アパート

【夢を見ました】


広がる畑のど真ん中に高級アパートが完成し、辺りはお祭りのように賑やかで華々しくなった。

工事には半年もかかり、大勢の職人や幾台もの重機がせわしく動き回り、いったいどんな建物ができるのか、みんな楽しみに見ていたのだ。


やがて新しい住人がわらわらとやってきて住んだ。

そうして人が住んでしまえば誰も珍しがらなくなって、高級アパートも風景に溶け込み、時が過ぎていった。


しかし、アパートの前を通るたびに不思議に思うことがある。

2階の端の部屋には何年経っても誰も住む気配がないのである。

特に問題なさそうなのに、カーテンがかけられたことはなく、透明なガラス窓からは部屋の壁や天井が見えた。


ある日、前を通りかかると、アパートの中から若い夫婦と小さな子供が出てきて私に話しかけた。見慣れない家族である。

アパートで開催されるパーティへのお誘いだった。

話していると、空き部屋だと思っていた部屋にずっと家族で住んでいるのだという。

部屋に招かれたので行ってみた。


ドアを開けると、天まで続いているかのような、豪華で大きな階段が現れた。シンデレラ城か、あるいはリカちゃんハウスかっ!と一人でつぶやいてしまった。

階段の先に小さく老人が見える。

住人が「おじいちゃんと一緒に住んでいるんですよ」と言う。

ああ、おじいちゃんね、と私は納得しようと努力した。

そのおじいちゃんは、決して下には降りないらしい。


1階のリビングではパーティが開かれていた。

しかしワインや料理を手配しているのは私である。大事にとってあったはずの丹波ワインが何故かテーブルに置かれている。

住人たちはソファなどでくつろいで立ち働く気など全く無い。

そしてワインと合うものが食べたいなどと言ってくる。

私が、クリームチーズなどを提案すると、それではなくて“さきいか”が食べたいと駄々をこねる。


付き合いきれなくなって外に出ると、他の小さな部屋で、住人がたくさんの本に埋もれるように居るのが見えた。

このアパートはいろいろな部屋があるようだ。

生活もいろいろあるようで、なんだか楽しくなってきた。

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