第176話甘え

家に帰り、寝室に入ると凜はベッドに座って無言で横を叩いていた、晴斗は脇から抱き締めると、股がって見詰めた。

「何、着替えないの、着替えさせてほしいの?」

「…ご褒美‥満点なんでしょ」

「なにが欲しいの?金?」

「…ふざけないでよ」

「ふざけてないよ」

「…私を困らせて楽しい?」

「最近は怒ったり困った顔見るの好きだね、てか声が小さいよ」

「…顔持って見詰められて‥恥ずかしいの」

「退けてとか退いてって言わないから」

「…ご褒美ください」

「また思い出したのか‥話逸らしたのにな、何が欲しいの金?」

「…話‥戻さないで、分かってるでしょ」


晴斗は首を傾げると、キスしていた。

「キスで良かった?」

「…短いけど嬉しい、晴くん座って」

「着替えてからでいいか?」

「うん」


二人は着替えると、晴斗はベッドに座って待っていたが、凜はベッドに乗って壁に凭れて座った。

「…晴くんは‥枕元に座って」


座り直すと、凜は晴斗の股の間で寝転ぶと片足を抱き締めて横になった。手を頭に置かれると「撫でて」と甘声を出していた。

「皆の前で手を繋いで登校して頑張ってたね」

「恥ずかしかった‥慣れなくてごめんなさい」

「人は人、凜は凜のペースで良いからね」

「…うん、ありがと」


凜の頬を撫でていると手を捕まれ、頭を擦るように指示されて擦っていた。

「…晴くんに擦られると気持ちいい」

「好きな人に擦られてるからじゃないの?」

「そうかも‥晴くんは私が好き?」

「大好きだけど、なんで聞いた?」

「…確認だよ、私も大好きだよ」

「知ってる」

「…恥ずかしくなっちゃったぁ」

「毎日恥ずかしがってるぞ」

「見詰めてくるからぁ」

「凜の笑顔を守りたいから見詰めてるんだよ、直ぐ顔が赤くなるよね」

「…カッコよくて‥好きな人に見詰められるから」

「凜は可愛いよ、日に日に可愛さが増してるね」

「…エヘヘ」

「気持ち悪い笑いかたが出たぞ」


晴斗は足をつねられると、凜の頬をつねっていた。

「…痛い」

「俺も痛かった」

「大好きな人に気持ち悪いって言われて‥嫌だったの」

「ごめんね、拗ねないで」

「やだ、晴くんは学校で拗ねるから恥ずかしかった」

「最近、感情がコントロール出来なくなってきて‥‥誰のせいだ?」

「私?」

「そうだよ、凜の笑顔を見ると落ち着く、凜と居ると甘えたくなる」

「甘えて良いよ」

「今はそんな気分じゃない」

「晴くんは気分屋だね」

「急に落ち込んだり、困らせてごめんね」

「気にしないでね」


凜の頭を撫でながら晴斗は横顔を眺めていたが、テレビに視線を向けていた。

「まだ勉強しないのか?」

「まだいいの、膝疲れてない?」

「疲れてないよ」


言いながら、凜の背後に回り込み抱き締めていた。

「…寂しくなったの?」

「背中が疲れた」

「手を退けて」


晴斗は手を退けると、凜はこっちを向いて抱き締めてきた。

「可愛いなぁ」

「…ありがと」


そっとキスして笑っていたが、凜は頬が染まり「何度もしないで」と顔を隠して、恥ずかしそうに言ってきた。

「凜から無いのか」

「…ない」

「顔見せて」

「やだ」


晴斗は首にキスして遊んでいたが「んっ」と言われると笑っていた。

「…私で遊ばないで」

「顔見せてくれないから」

「…恥ずかしいの‥見ないで」

「キスしたいのに」

「…今はやだ」


晴斗は笑いながら頬を触って無理矢理キスしていたが、凜に横腹を殴られていた。

「…痛い、何で殴る」

「…わかんない‥恥ずかしいの」

「ずっと顔隠してるけど‥恥ずかしいの」

「…うん‥何で恥ずかしいのかわかんないの」


少し体勢を変えて腕枕をして頭を優しく撫でていた、何十分経ったのか、凜は寝息を経てて寝ていた。


凜の寝顔を見ていた。テスト期間中だか晴斗は静かにバイトに出掛けて行った、一人で職場に入ると静かだったが、晴斗は着替えると他のモデルと撮影されていた。


社長が姿を見せると晴斗は挨拶をしていた、撮影を二時間ほどで終わられたが、社長に付いてくるように指示されて外に連れ出されていた。

「晴斗くんはテスト勉強しなくていいの?」

「…気晴らしにバイトでもしないとやってらんない」


社長に笑われると、晴斗はレコーディングスタジオに足を踏み入れていた。

「今日は歌う日ではないのですが‥」

「今日撮れば休めるよ」

「めんどくさい」

「仕事だから」

「…出来高だから‥やるけどぉ」


晴斗は深い溜め息を付くと、準備をしてボックス内に入って歌い始めた、小一時間で歌い終わるとそそくさと帰ろうとしていた。

「晴斗くんこれ」

「花のチケット?」


チケットの表紙には花の絵が印刷されていた、晴斗は明かりで透かして見ていた。

「お花畑にデートでも行ったらと思ってね」

「ありがとうございます」


一緒に事務所まで戻ると19時になっていた、着替えてバイクに股がると凜から着信があった、今から帰るとメールをして家に走らせた。


一時間程でアパートに付くと、凜は仁王立ちで怒っていた。

「…起きたら居なかったから寂しかった」

「気持ち良さそうに寝てたから、ごめんね」

「…ばか、声ぐらい掛けてよ‥電話ぐらい出てよ」

「バイト中は出れなかった、ごめんね…停めるから退いて」


唇を噛みながら退く姿を見て、バイクを停めると、凜を抱き締めていた。

「…16時に起きたら居なかった、帰りも遅い、寂しくてテスト勉強出来なかった」

「…ごめんね、泣かないで」

「…今度から声掛けてよ」

「分かったよ」


晴斗は何度も謝りながら駐車場で抱き締めていた、凜は声を殺して泣いていた。

「家に帰ろ」

「…今は二人がいい」

「夜の散歩に行こ?」

「…うん」


凜は背後から抱き締めると歩きにくそうに散歩していた、家に帰ると凜は晩御飯を温めて、晴斗は椅子に座って待っていた、食べ終わると、晴斗はお風呂に入り、入浴後リビングに姿を出した。

「晴兄おかえり、凜姉ちゃんが寂しがってたよ」

「知ってる、凜寝よ」

「私は?」

「一人で寝て、今日は凜と二人になりたい」


麻莉菜はムッとしていたが、凜が嬉しそうに抱き付いてくると二人は寝室に消えた。


凜は晴斗の膝に座って22時まで勉強をしていた、晴斗がうとうとし始めると、凜に起こされて二人はベッドに横になった。







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