きっぷ
【夢を見ました】
解決しようにも不可能な問題ばかりが頭の中で渦巻く。
重い気持ちを引きずる生活を送っている。
仕事にも行き詰まりを感じ、これから先が不安である。
車を運転してでかけても、細い路地に迷い込む事が多くあり、やっと細道を抜け出したと思ったら、元の場所だったりする。
どうにここうにも煮詰まって仕方がないので、図書館に行って手がかりになるような本を見つけようともがく。
借りてきた本に心を動かされて読んでいると、やけにきちんとした身なの男性が自信満々に反対意見を述べ始めた。先生と呼ばれてその気になっている職業の人のように見える。
このような人と議論するのは無駄なことはわかっている。地位を鼻にかけている男性はたいてい私のような社会的価値のない中年女の言い分など聞く耳を持たないからだ。
今度は夜中に図書館に行った。大勢の人でにぎわっていて、子供もたくさんいる。
もう深夜なのに館内は人々の熱気で暑いくらいになっている。
書架は吹き抜けの天井高くまで並び、はしごが何本もかけられて人々が昇ったり降りたりしてせわしなく動いている。湿気と埃も充満して電灯の光もかすんできた。
電灯に照らされた人々の長い影が、ずれ重なりながら動き続けるので、めまいがする。
今回はコールユーブンゲンのような薄いテキストを何冊か借りて帰った。これについては、誰にも意見されたくはない。
家に帰ると相変わらず、いつもの閉ざされた生活に打開策はない。
出口も入り口もない。永遠に一人で思い悩むしかない。
かといって、家の中が暗いわけでもなく、幽閉されているかのような家は、不思議な明るさの広い空間である。
浴室は、長い廊下をずっと歩き、階段をいくつも超えたところにある。
銭湯のように大きく、老婆が何人も湯船につかっている。
いつもそうなので、彼女らが誰なのかは、もはや興味がない。
ある日、バッグの内ポケットに電車のきっぷが入っているのを見つけた。古くて角が擦り切れている。
いつ買ったのか覚えてないけど、使えればここから抜け出すチャンスだ。
よく見ると有効期限は今日。もう日が暮れて夜になったし、何の準備もしていないし、とあっさり諦めて風呂に入った。
しばらく湯に入っていると、急に諦めるのはもったいないと思いたち、時計を見ると今日の日付が変わるまであと15分ある。
図書館も深夜に開いているのだから、駅だって今日中に改札を通れば何とかなるのではないかという気がして焦った。
いてもたってもいられなくなり、すぐに風呂から出て、髪も乾かさずに出かけることにした。娘もついてくると言ってタオルで髪を拭きながら出てきた。
そして、娘と駅に向かって全力で走った。
駅の改札口に3人の若い女性駅員が立っていた。私は夢中で握りしめていた4枚のきっぷを全部出した。
駅員は事務的に、そのうちの2枚に印を付けて4枚全部返してくれた。
私達は間に合った。
行き先はわからないけれど、今日中に改札を通ることができたので、きっとすべてがうまくいく。
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