第166話眠たい…

晴斗は何度も欠伸をしていたが、麻莉菜に抱き付かれ、話し掛けられて、気付くと部屋がうっすら明るく、カーテンが色づいていた。

「…マジで寝れなかった」

「嬉しくてドキドキして‥私も寝れなかった」

「…怒る気にならないよ…眠いよ」

「私は目が冴えてるよ、朝なんて来ないで欲しかった」


晴斗は呆れていた、目を閉じても起こされて相槌しないと起こされ、抱き締めないと怒られ、朝から悩んでいた。

「…麻莉菜の朝御飯が食べたい、リビング行って」

「今日はこのままでいい‥寂しいよ」

「ふぁー…眠いんだよ、頼むから寝かせてくれない?」

「…邪魔者扱いされてる気分になるよ‥」

「…ごめんね、静かにしてね」

「まだ晴兄とお話ししたい」

「……」


寝ると起こされ、寂しいと言われて怒れるはずもなく、うっすら目を開けて相槌していた。


何十分経ったのか、凜が部屋に入ってきた。

「二人ともご飯だよ」

「…我の癒しが来た、起こしてくれ、やっぱり抱き締めてくれ、あぁ、やっぱり寝かせてくれ」

「どうしたの?寝てないの?麻莉菜も起きてたの」


お互いに抱き締めていたが、凜は怒らなかった、二人は凜に視線を向けていた。

「私も麻莉菜が大切だから怒らないけど、ずっと抱き付いて起きてたの?」


凜が怒ると、麻莉菜は謝っていた。

「ずっとお尻も太もも‥触られてた…今も」


直ぐに布団を剥がされると、晴斗の手が麻莉菜のズボンの中に入っていたが、晴斗は入れたまま見詰め返した。

「晴くん」

「ん?」

「変なことしてないよね?」

「してないよ、凜みたいに落ち着くか試しほしいって頼まれて‥だから触ってただけ、やっぱり凜じゃないとダメだった…怒らないで‥」


凜は溜め息をついて、無言で二人を交互に見ていた。

「麻莉菜に好きって告白されて、もちろん断ったよ‥俺は凜が好きだからね、凜が麻莉菜にチャンスあげたんじゃないの?」

「あげたよ…晴くんはバカだから気持ちに気づいてないよって教えて、断られたら諦めると思ったからね」

「私は諦めてないよ、人の気持ちは変わるんだってよ、凜姉ちゃんが恥ずかしがると…いつか晴兄に捨てられて私が貰うからね」


麻莉菜が凜に伝えると、晴斗も伝えた。

「凜の居る場所が俺の居場所なんだよ、捨てないよ」

「…うん、私も」


晴斗はズボンから手を抜いて座ると、凜の腕を引っ張って、麻莉菜の前でキスしていた。

「本当に凜が好きなんだって麻莉菜に分からせて諦めさせないとな‥だから、凜も麻莉菜の前だけでも遠慮しないでね」

「…う、うん」


凜からおはようのキスをされるが、麻莉菜は体育座りで首を傾げて凜を見詰めていたため、口ではなく、頬に一瞬触れただけだった。


凜は背を向けて「早くリビングに集まるんだよ」と恥ずかしそうに言って部屋から出ていった。

「…わ、私にないの?」

「何が?」

「…キ、キス‥‥」

「無いね、頬になら良いけど」

「…ほ、頬でいい…」

「ごめんね、求められると嫌なんだ、じゃあなー」


晴斗は眠たいが楽しそうに笑って部屋を出ていった。時間が経つと三人でご飯を食べていた。

「晴くん、欠伸ばっかりしてるよ」

「眠たいからな」


麻莉菜は目の前に座っていたが、こっちを見詰めて食べていた、痺れを切らせた凜は麻莉菜を睨み付けていた。

「晴くんばっかり見てるけど、諦めて!」

「嫌だ…見てるだけで怒らないでよ、晴兄も思うよね」

「確かに怒らなくても…」

「器の小さい女って思われるよ、私なら怒らない…」


隣に座る凜に二人は舌打ちされて静かにご飯を食べていた。洗い物が終わった凜は隣に座っていたが機嫌が悪かった、洗濯物が終わった麻莉菜は足元に座って晴斗の脚に凭れ掛かっていた。

「晴くん…少し寝て良いよ」

「学校で寝る」

「起こすからね」

「良いけど、おはようのキスするから、よろしく」


晴斗は着替えに寝室に向かった、凜も隣で着替え終わると部屋を出たが、麻莉菜が立っていた。

「三人で行こ」

「今から行くか!」


三人で学校に行くことになり、学校に向かっていた。晴斗は二人にコンビニに寄ることを伝えて背を向けた。

「一緒に行こ」


コンビニに着くと二人はお菓子を見ていた、晴斗は眠気覚ましドリンクを手に取り、抹茶とケーキも手に取り支払いを済ませて、二人の元に来ていた。

…スナック菓子とチョコ持って甘いもの好きなんだな。

「晴兄はもう買ったんだね」

「まあな」


二人は飲み物とお菓子を買っていた、外に出ると晴斗は眠気覚ましドリンクを飲んでいた。

「…臭いし不味い‥麻莉菜も眠いなら飲むか?」


麻莉菜は嗅いで要らないと言われ、晴斗は渋々飲んで、吐き気を感じていた。


教室に入ると、机の上でケーキを食べ始めたが物欲しそうに見られていた、フォークでショートケーキを切ると凜の口に運んだ、口を開けてパクッと食べて口を隠してモグモグしていた。


二つ入りのケーキと気付いたのか、クラスメートの女子に「一つあげたら?」と言われた。

「食べさせたかっただけ」


恥ずかしそうに口を止めた凜に、新しいケーキを目の前に差し出した。

「気がすんだから、食べて良いよ」

「…うん」

「食べさせようか?遠慮しなくて良いよ」


一瞬睨まれ、凜は友達とケーキを食べていた。急に晴斗をからかいたくなったのか美優紀に背中を叩かれた。

「食べさせたいんだよね?私が食べるよ」

「食べたいなら遠回しに言うな」


ケーキを一口サイズに切って、美優紀の口に運んだ。

「…えっ?」

「食べたいんじゃなかった? 食べさせて欲しいって言わなかった?」

「…言ってない」


美優紀の落ち着きがなくなる姿を見て、晴斗は恥ずかしがる様子もなく、口元に近付けて楽しそうに笑っていた。

「晴くんからかったらダメ」

「まだ何も‥‥」

「とにかく悪い顔してるよ」

「だって楽しいんだよ、友達と遊んでるだけで怒るなよ」

「表情見て遊んでるんだよね、気持ち悪いよ」

「…友達と遊ぶだけで気持ち悪いって言われるんだな」


晴斗が少し落ち込むと、数人の溜め息が聞こえて「友達の女子だからといって食べさせる勇気が‥凄い」と男子の声が聞こえて、視線を向けると数人の男女が頷いていた。

「棒つきアイスとかクレープとか、味見したいとき手でちぎるか?噛るだろ」


また溜め息が聞こえると、晴斗も溜め息を吐いて呆れていた。

「普通女子の食わないから…なんで呆れる」

「友達に男女差別するんだって‥呆れてんだよ」

「ずっと、月城さんだけにしてるんだと思ってたけど、誰にでも食べさせるんだな」

「友達だけだからな、勘違いすんな」


凜は、何か言いたそうに視線を向けていた、晴斗も視線を合わせていると「凜ちゃんの言いたいこと言って、晴斗くんが間違ってるよって教えた方がいいよ」と友達に言われていた。


凜は膝の上でギュッと握り拳を作り、目を閉じて深く深呼吸していた。

「言いたいことあるなら言っていいよ」

「…本当に晴くんは私が好きなんだよね?」

「好きじゃない、大好きだよ」


見詰めて言うと、凜は「ふぁ」と声を漏らしながら耳まで真っ赤になっていた、聞いていた友達は「よく堂々と言うよな」と言っていた。

「皆の前で好きか聞きたかったの?心配しなくても愛してるよ」

「…ば、ばか‥それだけじゃないもん」

「なら、恥ずかしがらずに言って」

「…晴くんは私が好きなんだよ、その私が他の男子に食べさせてたら‥晴くんはどう思う?」

「凜は優しいから食べさせてんだ‥ぐらいで怒らないよ、器の小さい男って思われたら嫌だからね…凜以外の女子に食べさせると嫌?」

「全然嫌じゃないよ」

「だよな、器の小さい妹じゃなくて良かったよ」


残ったショートケーキを一口サイズに切ると、凜の口に差し出した。

「早く口開けてね」

「要らない」

「お腹いっぱい?」

「…いっぱいじゃないよ」

「なら、兄ちゃんの言うこと聞こうか、食べなさい」


凜は皆の前で食べると俯いたが、晴斗は頭を抱き締めて、小声で囁いた。

「皆の前で頑張ったね、嫌だった?」

「…嬉しい」

「皆の前で食べさせて欲しいときは合図してね」

「うん」

「もう、抱き締めるのやめない」

「…うっ」


凜に押されたと同時に「今日はこそこそ話してたね」と友達に言われた。

「今日は疲れたな…眠たいから、皆おやすみ」


晴斗が突っ伏すと「今日は特に可笑しかったけど、寝てなかったんだな」「バイトが大変なんだね」と言われた。チャイムが鳴ると周りが静かになった。


晴斗が本当に寝ると、凜に起こされた。

「晴くん、チャイムなったよ、寝たらダメだよ」

「…えっ?お休みのキスがまだって?皆の前だから我慢して…恥ずかしい」

「言ってないよぉ、ふざけないで起きなさい」

「…真面目だね、起きるよ」


午前中の授業は凜に何度も起こされ、結局睡魔に勝てるはずもなく、腕組みをしながら寝息を立ててフードを被って熟睡していた。

「晴くんお昼休みだよ、お弁当作ったから食べて」

「……」


凜に耳を引っ張られて起こされると、晴斗は何度も痛いと口ずさんでいた。

「起きなさい」

「…起きたわ、耳元で叫ぶな」

「起きないから悪いんでしょ」

「ごめんね」


凜と友達と食べていたが、晴斗は目を閉じて食べていた。

「晴くん、今寝ると夜寝れなくなっちゃうよ」

「…大丈夫‥今日は凜と一緒寝るから‥抱き付いて寝るから‥落ち着いて寝れるから…」

「晴くん寝ぼけないでよ」

「…正常だよ、昨日も一緒に寝たかったのに‥‥邪魔された」


急にデコを殴られて目を開けると、凜は真っ赤な顔で立っていた。

「皆に寝惚けたフリしてからかったんだよ」


晴斗が笑い出すと、凜は椅子に座り直した。

「どうした? 皆手が止まって…まさか、真に受けたんだな」

「冗談がたち悪いね、一瞬凜ちゃんの反応で信じた」

「全部本当だと思うよね…恵ならどう思う?」


急に話を降られた恵は口に入っていた食べ物を吐き出しそうになって、手で押さえていた。

「吐くなよ」

「わ、私に降らないでよ…ビックリして…」

「だから、俺の言ったことは恵から見て冗談だと思うか?」

「…へっ‥‥‥冗談かな? 晴斗くんの言うこと冗談が多いから、冗談かな?」

「知ってるくせにぃー」


笑いながら恵の横腹を突っつくと、凜に睨まれていた。

「晴くん痴漢だよ」

「違いますぅ、嫌ならやめてって言われますぅ、恵はひゃしか言ってませーん」

「ばかにしてるの?本当に怒るよ」

「ここで夫婦喧嘩するか?」

「もう、晴くんなんて知らない」

「ごめんね」


凜は頬を少し膨らませると、目を細めて睨んできたが、晴斗は投げキッスを送った。

「…ほ、本当に知らない」

「食べたから寝る…皆おやすみ」


晴斗は席を立つと、皆に手を振られて教室を出ていった。保健室に来ると体調が悪いと言ってベッドに横になった。

「飯島くんはお仕事が大変なんだね」

「へっ? ただ寝不足なんです」

「誰も入ってこないから、パーカー脱いで寝なさい」

「…僕のバイトはコンビニです‥かな?」

「雑誌も見たよ、妹さんとキスした姿も見た、誰も入れないから安心して寝なさいね」

「妹って‥義妹って言ってください」


晴斗はパーカーを脱いで「はぁ、保健室の先生は落ち着きますなぁ…おやすみなさい」と言って、直ぐに眠りについた。


休憩時間に凜に起こされていた。

「晴くん夜寝れないよ」

「…明日朝からバイトなんだよ、今からまた寝るよ、良いかな?」

「いつもありがとう、またお越しに来るからね」

「…おやすみのあれ、凜からのが欲しい!」

「良いよ、おやすみ」


そっとキスされると、晴斗は名残惜しそうに見送った。放課後を迎えると凜に起こされて、直ぐに二人は学校をあとにした、家に入ると、晴斗は寝室で着替えてベッドに入った。

「また寝るの?」

「怒らないで…麻莉菜で疲れてるんだと思う、今日は一日中寝たい‥だめ?」

「私しか居ないから甘えたいの?」

「…そうだよ」

「晴くんは特別だから撫でてあげる、子守唄も歌ってあげるね 」

「…うん」

「おやすみのキス要らないの?」

「いる」

「外でも甘えて良いんだよ」

「…凜にしか見せたくない」

「甘えん坊の晴くんに胸も貸すよ」

「…服脱いでして」

「調子に乗ったらだめだよ」

「…うん…今度してね」

「考えます」


晴斗は頭を撫でられて子守唄を歌われながら、凜の胸に顔を埋めて眠った。


晩御飯の時間になっても起こされなかった、バイトの時間まで寝ていた。


バイトが終わると紙を渡されて悩み、家でも一人で悩んでいた。






















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