Nocturne of Snow ――或る少年の唄――


 凍てついた氷の砂漠

 溶かしてよ 心を



 優しい海の静寂しじまに抱かれ

 蝶の夢も見ぬ深い眠りの

 世界でひとり守られていた

 外界そとの声を聞かぬまま


 微睡みの中で聴いた唄は

 焔を歌い涙していた

 消えた面影 失くした温度

 水より冷たい氷の中に



 知っていたはずの世界に

 君の声は聞こえない



 銀色の砂時計

 夜の闇に傾く


 記憶掠めた黒い翼は

 焔を纏い海へと散った

 雪降る灰に独り呟く

 守護まもりを願いはしなかったのに



 自分の分さえ持て余すのに

 他人の命は重すぎる



 黒い翼は空へと昇り

 僕は地上に縫い止められた


 背負わせられた犠牲いのちでもって

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る