掴む。


「いや、 ですから我々も御嬢さんを探しているのですよ、 失礼します」


捕まれた腕を雑に振り払い、 根古の家から出ていく鶴瓶と誠也。


「無駄足踏んだな」

「六頭さんの方が上手くやっていると信じたいが・・・如何だろう」

「さぁな・・・六頭さんが何をしているか良く分からんし、 一旦支社の方に戻るか」

「そうするしかないようですね・・・」

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