第4話 夢女ではないのに見た夢

今日の内容はADHDとも双極性障害とも関係が無い。

ちょっと今日は方々に電話連絡したりメールのやり取りをしたりと忙しかったために、疲れた私が久々に昼寝をし、見た夢の話だ。

友人に電話で伝えたところ、文字に起こせと言われたので、まあ、夢日記だとでも言おうか。

だから、軽くスルーしてくれて構わない。


タイトルにあるように私は夢女ではない。

だが、見た夢は夢女じゃねーーか!と言わざるを得ない内容だった。

ピプノシスマイクという作品を御存知だろうか。

近未来の日本を舞台にしたラップバトルの作品であり、メディアミックスも多い。

私は曲を数曲聞いただけだし、マンガも一冊しか読んだことが無い。

なのに夢に出た。

原作を知らないのだから、原作とは異なる世界だろう。

ヒプマイが好きな方は見ない方がいいかもしれない。

さあ、引き返す時は今だ。

準備はいいか?


気付けば私は土砂降りの雨の中、ずぶ濡れである家の前に立っていた。

そして何の躊躇いもなくドアを開ける。

するとそこは白を基調とした三階まで吹き抜けで繋がっている決して広いとはいいがたい部屋だった。

その階段をずぶ濡れの私は雫を滴らせて上っていく。

すると二階部分である青年と鉢合わせた。

山田一郎と呼ばれている青年だ。

彼は風呂上りなのか、腰にタオルを巻いただけの姿で私を見る。

「お前、ずぶ濡れじゃねーか」

すると彼は腰に巻いていたタオルを取ると、私に向かって放り投げる。

「それで、拭けよ。風邪引くぞ」

フルチンで何言ってんだコイツである。

というか、そんなタオルで拭けるか、バカ!

「パンツはけ!!!」

「はぁ?なんだよ、今更気にすることか?」

「いいから、はけ!」

「へいへい、分かったよ」

そう言ってバスルームに戻っていく彼に私は肩を震わせ息を荒くしながら「それから新しいタオルも!」と注文を入れる。

清潔なタオルを受け取って体を拭いていると階下の玄関からドアを開ける音がした。

誰だと確認のために階段の手すりに捕まりながら下を覗けば、そこにいたのは目つきの鋭い男性。

碧棺左馬刻だった。

「おい、そろそろ時間だろ。寂雷先生達、車で待ってるぞ・・・・・・ってお前、びしょ濡れじゃねーか」

そう言うと彼は途中でパっと顔を赤らめて目を逸らす。

「さっさと着替えて来いよ・・・・・・目の毒だ」

言われて気が付く。

私は白いワイシャツに黒の膝丈スカートで、雨に濡れたワイシャツの下、着けている下着が透けて見えていた。

言われるままに近くにあった部屋に押し込められ、そこで私は黒のフォーマルなワンピースに着替える。

髪を乾かしたかったが、どうやらその時間はないらしい。

「オラ、時間だ。お前も来い」

私は二人に続いて家を出る。

一郎も左馬刻もキリっと決めた服装だ。本来の彼らがスーツを着ることなんて無いだろう。

雨は少しばかり弱くなっていた。

家から少し離れた駐車スペースに白いセダンが止まっている。

車まで近寄れば後部座席に神宮寺寂雷と飴村乱数が並んで座っている。

一郎は後部座席の扉を開くと乱数の隣に座る。

そして左馬刻は助手席に座った。

「えーと、これはどういう」

「寂雷先生はお疲れなんだ、お前が運転しろ」

「はぁ?!」

左馬刻の言葉に私は目をむく。

車はいわゆる外車、左ハンドル。

「無理!左ハンドルとか!!」

「何、心配いらないよ。君ならば安全運転できる、そう思うから任せるんだ」

「そういうあなたが最も安全な、運転席の後ろの席に座っているのは偶然?」

「アハハっ、おねーさんこわぁい」

私をおねーさんと言ってくれるのか。

ありがとう、そしてすまない、どう頑張っても私はBBAだ。

仕方ない。

運転席に座り、座席をスライドさせ、シートベルトを締める。

が、ここで大きな問題にぶち当たる。

おそらく寂雷の車であろうコレは、彼の身長に合わせてハンドルの位置が高かった。

クラクションの位置が私の眼前の位置と変わらないくらいには。

つまるところ、前が見えない。

「ねぇ、ハンドルの位置が・・・・・・・」

「さっさと車出せよ」

「いやだからね、ハンドルの」

「いいから出せ」

ギロリと睨まれた私は仕方なくギアをDに入れた。

エンジンは既にかかっていたから。

それにしても前が見えない。

通常あるだろう所を探してもハンドルの位置調整のボタンは見当たらず、私は精一杯背筋を伸ばして視界を確保しようと頑張る。

頑張るのだが、いや、これは無理だろう!?

「どこへ行くの」

「首相官邸。あの女のところだ」

「ねえ、ほんとに前見えないんだけど」

「俺が指示してやる通りにハンドル切ってればいいだろ」

「いや、確実に事故ると思うのだけど」

後部座席をミラーで覗けば、寂雷は目を閉じて静かに微笑んでいるし、乱数は飴を舐めながらご機嫌だし、一郎はスマホで何かしているようだ。

助手席の左馬刻が要所要所でどちらへ曲がれと指示をくれるが、如何せん視界は通常の三分の一程度。

嫌な汗が私の背中を流れ落ちる。

しかも左ハンドル。ウィンカーなどのレバーも正反対なのだ。

最初の左折の際、ワイパーを動かしてしまった私を乱数が爆笑するくらいには勝手が違う。

これが夢なら醒めてくれ!!

そう思ったところで、目が覚めた。


どうだろう。

夢女じゃない女が見た夢は。

実に、実に不可解な、悪夢だった。

疲れ果てて昼寝をしたのに、夢のせいで尚更に疲れた。

まったくどうして、本当に厭になる。

一度で嫌ではなく厭になるほどに、だ!

皆さんも、悪夢にはくれぐれもご注意を。

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