第165話告白…

不機嫌な凜を尻目に、麻莉菜に手を引かれて、麻莉菜の部屋に入ったが、フェイスパックを付けたままだった。

「顔にパックが付きっぱだぞ」

「……」


麻莉菜は自分の顔からパックを剥がした、もう片方の手で握られた手は、ギュッと力が入って震えていた。

「布団持ってくるね」


晴斗は手を離して扉に向かうと、袖を引っ張られ振り向いた。

「…い、一緒にベッドで寝て‥寂しいから」

「分かったよ、枕持ってくるね」

「…すぐ帰ってきて‥」

「寂しがらなくても隣の部屋だからな」


俯く麻莉菜を尻目に、凜の待つ寝室に向かった、入るとテレビを見ていた

「やっぱり来たぁ、私が居なくて寂しくないの?一緒に寝る?良いよ!抱き付かないと寝れないんだから、晴くん子供なんだからぁ」


凜は一人で盛り上がって笑っていた、ベッドを叩かれた晴斗はイラっとした。

「凜が一人で寝れないんだろ、俺は寝れるぞ」

「嘘‥でしょ!いつから一人で寝れるようになったの?」

「…ふざけるな、そっちから一緒に寝たいって言っただろ」

「晴くんが子犬のように一緒寝てあげると喜ぶから、キスだって」

「凜が子犬ように尻尾振ってせがんでくるんだろ」

「晴くんが寂しがらないように‥毎日妹として…嫌々してた」

「…冗談でも嫌々って言うなよ」

「……」


晴斗は口喧嘩が収まらないと分かり、そっと凜を抱き締めて謝った。

「凜と寝るのもキスされるのも、俺は大好きだから怒らないで‥言い過ぎてごめんね」

「私も言い過ぎてごめんなさい、晴くんにされるキス大好きだよ」

「良かった」

「晴くん‥仲直りのキスだよ」


凜にキスされ、やり返すと「もっと」と囁かれてしていた。

「…今日は終わり、続きは明日」

「なんでぇ」

「凜が許可するから、麻莉菜と寝るんだよ、変な気持ちで寝たくない」

「我慢します…」


お互い名残惜しそうに離れた、麻莉菜の部屋に入ると鏡を見ていた、晴斗はそんな姿を眺めていた。

「…なっ、何で勝手に入ってくるの?」

「俺ん家なんだよ、一銭も払ってないよな」

「そんな言い方しないでよ、晴兄が受け取らなかったってママが言ってた」


申し訳なさそうに落ち込んだ麻莉菜を、優しく抱き締めて謝った。

「身内から金取るの好きじゃないんだ、家賃も食費も要らない、麻莉菜のお小塚い増やしてって頼んだんだ」

「…増えてた、ありがとう」

「今度からノックして入る、言い方悪くてごめんね」

「……ゆ、許すから‥離してね」


抱き締めていた腕を離して、謝るとベッドを見ていた。

「でっ、どうやって寝るの?狭くね?」

「…セ、セミシングルだから‥‥」

「三人で寝る?」

「…じ、自分の部屋で…二人きりで寝たい」

「凜じゃなくて良い?」

「……は、晴兄と寝てみたい、し、親戚だから」

「無理して言わなくて良いよ、本当は親戚として見れてないよね」


麻莉菜は、俯いて申し訳なさそうに小声で謝られ、晴斗はのんきにベッドで横になった。

「襲わないから安心して」

「…し、失礼します」

「どうした?横になって良いんだけど…」

「……」


麻莉菜ベッドの上で俯いて正座していた、そっと抱き締めて横になった。

「寂しいときは抱き締めると落ち着くよ…俺がそうだからね」


抱き締めると麻莉菜は「ふぁ」と声を漏らしていた。

「無理して寝なくて良いよ、凜と寝る?」

「…は、晴兄が良い」

「でも震えてるよ」

「…き、緊張して」

「襲わないから安心してね」


晴斗は背中を擦っていたが、麻莉菜は顔が真っ赤になり息が荒くなっていった。

「本当に大丈夫?」

「…だ、大丈夫‥」

「抱き締めてくれないと落ちるぞ」

「…はい」


抱き締められたが、麻莉菜の鼓動が聞こえていた。

「なんで離れるの?嫌なら無理するな」

「…暑いだけで‥嫌じゃない」

「半袖なのに?」

「…うん」


抱き締める手を離すと、直ぐに腕を捕まれた。

「…抱き締めてて」

「暑いんじゃないの?」

「……さ、寂しいから‥」


抱き締めて何十分経ったのか、晴斗は目を閉じたが「晴兄」と数回呼ばれて、寝たフリをしていた。

「…好きなのにどうして分かってくれないの、やっぱり私に魅力が無いの…」


晴斗は独り言を聞いて目を開けると、麻莉菜は目を閉じていた。

「‥‥一目惚れなんだよ、分かってくれないよね、好きにならないかなぁ」

「…ぷっ、ぷぷ」


晴斗は思わず笑ってしまった、目が合うと「起きてるなら言ってよ、何で聞いたの」と恥ずかしそうに布団を被って顔を隠したが、布団を剥がして背中を擦った。

「誰を好きになったか知らないけど、麻莉菜は可愛くて小柄で魅力的だよ、深く聞かないから安心してね」

「…ばか、全然分かってくれない」

「言いたいなら聞くよ?まぁ、悩むなら好きって伝えたら良いよ」

「…相手にされないよ」

「そうかな、本当に麻莉菜は可愛いよ、自信持ってね」


麻莉菜から腰に手を回され、胸に顔を当てられ「私が晴兄の彼女にしてって言ったらどうする…た、例えだから」と言われた。

「断るよ」

「…や、やっぱり断られるんだ、私の何処がダメなの」

「完璧な人間はこの世に居ないよ、大切な人や家族に指摘され、やっと何処が悪いか気付くんだよ、性格、仕草、マナー、とにかく、なんで引かれるか分からないよ、俺だけが注意しても他の人から見ると可笑しいことだらけ…俺が変わってるんだからな」

「……」

「心の底から好きな人を彼氏にして、周りになにを言われても相手に染まったら良いよ、どっちかが折れるからな」

「……」


麻莉菜が静かになると、晴斗がまた口を開いた。

「俺だって凜が彼女と思ってのに、家族なのに付き合うと他の人と一緒が嫌だって(私達は義兄妹の絆で結ばれるよ)とか言われてショックだったよ、凜からキスしてきたのによぉ」

「凜姉ちゃんからキスされたんだね、いつ好きになったの?」


麻莉菜は恋バナが好きなのか、晴斗に顔を近付けて聞いていた。

「最初は酷く当たってたのに優しかった、けど、優しさがマジでウザかった、家出して帰って来ると、玄関で泣きながら抱き締められた、怒られて、凜が大切なんだって思った、兄妹だったからね、無闇に告白でもして、断られたり、付き合って相性が合わなくて別れてると、家族がバラバラになるかもって気持ちも言えなかった、凜に好意がバレないようにずっと冷たくしてたよ、なのに離れなかった、いつも隣に座ってきたり、視線を感じて目が合うと、恥ずかしそうに俯いたり、笑みを送ってきたり、手を握られたり、凜から仕掛けてきたんだよ、寝込みにキスとか…とにかく酷く当たっても優しく接してくれた所だな」

「なんだぁ、二人は付き合ってないんだぁ、晴兄が言ったけど‥奪えばいいんだね」


麻莉菜のニヤニヤが止まらなかった。

「もう絆で結ばれたんだよ、一生凜と居る…何で笑ってんだよ」

「私も晴兄と居たいなぁ」

「バカにしてんだろ」

「してないよ、私が彼女になってあげる、寂しい思いさせないよ」

「うっせぇわ」

「凜姉ちゃんは恥ずかしがり屋だよね、私は恥ずかしがらないよ」

「だから、何で笑ってんだよ」

「…私じゃダメ?」


麻莉菜は唇を噛んで笑いを堪えていた。

「ふざけてるけど、本当に好きな人と付き合えよ、私は遊びだったんだとか言われると、相手がショック受けるよ」

「ねぇ、意外と真面目?」

「毎日ふざけてんだよ」

「…私は本気で言ってるんだよ、晴兄が好きなんだよ」

「あのねぇ、俺はハニートラップに引っ掛からないよ」

「本当に引っ掛からない?」

「なら、何で抱き付いて寝てんだよ、普通なら襲われてるぞ」


麻莉菜は笑みが消えて顔を隠した、晴斗はそんな姿を見て笑い返して、布団で隠された顔を何度も見ていた。

「もう、凜と寝るね」

「…抱き付いて寝るんだよね、私じゃダメ?」


晴斗が起き上がると、布団から出てきて睨むように見つめられた。

「抱き付くだけじゃないんだよ」

「…キ、キスしながら寝るの?」

「バカじゃね?キスしながら寝れるかよ」


晴斗は笑いながら伝えたが、デコを殴られ溜め息をつかれ「なにして寝てるの」と何度も言われて見詰めていた。

「太ももとか触って寝るだけ…」

「…さ、触って寝て良いよ」

「他の子の足見るなって怒られたんだよ」

「見るんじゃない、触るんだよ」

「た、確かにな、さすが変態女の従姉妹だな」

「凜姉ちゃんに言うね、晴兄が変態って言ってたって」

「…あのぉ、脅されないでください」


晴斗は何度も溜め息をついて目を閉じていたが「晴兄って口先だけで根性無いんだね」と鼻で笑われ、バカにされ、麻莉菜の足を急に、腰に乗せて掴んでいた。

「ほっせぇ~」

「…わ、私のこと好きになって欲しい」

「無理だって」

「…ドキドキしない?」

「全然しない」

「やっぱり、凜姉ちゃんじゃないとしない?」

「あのねぇ、足触っただけでドキドキしないから」

「お姉ちゃんのも?」

「あんまりしないかな!てか、なに言わせてんの?」


ずっと太ももを撫でていたが「凜姉ちゃんより好きになってよ」と何度もしつこく言われた。

「…いつまで触るの?」

「寝るまで」

「…凜姉ちゃんに怒られると思わない?」

「思わない」

「…凜姉ちゃんが他の男子に抱き付いてる姿想像してどう思う?」

「仲良しだな」


溜め息をつかれると呆れたと言われ、晴斗は目を閉じていた。

「お姉ちゃんが他の男子とキスしてたらどう思う?」

「凜が幸せなら良いかな、ずっと信じてるからないよ‥‥そう思いたい」


晴斗はニコっと笑みを送った。

「朝、凜姉ちゃんに足触ったよって言うの?」

「言うよ」

「怒られるよ」

「怒らないよ、やっぱり凜と寝るね」

「…何あげれば落ち着くの?どうしたら好きになってくれるの?」

「その、からかいかた飽きない?」

「…好きでもない人に太もも触らせないよ」


晴斗は思い出すように教えた。

「俺は兄妹みたいな幼馴染みの女子と、今でも抱き付いてお風呂に入るよ、足とか触るし、佑真にも抱き付いてたな、まぁ、身内になら触らせても良いんじゃね?」

「はぁ?」

「えっ?」

「ふざけないで、私は好きな人にしか触らせない」

「ならなんで触らせるんだよ」

「…す、好きだからだよ」

「つまらねぇ、他の男なら本気にするぞ」


晴斗はまだ触っていた、麻莉菜は頬を染めて怒っていた。

「ずっと触って飽きないの」

「足だけだから飽きてるよ、やめないけどね」

「…凜姉ちゃんと同じように触って良い、晴兄は落ち着く人が好きなんでしょ、試して良いから」

「あのなぁ、触って落ち着いて惚れるとかならないよ」

「…凜姉ちゃんより好きになって欲しい‥冗談で言ってない」


麻莉菜は笑うこともなく、見詰めて言われた。

「あぁ‥同じように触ったらいいの?」

「なんでめんどくさそうに言うの?」

「ずっと話し掛けられて、寝れないからだよ」

「静かに触って…私を好きになって‥寝たら良い」

「はぁー、触っても好きにならないよ」

「物は試しなんだよ」


晴斗が溜め息をついて呆れると、麻莉菜に数回殴られ腕を掴んでいた。

「俺は暴力女がキライ」

「…もう」

「…わかった、試すから冗談だったのにとか言うなよ」


麻莉菜は頷きながら「呆れないで」と言われた。晴斗はズボンの中に手を入れて「ひゃ」と言うと声を聞いてお尻を触った、お互いに静かになった。


何十分経ったのか「私を好きになってよ、どうして分かってくれないの」と聞こえて、晴斗は認めた。

「俺が本当に好きなんだね」

「…起きてたの…そうだよ」

「気付いてあげられなくて‥本当にごめん…でも、その気持ちは一時的な気持ちだよ、人の気持ちはすぐ変わるからね」

「…なら、私に気持ちが移ることもあるんだよね」


晴斗は目を閉じて、諭すように教え始めた。

「そうなるね、でも、欲しかった家族になって妹になった凜、寂しい時に傍に居てくれた、愛情をくれた、夜寂しくならないように一緒の部屋で寝てくれる、外で家族連れを見ると体調崩して支えてくれた…今まで凜が支えてくれたことなんだ、まだあるんだよ…麻莉菜に気持ちが移る自信がない、傷付けるかも知れないけど‥違う恋をして欲しい」

「…でも、移るかもしれないんだよね」


晴斗は困った表情を向けていた。

「どうだろうね…俺が普段ふざけてるのは、寂しいからなんだ、気が狂いそうになるほどに、まぁ壊れてるんだけどな、正常な判断が出来ないんだ、間違ったことは凜が教えてくれる」

「…私が教えてあげる」

「わがまま言うなって親に言われるよね、諦めないといけないときがあるんだよ、今の気持ちも、この先も、世の中うまくいかないんだよ」

「諦めれないよ」


晴斗は身の上話を少し話していた。

「俺は孤独にされ、他人に裏切られ、邪魔者扱いされ、犯罪者扱いされ、外歩くだけで色々言われて‥気が狂ったんだ…友達以外の他人と距離感近すぎると体調崩すし、身を守ろうと口が悪くなる、今は凜が傍に居て‥怒られて嫌われないように我慢してるんだ、家に帰るとずっと抱き締めてくれる、この先も凜が必要なんだ」

「……」

「麻莉菜には酷かもしれないけど‥諦めた方がいい」


麻莉菜は目を閉じて、声を殺して泣いていた、晴斗はお尻を触ることをやめて、ズボンから手を抜いて背中を擦っていた。

「…私が晴兄にしてあげれたことないの?」

「あるよ、従妹になってくれたこと、初めて会った時は距離感近くて‥正直キレそうだったけど、優樹姉に睨まれたからな、デートで二人で遊びに行ったときと楽しかったよ、二人暮らしで寂しかったけど、来てくれて今も嬉しい、麻莉菜が来てくれて、三人でご飯も食べて、三人で寝たり、たまに三人で学校行ったり…」

「…す、少ないんだ‥‥」

「泣かないでね、麻莉菜からしたら少ないかもしてない、俺からしたら本当に嬉しいんだ、数じゃないよ」

「…本当に私はここに居ていいの?」

「もちろん、気がすむまで居ていいよ、俺は口が悪いからね」

「知ってるよ、先生に絡んでたもん」

「確かにな」


静かになるまで背中を擦っていた。

「もう、安心した?」

「うん、頑張るね」

「な、何を?」

「晴兄の気持ちを変えるんだよ」


晴斗は思わず舌打ちをした。深い溜め息をついて悩んでいたが、麻莉菜は楽しそうに笑っていた。

「なんで諦めないの?」

「良い?人の気持ちは変わるんだよ!」

「真似すんな」


よく喋る麻莉菜に寝かせてもらえるわけもなく、晴斗は朝を迎える。



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