第98話【情報共有】

夢宮は周辺を捜索した。

被害者が倒れていた地点、 その周辺、 目撃情報を聞いて回った。

目撃情報はまるで無かった、 聞き込みは警察もやっているので

目撃情報が有れば事件解決に近付いただろうから無いのは当然だろう。

しかし聞き込みの甲斐が有ったのかこんな情報が手に入った。


「そういえば昨日、 なんだかズルズルって何かを引き摺る音が聞こえたな」


何かを引き摺る音、 これが聞き込みの成果である。

そうこうしている内に日が暮れ始めたのでホテルに戻る夢宮。


「御疲れー」


ホテルのロビーで声をかける与謝野。


「どうだった? なんか怪しい奴は居た?」

「あー・・・怪しい奴って言うか電波な奴は居た」

「電波な奴?」

「被害者は感謝して食べられたとか太陽と月に感謝しろとか」

「・・・そいつが犯人じゃないの?」

「怪しいけど言動が怪しいからって決めつけるのは不味いでしょ」

「確かに、 でも調べる事位はしても良かったんじゃない」

「そうだね・・・不覚ったよ」

「他に情報は?」

「ズルズルって音が聞こえたらしい」

「何かを引き摺っていた、 この場合は死体かしら?」

「多分そうだと思う、 そっちは如何だった?」

「とりあえず通勤路を調べてみた」


通勤路から遺体の発見場所は微妙に離れていた。


「この微妙なズレは一体何なのかしら」

「人目に付かない所で襲ったとか?」

「じゃあズルズルって音は? 死体を引き摺る音が鳴るのは変じゃない?」

「どういう事?」

「人目の付かない所で襲うって言うのは分かるわ

でもそれなら死体はその人目の付かない所に放置するんじゃないの?」

「・・・・・愉快犯で死体を人目に付きそうな場所に移動させたって言うのは?」

「在り得るわね・・・胸糞悪い」


嫌そうな顔をする与謝野。


「何れにせよ、 もう犠牲者も三人目、 警察も本腰を入れて捜査するでしょう

夜間の警官の巡回とかも今日から始めるそうよ」

「それは不味いんじゃないのか? この街から犯人が離れるかもしれない」

「それは無いんじゃない?

さっきの徹君の話からすると目立ちたがり屋みたいだし」

「それもそうか・・・」

「とりあえずやる事は決まったわね」

「決まっているのか?」

「ええ、もうこれ以上罪もない人達が殺されるのはまっぴらごめんよ!!」

「???」

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