オルガン

【夢を見ました】


アンティークの家具などを店内に飾り、喫茶店をやっている。

友達が来てくれた。

カウンターで、大きなブランデーグラスに氷をあふれるほど入れ、冷たいミルクを注いだ。

「私はね、昔出会った人の真似をしているんだよ」と、ぼそっと言うと、友達ははっと何かを思い出したようになり、「その人に会いに行かなきゃ」と、慌てて店を出て行った。

薄いガラスでできたブランデーグラスに溶けてない氷が残っている。


棚に飾っている赤いガラスに午後の光が差し込み、まぶしくなってきた。

光に背を向けて古いオルガンのふたを開けた。

鍵盤が所々浮き上がっているのをコツコツと指で抑えてみる。


緑の草が生い茂る川べりで、タクシーを待っている。

4人くらいで乗り込み、タクシーは山の中に入ってくねくね走る。

道の両側にずっと続く並木には、大きな柑橘類がたわわに実っている。

どこまでもどこまでもオレンジ。

昔、石畳のある町でよく見かけた風景に似ている。


店のカウンター席にさっきの友達が座っている。

私は氷の溶けかけたブランデーグラスを洗って、新しい氷でいっぱいにして冷たいミルクを注いだ。

彼女は少し飲んでから、ガラス窓の外を見るように横を向いた。


「でも、あの人は違う商売を始めたんだから、もう私達とは関係ないじゃない」とつぶやいてみる。

店の隅で小さなオレンジが、籠いっぱいに詰められ、ホコリをかぶっている。


私は壊れたオルガンの両端にオレンジを置いた。次に真ん中、そしてその間に一個ずつ。

彼女はその様子をじっと見ていたが、近づいてきてオルガンを弾き始めた。


・・・さっき山で聴いたあの歌。

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