第144話初めてのバイト
晴斗はバイクに乗って、陽菜の通う高校の門の前に来ていたが、パーカーを着て、フルフェイスのインナーサンシェードを下げて校舎を見ていると不審者のようにジロジロ見られた。
…あっ、連絡するの忘れてたなぁ。
晴斗はフルフェイスを取って電話して待っていた、陽菜が早歩きで来てると分かり、晴斗は声を掛けた。
「陽菜、全力で走れ。」
晴斗が楽しそうに笑ってると、陽菜は鞄で殴ってきた。
「スカートなんだから、走れるわけない。」
「知らん、行くぞ。」
陽菜の友達に二人で手を振ると、晴斗はスマホを見ながらナビを起動していた。
「早く乗って、てかズボン履いて来て。」
「今日体操服ない。」
「なら電車で行ってね、じゃあね。」
晴斗が手を振ると、陽菜は「道知らないよね、私が書類持ってるよ、晴の鞄に入らないよね」と言ってきた。
「見えても文句言うなよ。」
陽菜はスカートを鞄で押さえながら乗ってきたが、学校の前のためか、男子も女子もずっとこっちを見て通り過ぎて行った。
「見られるからさ、住所打って。」
スマホを固定して、晴斗のヘルメットを陽菜に渡して、凜のを被ると走り出した。
信号機で止まると「抱きつくな、運転しにくい」と教えた。
「初めて乗るんだから仕方ないよ。」
「あぁ怖いんだな、落ちるなよ。」
一時間後、ビルの事務所に来ていた、晴斗は初めてのため挨拶をして、用意された部屋に案内されると、服が数着用意されていた。
…髪の色何も言われなかったなぁ…どれ着るんだよ、着替えたらメイクって…嫌だなぁ。
晴斗は手前に掛けられていた服を着ると、メイク室に入り、少しだけメイクされ、ワックスで頭をセットされていた。
…他人に髪触られるの…苦手だな。
髪をセットされると、撮影部屋に挨拶をして入ったが、雑誌の編集者やスタイリスト、カメラマン、デザイナーなどスーツを着た人などが立っていた。
…お偉いさん居ますやん、見るだけで偉い人ってわかるやつ。
急に晴斗は緊張していた、頭を掻きたいがヘアースタイルが崩れるため触れなかった。自分の番が来ると、ジャケット、Gジャン、ネックレス、チノパン、七分丈のTシャツ、春用コートなど何度も着替えされられ、疲れきっていた。
…俺が着そうな服がないな、Gジャンなんて着たことないし、自分に似合ってるかもよく分かんないな。
晴斗は大人っぽい格好をさせられ、二十歳程の女性ともポーズをとると撮られ、楽しそうに笑った表情も撮られていた。
…パソコンで確認するんだな、自分の格好が似合ってるかも分からん。
晴斗はまた着替えされられるとラフな格好をさせられ、少し斜め下を見たポーズも撮らされ、陽菜の肩に腕を置いた写真も、陽菜のスマホでもカメラマンからも撮られ、オッケーが出ると挨拶をして自分の制服とパーカーに着替えると、陽菜を見ていた。
…撮った写真は陽菜のことだから、雪に送るんだろうな。
陽菜も終わると声を掛けられた。
「やっぱり晴は大人っぽい服が似合うね。」
「俺が子供服が趣味みたいな言い方すんな、でも今日着たパーカーは着心地が凄い良かった。」
「まだ売に出てないけど、買い取ったら。」
「そんなこと出来んの。」
晴斗は驚いていると「宣伝になるからね」と陽菜に言われ、晴斗は案内され買い取っていた。
…一万円もしないのか、俺のパーカーより安いな。
「安いな、着心地良かったから高いと思ったんだけどな。」
「晴の金銭感覚が狂ってるんだよ、高校生が安いとか言わないからね。」
「…言われると確かに、高校生が安いっておかしいな、気付かせてくれてありがとな。」
陽菜は溜め息をついて呆れていた、陽菜も着替えてビルを出た。二人はバイクに股がると、晴斗は陽菜の家に走らせた。
一時間程するとマンション前で陽菜を降ろした。
「次も一緒に行こうね。」
「分かったよ、またな。」
「またね。」
マンション前でお互いに手を振り、晴斗は家に走らせた。
晴斗は家に着いて着替えてリビングに足を踏み入れたが、二人に睨まれていた。
「晴兄どこでバイトしてるの。」
「してるけど…内緒。」
「晴くん22時なんだけど、ずっと心配してたんだよ…連絡の一本もないの。」
「バイトが忙しくて連絡出来なかったんだ、二人とも本当にごめん。」
凜はモデルのバイトとは知らずに、バイトをしてることは知ってたが、麻莉菜は納得していなかった。
「バイトってコンビニ、ファミレス、何処でしてるの。」
「内緒って言ったよね。」
「もしかして昨日一緒に歩いてた女と遊んでたんじゃないの。」
「バイトしてるよ、てか最近麻莉菜機嫌が悪いね。」
「…へ、変な女に騙されてるとか、危ないバイトしてるかもって…し、心配してるんだよ。」
凜がテーブルに晩御飯を置くと、晴斗は挙動不審な麻莉菜に教えながら食べていた。
「変な女じゃない友達、てか危ないバイトじゃないからな。」
「髪にワックス付いてるし、デートしてたんじゃないの?」
晴斗が教えても、麻莉菜は聞く耳をもっていなかったため曖昧に返事をしてお風呂に入ったが、お湯が抜かれていた。
…これは麻莉菜の仕業だな。
入浴後、リビングでビーズクッションに座ってテレビを見てる麻莉菜の背後に座って聞いた。
「お湯抜いた犯人は君だな。」
「晴兄が連絡してこないから悪い、お泊まりでもしてくるかと思ってた。」
麻莉菜はテレビに視線を向けたまま怒ってたが、晴斗は麻莉菜を抱えてビーズクッションに座り直して膝に座らせた。
「勝手にお湯抜かれて、寒いなぁ。」
何度も、お湯に浸かれなくて寒いと伝え、麻莉菜を抱き締めていた。
「勝手にお湯抜くと…寒いし、バイトで疲れたんだ。」
「…お湯抜いたこと‥謝るから離して。」
「無理、寒くて風邪引く。」
麻莉菜が振りほどこうとすると、晴斗は力を入れて動けないようにして、やっとおとなしくなった。
「最近機嫌悪いけど寂しいのか、ホームシックか。」
「…違うから離して。」
「寂しいなら皆で寝るか。」
麻莉菜の頭を擦りながら聞くと静かになった。
「晴くん、麻莉菜が困ってるよ。」
「ごめんね、麻莉菜おやすみ。」
凜に睨まれ、麻莉菜から手を離して寝室のベッドで横になっていると、凜も直ぐに入ってきてキスされた。
「今のお帰りのキスだよ、おやすみのキスじゃないからね。」
「疲れたんだ、癒して。」
「何のバイトしてるの?」
「内緒、時期が来たら教えるから待ってね。」
「うん、待ってる。」
急に凜から腕を甘噛みされていた。
「美味しいか。」
「…うん、跡付けないから安心して。」
「23時だからな、噛むの止めて寝かせてくれると嬉しい。」
「明日もバイトなの。」
「休み…ほとんど土日と水曜だよ、他の日もあるけどな。」
甘噛みを止めて、胸に顔を当てて抱き締めてくると、甘声で言われた。
「…今度から早く帰ってきて、寂しかったぁ。」
凜は枕に頭を置いて、ニコッと笑みを向けられてキスすると、晴斗は凜の胸に顔を埋めて、一言言った。
「…俺も寂しかった、凜が居ないとダメなんだな。」
「嬉しい、私しか居ないから甘えて良いよ。」
「…毎日、学校でちょっかいかけてごめんね。」
「私が恥ずかしがるからだよ、悩まないでね。」
「…あぁ‥声聞くと落ち着くから喋ってて。」
「子守唄が良いの。」
「凜の声なら何でもいい、今日の出来事でもいい。」
晴斗は腰に手を回して抱き締め、凜の声を聞くと安心して眠りについた。凜も晴斗が寝ると抱き締めていた。
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