瓶のコーヒー牛乳

【夢を見ました】


温泉のロッカールームは混み合っていた。

山の奥なのに非常に人気があるらしいが、混んでいると客同士の雰囲気は悪くなる。特に脱衣所は。

人だらけの浴室はさらにすごいので、逃げるように外に出た。

涼しい風が吹いていて、気持ちが落ち着いてきた。


カメラを上に向けて独り言をつぶやきながら写真を撮ろうとしている初老の男性が立っている。何か悩んでいるみたいで、シャッターが切られる様子がない。

レンズを向けている方を見ると、紅葉が始まったばかりの山と、ちょっと霞んだ青空が見えた。


どこからか天皇陛下が通られるというニュースを聞いたので、とりあえず山を下りて家に帰った。

近所の道は、天皇陛下を見ようという人々でいっぱいだった。

人々は天皇陛下の後に続いてぞろぞろと歩いていく。


家で用事を始めたが、私も歩けばよかったと思っている。暗い家の中では、木格子から外がちらちら見える。

人々の流れが逆になった。引き返しているようだ。

私も行ってみようと外に出た。


外は晴れて暑く、舗装されていない道は土けむりが舞ってかすんでいる。

歩いている人々はぐったりしているように見える。

天皇陛下は土蔵のような喫茶店で休まれるということなので、行ってみると思いのほか空いていて、土蔵の中に入ることができた。

黒々と広がっている土間は湿って冷たく、火照った雰囲気を鎮めてくれる。


昭和天皇の奥方様が近くに座っておられた。

私を見ると、瓶のコーヒー牛乳を渡してくださった。

少し驚いたのと緊張したのとで、ちょっと口をつけることしかできなかった。

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