第5話【一夜明け】

吹き飛ばされた夢宮は倒れた、爆発の衝撃は殻が受け止めてくれたが

ここに長居するのは何となく不味いと思い家に慌てて帰り

泥の様に眠った。


そして一夜明けた。


「・・・・・」


横になったまま目が覚めた夢宮は手を伸ばした。

甲殻に包まれた怪人の手では無く、普通の人間の手がそこにはあった。


「・・・・・何だったんだろうか、昨日のは・・・」


夢宮は起き上がり昨夜の出来事を反芻する。


「・・・・・」


夢では無い、手に殴った実感が残っている。

幻では無い、足に踏み潰した感触が残っている。


「・・・・・」


夢宮はテレビを付けた。


『昨夜未明、○×公園で起こった爆破事件には怪人が関わっている可能性が浮上しました

被害にあった佐伯 譲二さんは怪人に襲われたが別の怪人が現れたと――――』


妄想では無い、ニュースでもやっている。


「・・・・・現実、なのか?」


実感として自分が怪人を殺した事の実感が湧いてくる。


「・・・・・」


恨み骨髄の怪人を殺した感想は如何か?

真っ当な人間ならば命を奪った事に忌避感を覚えるだろう。

復讐者ならば一定の折り合いが着いただろう。

快楽殺人鬼ならば狂喜乱舞しただろう。


「顔を洗うか・・・」


夢宮の心に到来したのは全て違う。


「・・・・・」


水を流し顔を洗った鏡に映った自分の顔を見る夢宮。

鏡に映った自分の顔は不機嫌な顔をしていた。


「・・・・・」


腹立たしい、この世に生きている怪人が只管腹立たしくて仕方が無い。

殺し尽さねば気が済まない。


「・・・・・っ!!」


夢宮は鏡を叩き割った、意味等無い、唯猛烈に腹立たしいのだ。


「・・・・・・・・・・」


夢宮は通っていた高校を辞めた、理由は『叔父が怪人に襲われて不安になった』

と適当に理由をでっち上げた。

夢宮は自分はもう怪人を殺さずにいられなくなっているのだと本能で理解した。


自身が蜘蛛怪人の様な気に喰わない者を見つけ次第殺さずには居られない怪人になったと自覚した。


彼は両親の遺産を全て引き出す校則違反で取得した免許を取得したバイクに跨り

怪人を殺す為の旅に出たのだった、果たして彼の旅の行く末はどうなるのか

未だ誰も知る事は無い、だが




「奥さん聞いた?町内会長が行方不明になったんですって」

「あらやだ!!また例の蜘蛛怪人の仕業?」

「さぁ?佐伯さんの旦那さんが襲われてから蜘蛛怪人の噂は聞かなくなったわねぇ・・・

次の町内会長を早く決めなきゃ」

「そうねぇ・・・でもあの町内会長って何と言うか変な方でしたよねぇ」

「そうね、この間怪人の犠牲者が襲われた事を天誅と言ってましたわよ」

「天誅?正直常識を疑う発言ですわね・・・」



人を嫌う人間は人に嫌われる。

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