第155話バイトに連れていく②

指示通りクリーンバックの前に立つと、伝えられた通りに音楽を流され口パクしてると怒られ、歌っていた。


ウォーキングの機械を置かれて晴斗は上を歩きながら歌っていた、少しすると音楽を止められて着替え終わると髪をセットされていた。


晴斗は1つ提案を社長に伝えた。

「宣伝なら、僕一人より他のモデルさんも使って下さい、女性が居ると良いかなっと…思いまして」


社長は考えて、モデルを見渡していた。

「花さんは絶対使って下さい、花さんが動画をアップするから…」


花さんは逃げようと背中を向けたが、社長が止めると苦笑いを向けられた。

「一人で恥かくのは嫌なんでね、先輩も恥かきましょう」


晴斗が不適な笑みを向けると、優菜の声が聞こえた。

「花さん、今の晴に気を付けてね」

「優菜は次だからな」

「…良いけど」


優菜と話していると、固まって動かなかった麻莉菜は口を手で隠して涙目になっていた。

「麻莉菜が優菜のファンなんだよ、写メ撮ってあげて、緊張してるから優しく頼んだよ」


麻莉菜も凜も他のモデルとも写真を撮っていた、晴斗は二人の楽しそうに笑った姿を見て笑っていた。


他のモデルと動画を撮影していた、立てられた柱を通りすぎると音楽を止めて着替えて戻ってくると、麻莉菜も凜も背筋を伸ばして座った姿を見て、晴斗は何度も笑っていた。


16時になると、さすがに晴斗は疲れきっていた、体のことを考えて明日に続きをすることになった、控え室に戻ると麻莉菜も凜も深い溜め息をついていた。

「晴兄、さすがに疲れたよ」

「私も疲れた」

「二人の倍は疲れてるからな」


着替えて挨拶をしてビルをあとにした、三人は家に向かってバイクを走らせたが、ファミレスで晩御飯を食べて帰った。


お互いにただいまと挨拶をして家に入った、着替えて寝室に寝転んでいると、ノックされて麻莉菜を招き入れた。

「何?」

「晴兄のバイト初めて見たけど‥カッコ良かった」

「嬉しいけど言いたくても内緒だからな、シャワー浴びてくる」


晴斗はシャワーを浴びて寝室に戻ってくると麻莉菜も凜もテレビを見ていた。

「明日も来るか?」

「行かない」


二人に断られると落ち込んでベッドに横になった、麻莉菜がお風呂に向かうと凜は横に座って聞いてきた。

「…綺麗で可愛いモデルさん居たね‥私でいいのかなって…」


我慢してたのか、凜は二人きりになると落ち込んでいた。

「凜が好きだよ、どうしたの?」

「…晴くんが楽しそうにモデルさんと話してる姿を見てると…私でいいのかなって‥晴くんを苦しめてないかなって」

「何で俺が苦しむの?」

「…私達兄妹で‥晴くんは家族が大切でしょ、私を傷つけないように演技してるのかなって…」

「本当に凜が大好きなんだ、演技でキスとかしないよ」


凜を横に寝転ばせて抱き締めた、凜が啜り泣くと言ってきた

「…綺麗な人居た、恥ずかしがらない人も居た…私で良いの?」

「なら、優菜を彼女にしていいか?」

「…嫌だよ、優菜ちゃんの腰に手を回してる姿見て嫌だった…」

「指示にしたがっただけ、本当に凜が好きだから演技とか言うな」

「…うん…毎回仕事で女性の腰に手を回してるの?」

「たまにだな、もうそろそろ雑誌が発売されるぞ」

「…買わなきゃね…晴くん‥私を嫌いにならないでよ」

「ならないよ」

「優菜ちゃんのこと‥まだ好きなの?」

「嫌いじゃないだけ、ずっと一緒に居てくれる凜の方が好きだから安心してね」

「うん」


凜の目を見て聞いた。

「凜は‥イケメンのモデルとか見てたけど惚れてないよね?俺も心配したんだよ、話し掛けられてたの見てたから…」

「…話し掛けられただけだよ、晴くんに付いてきたって言ったよ」

「俺を何て言った?」

「お兄ちゃんって麻莉菜と言ったよ、私達はカップルより家族という絆で結ばれてるんだからね…晴くんみたいにたらしじゃないから安心してね」

「た、たらし? お、俺がたらし?」

「優菜ちゃんに聞いたもん」

「なんのこと?」


晴斗は本当に意味が分からずに困った表情を向けた。

「晴くんモデルさんと腕組んだり…遊びに行ってるんでしょ‥手出してない?」

「バイト仲間だからな、てか何言ってんの? 優菜にからかわれたんだな」


凜に雑誌撮影で腕や腰に手を回すことがたまにあると教えると、納得した。

「私からかわれたんだね」

「凜は捉え方可笑しくてアホだからな、そういう所も可愛いけどな」

「アホじゃない」


ムッとしていたが、頭を撫でると笑みが溢れていた、キスしていると麻莉菜が入ってきて凜はお風呂に急いで向かった。

「…キスしてた?」

「そう見えただけだろ」


麻莉菜はふーんと言ってテレビを見始めた。

「俺‥寝たいんだけど…」

「バイト大変そうだったもんね、疲れてるなら寝て良いよ」

「テレビがうるさいんだけど」

「気にしないで寝て」


寝かせる気が無いのか、ずっと話し掛けられていた、凜がお風呂から上がって寝室に入って来たが、麻莉菜はテレビを見ていた。

「もう寝るから、麻莉菜は部屋に戻ってね」

「…二人は私が居たら邪魔?」

「邪魔じゃない」

「部屋に戻るけど‥変な音聞かせないでよ」


視線をテレビに向けたまま言われると、晴斗は言った。

「な、なんでそんなこと言うの?」

「キスした姿見たくない‥考えたくない…毎日わがまま言って‥二人の邪魔してごめんなさい」

「別に邪魔じゃないよ、キスぐらい海外では普通」

「…ここ日本だよ」

「知ってる、おやすみー」

「…もう少し二人と居たい」

「居て良いけど、イチャイチャしたいから見て見ぬふりしてね」

「晴くん変なこと言わないで…」

「馴れてもらわないと…」


晴斗は凜に殴られ、麻莉菜は悲しそうだった。

「麻莉菜も高校生なんだからさ、親に内緒で彼氏作って好きにしていいよ、この家には上げないけどな」

「…はぁ‥やっぱり…辛いよ」

「何が?」

「二人の邪魔したくないのに‥見てると辛い」

「凜が羨ましい?凜を取られるのが嫌とか?」

「…もう分かんない」

「俺が好きとか? 凜と変わってほしいとか?」

「絶対に無い…勘違いしないで」

「なら凜とのキスだけ邪魔しないでね」

「………………無理だよ」


麻莉菜が小声で言ったため、二人には聞き取れなかった。

「麻莉菜泣いてる?こっち向いて」

「……」


ベッドから降りて麻莉菜を除き混むと目元が濡れていた。

「キスの邪魔だからね、麻莉菜は邪魔じゃないよ、勘違いさせてごめんね」

「……邪魔じゃないなら一緒に寝たい…除け者にしないでよ」

「甘えるってお子ちゃまだな、一人で寝れるようになろうな」

「晴兄も膝枕とか抱き付いて寝たり‥歩いたり、子供みたいに甘えてる」

「…うっ‥うっせぇな」


凜は隣で似た者同士と言いながら笑っていた、晴斗は静かにベッドに入って黙り混んだ。

「凜姉ちゃん、私も寝ていい?」

「良いけど、晴くんの隣は私だからね」

「良いよ」


22時前だったが、電気を消して静かになると凜の手を握って先に眠りについた。







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