第3話【慟哭】
町内会長が帰り道を歩いていると
正面からキャリアウーマン風の女性が歩いて来る。
「あら佐伯さん、お帰りですか?」
「いえ、町内会長、これからまた出勤です
急ぎの会議が急に入って来まして・・・」
「そうでしたかー、大変ですわね」
「いえ、旦那が良くやっていますので」
「主夫って奴ですか・・・それは男として」
「急いでいるので失礼します」
そう言うとスタスタと佐伯は先に行った。
「・・・・・」
そして日が傾いて夜になった頃、夢宮は自宅の居間で一人考えていた。
これまでの事、これからの事、果たして自分は町内会長の養子になるべきか否か
様々な思いを巡らせていた夢宮は頭の中で一つの疑問にぶち当たった。
「何で・・・」
これまで何百回、何千回、何万回も思った事である。
何故両親が怪人に襲われなければならなかったのか?
そしてこれから何百回、何千回、何万回も思う事だろう。
何故叔父が怪人に襲われなければならなかったのか?
何故何故何故、その疑問が延々と彼の脳内をリピートする。
「何で・・・!!」
胸に抱いたのは怪人に対する強い憎悪、憤怒、殺意。
「何で父さんや母さんや叔父さんがこんな目に遭わなければならないんだ!!!!!
何で何だ!!僕や父さんや母さんが何か悪い事をしたのか!!!!!
何でだよ!!何で叔父さんは襲われなくちゃならないんだ!!!!!」
今のちゃぶ台を思い切り叩く夢宮。
ベコッ!!と崩れるちゃぶ台。
『えっ?』
自分の手を見る夢宮
自分の手がまるで甲殻類の様な形になっているのを認識する。
『何だこれ・・・え?』
自分の声が何だか妙な事に気が付く。
体を触ると体の感覚も可笑しい、混乱する夢宮。
姿見で自身の姿を見る、そこに居たのは・・・
『な、何だコレ!?』
そこに立っていたのは目は大きく赤く輝き
体中が甲殻類を思わせる殻に身を包んだ二足歩行の『怪人』だった。
『な、何だ!?どうなっているんだ・・・!?』
混乱する夢宮、だが本能が叫ぶ。
”外に出ろ!!”
『え・・・?』
”外に出ろ!!走れ!!お前の求める答えがそこにある!!”
『・・・・・』
夢宮は一瞬迷ったが本能の慟哭に従い、家を飛び出して走った。
脚力は信じられない位に向上し自転車並のスピードを軽々出せている事に驚いた。
そして脚は止まった場所は・・・
『ここは・・・叔父さんは吊られた公園・・・!!まさか!!』
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