第164話ド◯

学校から二人で家に帰っていた、着替えて晴斗はベッドに座り込んで、凜は静かに隣に座っていた。

「…晴くんに朝言ったことは謝るから‥元気になってよ」

「歌わされて心が痛いだけ」

「…皆の前で、私が来てから幸せになったって言われて‥嬉し泣きしそうだったよ、私も晴くんと居ると幸せなんだよ」

「こんな情けない、変態な俺でも好きで居てくれる?」

「…うん」


晴斗は静かに抱き締めると、ベッドに倒れ込んで見詰めていた。

「あんまり歌に自信ないから‥歌わせないでほしかった」

「…皆は聞き惚れてたんだよ、発音良かったよ、先生も褒めてたよ…私は抱き締められて歌われて‥恥ずかしかったよ」

「凜のために歌ったんだ、皆はオマケだな」

「また歌ってくれる? カッコ良くてドキドキしたよ、でも、毎日晴くんと居るとドキドキしてたんだったぁ」


凜は満面の笑みを向けられ、晴斗は頭を優しく擦った。

「笑わないなら歌うよ、凜の居る場所が俺の居場所なんだ、あんまり気持ち悪いって言わないでね」

「……私も気にしてたの‥ごめんなさい」

「良いよ、気持ち悪い俺が悪いんだからなぁ」


笑うと背中を摘ままれて、ムッとした表情を向けられた。

「もう謝ったでしょ、勝手にジロジロ見てる晴くんが悪いの、麻莉菜の足も勝手に見たらダメなんだからね」

「もう、勝手に見ないから許してくれる?」

「許してあげる、でも、勝手に見てたら怒るからね!」

「はいよぉ」

「懲りてないでしょ、私のじゃダメなの?」

「さあな、もう疲れたんだ‥静かにして」


晴斗は目を閉じて抱き締めた、すると、凜は背中に回した手に力を入れてキスしてきた。

「麻莉菜の前でキスしてくれるまで無しって言ったよね、約束したよね?」

「…だって、抱き締めるだけなんて嫌だよ、今日頑張って手を繋いで歩いたでしょ、ご褒美くれるって言ったでしょ」

「繋いでないし、騙されないよ」

「繋いで歩いたの!………本当に覚えてないの?」


凜の困った表情を見て、晴斗も困った。

「…ごめん覚えてない…でも膝枕は覚えてる、頑張ったね」

「膝枕のあとにも繋いだんだよ」

「ごめんね、膝枕のご褒美欲しい?」

「いるぅ」

「何がいい?物?金?」


晴斗が笑いながら言うと、頬を膨らませて怒っていた。

「お金で買えない物、私はお金とか物より…好きな人と一緒に居れる時間が欲しいの」

「なら、今がご褒美だね、良かったよ」

「ダメぇ‥晴くんからされるキスが欲しいの!」


晴斗は一度しかしなかった、すると、凜は「ばか、何で一回なの‥あのキスしてよ!」と怒っていた。

「どのキス?」

「…デ、ディープ」

「イタズラしたくなるからしないよ、凜も変態だな」

「変態じゃない、私は晴くんしか見てない、最近の晴くんは他の子も見てるでしょ、今日頑張ったんだよ」

「分かったよ、三秒ルールな」

「嫌だ,お、お仕置きのが‥欲しい」

「ドMだな、さすがにマイナスなんだけど」

「引かないでよ…晴くんが覚えされたんだよ」


凜に股がられ、胸に手を置かれて恥ずかしそうに言われるが、爪を立ててキレていた。

「痛いって」

「…私の心も痛いの、お仕置きって変なこと覚えさせたんでしょ…責任取ってよ」

「濃厚なお仕置きが欲しいんだな、全く何処の変態だよ、本当にいるんだな」

「…欲しいです」


晴斗が股がり返して腕と顔をホールドして顔を近づけていた。

「抱き締めるな、分かったか?」

「…はい」


濃厚なキスをしていた、凜の頬が赤くなり、荒かった。

「もう、気がすんだかな?」

「……」

「聞いてる? もう気がすんだ?」

「…もっと‥お願いします」


目を逸らされて言われると、両頬を手で挟んで目を合わせた。

「注文が多い義妹だな、シーツ引っ張るなら抱き締めて」

「……はい」


また濃厚なキスしていた、何度も凜の声と体が反応すると、さすがに晴斗は止めて寝転んだ、息の荒い凜を見て抱き締めると何度も「んっ」と声を漏らしていた。

「凜起きてる」


返事を待っていると、数分後に瞬きをして抱き締めてきた。

「キスだけで頭が真っ白になったんだね、体が反応してたよ」

「…ごめんなさい」

「凜のことが大好きなんだ、謝らないでね」

「…はい」

「もうキス禁止だな」

「…はい」

「冗談だよ」


晴斗は擦りながら「今日聞き分けがいいけど大丈夫?可愛かったよ、大好きだからね」と優しく伝えた。

「…言い方が変態ですが、私も晴くんのことが大好きです」

「顔見せて、何で俯くの?」

「…恥ずかしいからです、見ないでください」

「嫌です、見せなさい」


凜の顎を持って顔を上げると、顔が赤く、涙目になっていた。

「どうした?大丈夫?」

「…キスだけで‥恥ずかしくて」

「大丈夫だよ、凜はいつも恥ずかしがってるし、俺しか知らないことが増えて嬉しいよ」

「…お仕置きのこと忘れて」

「無理、俺の泣いた姿忘れた?」

「覚えてる…お互い秘密にしよ」


また顔を隠され「俺を傷つけたご褒美いる?」と聞いていた。

「…ごめんなさい、晴くんの言うこと一度聞きます」

「今から叶えてもらうね」

「何したら良いの?」

「まぁ、麻莉菜の前でキスしてくれるまでキスは禁止だからな、破ったら学校でキスするからな」

「頑張るから…寝るとき抱き締めてくれる?」

「良いよ」

「やったぁ」


凜に腕を甘噛され、指を噛まれ「私だけの晴くん、エヘヘ」と言われて、晴斗は「ポンコツ臭くなる」と教えた。

「晴くん嫌がってないね」

「凜は特別な存在だからな」

「ばか」


服の上から胸を噛まれ、晴斗は顔面を鷲掴みしていた。

「すぐ調子に乗るよね」

「愛情表現なんだもん‥もう少しだけ…やっぱり我慢します」

「我慢したからご褒美って言うなよ」

「…バレてたかぁ‥ちっ、ちっ」

「可愛い舌打ちだね」

「エヘヘ」


テレビも見ずに凜の頭を擦ると鼻歌を歌っていた、何十分経ったのか、麻莉菜の「ただいま」と聞こえると、二人で「おかえり」と返事を返した。


リビングに来ると、凜は急いで晩御飯の支度を始めた、晴斗はお風呂の支度をしてテレビを見ていた。麻莉菜が入ってくると顔を覗かれていた。

「晴兄は普通に戻ったんだね、良かった」

「元から普通なんだけど」

「お昼ボーッとしてたよ、お姉ちゃんに手引かれて歩いてたよね」

「凜にも言われたけど、本当に覚えてないんだよ」

「体育授業中に膝枕は?教室から見えてたよ」

「それは覚えてるよ」


鼻で笑われて呆れられた。凜と麻莉菜は晩御飯を作り始めた、お風呂が沸くと晩御飯の前に晴斗はお風呂に向かった、入浴後、二人は先に食べていた。

「待っててくれよぉー」

「良いから、早く座って‥邪魔」

「やっぱり麻莉菜は冷たいな、足とか見てごめんね」

「晴兄って変態だよね、毎日私の足見てたよね!」

「たまに見てたぐらいだと思うんだけど、不快な気持ちにさせて…ごめん」

「気持ち悪いからジロジロ見ないで」

「…ごめん」


食べ終わった麻莉菜はお風呂に向かった、凜は洗い物をして、晴斗はテレビを見ながら食べていた。

「晴くん、洗い物したいから、テレビ見ないで食べてね」

「分かったぁ」


食べ終わって洗い物が終わると二人でテレビを見ていた、すぐに麻莉菜がリビングに姿を見せると、凜がお風呂に向かった。


麻莉菜は白とピンク色でシマシマの上下半袖のパジャマを着て、隣に座っていた。

…寒そうだな。

「新しいパジャマ?」

「買ったばっかりなんだよ…晴兄はお風呂上がりにリビングに来ないよね、来てもお茶飲んで直ぐ寝室に行くよね」

「まあな、てか何塗ってんの?」


麻莉菜はフェイスパックを貼って、腕や足にクリームを塗っていた。

「ボディークリーム塗ってるんだよ、明日もお肌がしっとりなんだよ」

「…高校生だからだろ、ババアか?」

「高校生からお手入れしないと後悔するよ、晴兄も塗る?」

「俺臭いに敏感なんだよ」

「無臭でもちもちになるんだよ」


無臭と言いながら、腕を差し出され嗅がされていた。

「本当に無臭かな?麻莉菜がお風呂上がりだから、石鹸の匂いだな」


晴斗は手をついて、麻莉菜の顔に顔を近付けた。

「…な、なにするきなの」

「顔のパックも無臭かなって、嗅ぎたいんだけど、離れて匂わないってことは無臭?」


晴斗は普通に聞いたが、麻莉菜は俯いていた。

「…む、無臭だよ‥き、急に近付かないで」

「不快な気持ちにさせてごめん」

「…うん」


俯いてクリームを足に塗っていたが、横目で何度も見られて、視線を感じ取っていた。

「俺が邪魔なら部屋に戻るよ」

「邪魔じゃない…久しぶりに晴兄と二人きりだから‥緊張して」

「別に襲わないから警戒しないでね…最近俺を避けてるよね、足とか勝手に見たから? 気持ち悪がられると傷付くから、普通に接して欲しい」


麻莉菜が俯き「ごめんなさい」と小声で言われて聞こえると、晴斗は目を閉じた

「…もう、俺が気持ち悪くて身内に見れないよね? 一緒に暮らすのが嫌なら実家から通って良いよ、俺から悟さん達に伝える、最後に麻莉菜にしてあげれることは、高校卒業するまでの定期代‥支払うことぐらい…気にしなくても引っ越し代も払うよ」


教えて目を開けた。麻莉菜はクリームを塗り終えて、膝の上で握り拳を作って俯いていた。

「毎日不快な思いさせてごめんね」

「……」

「…悩ませてごめん、引っ越しは早めに土日が良いね、連絡して空いてたら…」


晴斗が喋り終わる前に、麻莉菜は顔を上げると涙目になっていたが言ってきた。

「一緒に暮らしてたい」

「気付かないうちに、また不快感与えるかもしれない、実家から通った方が良いよ」

「…気持ち悪いって言ったのも嘘、二人と一緒に居たい…晴兄に冷たくしてたのも‥訳があって」

「まぁ、急に身内になりましたとか言われて、一緒に暮らすと太もも見てくる変態が居ると、不快で冷たく当たりたくなるね、ごめんね」

「不快で冷たく接してたんじゃない…晴兄のこと‥が……とにかく不快じゃないから」

「……」


麻莉菜は頬を涙が伝い、目を合わせていたが、本音を隠すように目を逸らされ「…本当に不快じゃない、三人で暮らしたい、叶わないけど一緒に居たい」と言いながら、子供のように大泣きしていた。

「このまま一緒に暮らそ‥泣かないで」

「……」


晴斗は気持ち悪がられることを怖がり、抱き締めることも擦ることもなかった。


泣き止まない麻莉菜の声が聞こえたのか、凜が髪を湿らせてリビングに入ってきた。

「晴くん何したの?我慢出来ずに触ったとかじゃないの?」

「えっ…………俺は‥何も」

「…晴兄は悪くない‥何でもないの」

「…晴くんごめんなさい」


晴斗は泣く麻莉菜にどう接していいのか分からなかった、凜は麻莉菜を抱き締めて背中を擦っていたが泣き止まなかった。


晴斗は泣いた事情を凜に話すと、麻莉菜も頷いていた。

「晴くん、どうして見てたの?背中ぐらい擦ってあげれたよね」

「……だって、気持ち悪がられるから、接し方が分からない」

「晴兄は‥気持ち悪く‥ない」

「…晴くんもお互いが避けてるんだよ、仲良くしなさい」

「でも、俺は距離感近いらしいし、どう接していいか」

「いつもの‥晴兄で接して」

「麻莉菜も言ってるから、晴くん調子に乗らないこと、わかった?」

「ちょっとわかんない…」

「ばか、襲わないこと‥わかった?」

「了解、襲いません…麻莉菜に少しだけ触るからね」


まだ泣く麻莉菜を、抱き締めて膝に座らせて頭を擦っていた。

「晴くん言い方がキモイよ」

「…ごめん、本当にごめん」

「晴くん、冗談だから落ち込まないで」

「あぁ、良かった」


擦っていた麻莉菜は泣き止んで抱き締められていた。泣き止んだ姿を見た凜はムッとしていた。

「晴くんから離れてよ」

「…今日ぐらい晴兄貸してよ」

「ダメ、私の晴くんなんだよ」

「…晴兄は凜姉ちゃんの物なの?」


聞かれた晴斗は凜に不適な笑みを向けた。

「俺が凜のものならキスして、ここでなぁ」


凜は俯き、握り拳を横でギュッと握って考えていた。

「凜姉ちゃんのものなら考えなくて良いのに」

「麻莉菜の言う通りだな、早くしろよぉ」

「私が晴兄にするよ」

「麻莉菜にキスして貰うぞぉ」


本当にキスするとかわかわれると思ったのか、二人は凜に睨まれていた。

「見詰める暇ないよ、明日、お仕置き欲しくない?」

「お仕置きって何?」

「麻莉菜は分かんないよ、俺と凜の合言葉なんだ‥まぁ内緒」

「…は、晴くんはイタズラ好きでしょ」

「ほとんど凜から誘ってくるんだぞ」

「…そ、そうだけど‥‥」

「凜姉ちゃんの顔真っ赤だよ、イタズラって何?」

「…私の晴くんとの合言葉‥内緒」

「…やっぱり私だけ‥仲間外れなんだ‥‥邪魔物なんだ‥」


急に麻莉菜が啜り泣くと、晴斗は膝に座らせたまま背中を擦っていた、凜は隣に座って二人を抱き締めていた。

「邪魔じゃないよ、ごめんね」

「麻莉菜に私の晴くん1日貸すよ」

「…本当?」

「本当は嫌だけど‥晴くんが良いならね」

「…晴兄に二回も泣かされた‥晴兄って私に1日付き合って」

「泣かされたって言われたら断れない…朝までな」

「凜姉ちゃんも聞いたね、朝までなら良いってよ」

「ちっ、もう晴くん知らないから」

「凜が言い出したんだろ」

「そうだけど、麻莉菜は私の晴くんだからね」

「…晴兄はこんな怖い凜姉ちゃんが好きなの?」

「…いつもは優しいよ、今は鬼だな、でも怒った顔も好きなんだ」


凜から「エヘヘ、私も晴くん好き」と聞こえ、麻莉菜は溜め息をついた。

「…そっか‥お互い好きなんだね」

「好きだけど、落ち込むなよな」

「…凜姉ちゃん‥本当に晴兄借りて良いの? 今ならやめる」

「言ったことだから、麻莉菜に貸します」

「…うん、頑張るから恨まないでよ」

「ショックで落ち込まないでよ」


晴斗がお風呂中に話し合いをしたのか、二人を見て困っていた。

「もう寝るかぁ」

「…わ、私の部屋で寝よ」

「麻莉菜の部屋のベッド狭くね?三人きついぞ」

「…二人だから、晴兄と私だけ」

「えっ?凜はそれで良いの?」

「嫌だけど大丈夫、晴くんは手を出さないでよ」

「どっちだよ、てか出さねぇよ」

「…は、晴兄‥部屋行こ」

「凜の許可あるし、良いよ」


不機嫌の凜を見ながら、21時半頃、麻莉菜に手握られて部屋に向かうが、フェイスパックが付けていた。

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