第2話

 念願の昼休みになった。

 私は弁当箱を片手に携えながら、校舎のとある場所を目指して移動していた。

 逸る鼓動とリンクするように、リズムよく前へ前へと足を踏み出す。階段を一足飛びで駆け下り、踊り場を軽やかに抜けていく。授業終了のチャイムが鳴ってすぐのこの時間はまだ廊下にも人気が少なく、少しばかり急ぎ足になっても特に人に迷惑をかけることがなくて気が楽だ。

 下駄箱まで下りてからスリッパを外履きに履き替え、私は外の空気に晒された。冷気を帯びた風に包まれて、一瞬身体がゾワッと震える。痛くなるほどではないが、それでも確かに寒さを感じた。

 外気と触れ合いながら移動し、その道の途中でこの間友達に言われたことを思い返す。

 「山野さん、水曜日って何か予定あるの?」

 「ついにお姫様にも恋人が出来たの?」

 「相手、どんな人?〇〇先輩ってホント?」

 私が毎週水曜日に教室を離れて昼食をとっているから、変な噂が流れたのだろう。女子高生の大半はゴシップ記者みたいなものだから。まあ指摘は当たらずとも遠からずといったところだ。

 私に恋人はいない。

 でも秘密の関係は確かに存在する。

 私が向かう目的地。

 そこには今日も彼女がいる。

 私にとって誰よりも、何よりも「特別」な彼女が。


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