第99話【囮】

「私が囮になって犯人を誘き出す!!」

「それは危険過ぎるよ」

「こっちには銃だってあるんだ、 問題無いよ」

「でも・・・」

「悪いけど徹君、 君が反対しても私はやるよ」

「・・・・・分かったよ、 じゃあ僕も一緒に・・・」

「いや囮になるのは私一人だけだよ」

「何で?」

「相手は女子供を襲う卑劣漢、 二人なら襲って来ないかもしれない」

「男と決まった訳じゃない、 肉付きの良い女性を食べたい変わった趣向の女子かもしれない」

「・・・それもそうね」


地図を広げて何処で囮になるか話し合う二人。

議論の結果、 囮になっている与謝野を夢宮が視認出来るビルが有る場所にする事になった。

何か有った場合すぐさま通報出来るようにと言う気遣いである。


「でもそう都合良く襲ってきてくれるかな?」

「確かにね・・・でも何もしない訳には行かないでしょ?」

「それもそうか・・・」


画して囮作戦が始まったのである。


―――――――――――――――――


夜空の下でビルの屋上から与謝野を見る夢宮。


「・・・・・」


夢宮は思案していた、 自分の感覚では怪人の気配が無い。

恐らくこの事件の犯人は怪人では無い、 かもしれない。

確証は無いが・・・ならばこの事件の犯人を如何するのか。

当然ながら捕まえるしかないのだが、 それでも・・・


「・・・・・!!」


夢宮は思案していた。

ほんの数秒、 しかし与謝野の姿を見失うのには充分過ぎる時間だった。


「何処に行った!?」


夢宮は見渡すが何処にも居ない。


「っ!!」


夢宮は携帯電話に手をかけたが・・・


「・・・自分で探した方が早い!!」


ビルの屋上から飛び降りる夢宮。

着地の瞬間だけ怪人になり衝撃を受け止める。


「・・・良し」


そしてダッシュで路地裏を確認する。


一つ目の路地裏、 居ない。

二つ目の路地裏、 居ない。

三つ目・・・


パンパン。


銃声が響く。


「!!」


もう少し奥から聞こえた!!

すぐさま奥の路地裏に移動した。


「居た!!」

「っ~~~!!」


そこに居たのは銃を落とされて

黒いロングシャツを着た男に口を押さえられて拘束されている与謝野の姿だった。


「昼間の奴か」

「どぉりゃあ!!」


飛び蹴りで与謝野から引き離す。

ロングシャツの男は倒されたが受け身を取って立ち上がった。


「やれやれ・・・」

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