第143話誤解を招く③

晴斗はフードを被って教室に入ると男子に睨まれ、女子に聞かれた。

「昨日の女子って彼女?」

「…え、えっ、昨日?誰それ知らないけど、俺じゃないよ?」


金髪ギャルも聞いてきた。

「昨日フード被ってこそこそしてたよね、今もフード被ってどうしたの。」

「はっ、昨日髪切ったんだよ、てか近寄るな。」


晴斗はフードをギュッと掴んで、机に突っ伏したが、誰の声か分からないが、数人女子に聞かれた。

「髪型見せてよ。」

「昨日デートしてたよね!」

「凜ちゃん知ってるの?」

「彼女居るの、居ないの?」


晴斗は自分の周りがうるさくなると、不機嫌になっていった。

「一斉に喋るな、うるせぇよ。」

「もう怒っても怖くないからね、昨日の彼女か教えてよ。」

「誰か知らんが、昨日の女子は中学の頃の友達なんだ、彼女じゃない、そもそも関係ない……凜が彼女だな。」

「凜ちゃん彼女じゃないんだね、今考えて言ったよね。」

「知らん、凜が彼女かもな。」


晴斗は突っ伏して、誰かの質問に答えてたが「本当にうるさい」と静かに言った。


授業が始まるまで、突っ伏していた。

 晴斗は先生にフードを取りなさいと怒られたが「ここの高校に来てから絡まれ睨まれ、先生は俺の気持ちが分かるんですか、もう顔ぐらい隠させて下さい」とわざと消え入りそうに、泣きそうに言って「もう被ってなさい」と言われると、晴斗は俯いてニヤッと笑った。

…ちょろいなぁ、次の授業も同じこと言おうかな。


晴斗は凜をチラ見すると呆れられていたが、ニコッと笑みを送ると笑みを返された。

…あぁ、可愛いなぁ。


晴斗は何度も授業が始まると、先生に消え入りそうに、泣きそうに言って、同情してもらった。

…ちょろい、ちょろすぎるわぁ。


気付くと、午前中の授業が終わった。

 凜から弁当箱を受け取ると「いつ膝枕」と聞くと、真っ赤な顔になり「…待ってよ」と言われ、一緒に食べていた。


良太は、食事中の晴斗に声を掛けてくると言ってきた。

「晴斗、わざと言ってたよね、消え入りそうに、何でフード取りたがらない。」

「あぁ、本当に泣きそうだったぞ。」

「嘘つくな、髪切ったらしいし見せて。」

「見せねぇよ。」


晴斗は弁当に視線を戻して食べると、正面に座る恵と美月がフードの中を覗いていた。

「何で見てくんの…やらしい女。」

「どうでもいいからさ、フード取って。」

「嫌だ、恥ずかしい…フードに触ったらキレるからなぁ。」


晴斗は少し脅してフードを深く被り直し、俯いて食べていた。

「晴くん皆に見せたら、おかしくなかったよ。」

「お世辞はいらない。」

「晴くん、いつかは皆にバレるんだよ。」

「恵来て、恵が判断して。」


晴斗は恵と教室の角にくると、フードを浮かせて見せていた。

「さっぱりしたけど、どうしたらそうなるの。」

「…やっぱりおかしいんだ、義妹にも笑われたし…もう誰にも見せない。」


恵が呆れると、クラスメートが気になってたが、晴斗はフードを深く被り直した。

「…見せなきゃ良かったな、恵も髪のこと言うなよ。」

「本当におかしくなかったよ、目立つなって思ってね。」

「…絶対誰にも見せない、さすがに‥無理。」


晴斗は急いで食べ終わると、机に突っ伏したが、誰かがフードに触ると怒っていた。

「触るなって言ったよなぁ、誰や。」

「ごめん。」

「ギャルだったか、お前も笑うんだろ、絶対見せねぇからなぁ。」

「笑わないから見せて。」

「しつこい、俺のメンタルが折れた。」


またフードを深く被って教室を出ていった、飲み物を買っていると麻莉菜が来た。

「晴兄、本当にフード取らないの。」

「うるさいぞ、おかしいって笑われる。」

「そうかな、カッコ良かったよ。」

「笑ったの誰だったかな、てか一人に見せたら呆れられた、誰にも見せないからな。」

「多分驚いたんだと思うよ。」

「違うね…俺の髪が可笑しかったんだ、マジでバラすなよ。」


晴斗は急いで教室に戻り、凜に椅子を近付け、膝に頭を置いた。

「凜、辛いんだけど…帰っていいか。」

「ダメ、髪可笑しくなかったよ、カッコいいよ。」

「もう信じない、凜も家で呆れてた。」


晴斗はクラスにいた人に見られてると分かり、凜のお腹に顔をくっ付けて、腰に両腕を回した。

「…凜見られてる、さすがに恥ずかしい。」

「座ったら良いでしょ。」

「…嫌だ、もう早退したい…心が折れたんだ。」


凜は皆の前だが、フード越しに頭を擦ってきた。

「晴くん、次体育だよ。」

「トイレで着替える。」


晴斗は男子に睨まれてることも知らずに、昼休みを膝枕で楽しんだ、トイレで着替えると、一人早めに外に座っていた。


体育の鎧塚先生が2階から声を掛けていた。

「飯島、パーカー脱がないとダメだからな。」

「…無理です、ダメなら見学します。」

「髪切ったらしいな、来て見せてみろ。」

…何で知ってるんだよ。


晴斗は二階まで上がると、人が居なくなると先生に見せていた。

「その髪型はいいんだが、髪の色はダメだ、明日染め直しなさい。」

「無理ですよ、バイトしてるんで。」

「どこのバイトがその色許すんだ、生徒指導室に来なさい。」

「えっ、何でですか…連れ込んで何する気ですか。」

…確かに、黙って染めたんだった。


鎧塚先生は呆れると、生徒指導室ではなく職員室に連れていかれ、担任の島野彩花先生前に立たされ怒られ始めた。

「その目立つ色は何ですか。」

「金髪も茶髪も居るでしょ、僕だけダメなんですか。」

「生徒手帳に書いてるでしょ。」

「僕、生徒手帳なんて貰ってないですよ。」


島野先生は「あっ」と言って何か思い出したのか、鞄から生徒手帳を取り出して渡してきた。

「飯島くんごめんね、忘れてた。」

「一目見たときから、彩花先生は綺麗でどこか抜けて可愛らしいので許す、今回だけですからね、では授業に行ってきます。」


晴斗は楽しそうに伝えて誤魔化そうとしたが止められ、色んな先生方に見られ、近付いてきた。

「さすがにその色はダメだ。」

「何で金髪が良くてシルバーが駄目なんですか。」

「そんな銀髪と、よく見たら青が混ざってるな。」

「おさわり禁止です、キャバクラじゃないんですよ…スケベ。」

「…あっ、すまん。」

「何で駄目なんですか、僕が駄目なんですか。」

「まぁ金髪も居ることだから、見なかったことにする。」

「校長さすがです、ありがとうございます。」


呆れられたが、晴斗は少し遅れて体育の授業に向かった。


遅れて授業に出るとサッカーをしていた、晴斗も皆とサッカーをして、交代して凜のサッカーを見ていた。

男子が見て「揺れてる」と聞こえると、凜に近付き「気をつけろ、揺れてるって言ってるぞ」と教えて戻ったが、凜は真っ赤な顔で近付いてきた。

「…晴くん伝えて来ないでよ。」

「だって、凜を変な目で見られたくない。」

「…私じゃないかも知れないでしょ。」

「ちっぱいだからな。」

「おっきいからね。」

「冗談で言ったのに、声が大きい。」


凜が腰に手を当てて胸を張る姿を、男子が見ていたと分かり、晴斗はフードを深く被り直して凜から離れた。

「…晴くん逃げないでよ。」

「さすがに恥ずかしぞ。」

「わ、私の方が恥ずかしいんだからね。」

「分かったからサッカー戻っていいよ。」


凜は隣に座って「交代したんだよ、一緒に見よ」と言われ、晴斗は自分の顔が赤くなるのが分かった。

「晴くん顔が赤くなってるよ。」

「…隣に可愛い子が居るからなぁ。」

「ずっと居るよ。」


晴斗は体育座りで顔を伏せると、凜はクスクス笑っていた。

「…マジで調子が狂う。」

「私の気持ちが分かったでしょ。」

「抱き締めたい。」

「ダメだよ。」


晴斗は溜め息をついて、凜にくっついた。

「汗かいたちゃったから、離れてよ。」

「臭くない、いい匂いだけどな。」

「でも、近付かないで…臭っちゃうから。」


晴斗は無視して腕を組んで笑っているとクラスメートの女子に声を掛けられた。

「また晴斗くんからかってるんだ。」

「まあな、凜は押しに弱いからな。」


クラスメートの女子に笑われ「男子が睨んでる」と教えられ、晴斗は「義兄妹の特権なんだ真似すんなよ」と笑いながら教えた。


晴斗は授業が終わるまで、手を握っていた。


午後の授業が終わると掃除を終わらせ、凜からヘルメットを受け取った。

「今日は遅いかも。」

「…早く帰ってきてね。」


寂しそうに言われると、晴斗は教室で凜を抱き締めて言った。

「凜からも抱き締めて、早く、早く、早くー。」


クラスメートの前で、凜も恥ずかしそうに抱き締めて来ると、小声で言った。

「終わったら帰るからね、待っててね。」

「…気を付けてね、行ってらっしゃい。」

「キスはないの。」

「…お家までお預けです。」

「そっか、行ってきます。」


周りの男子から「羨ましい特権だなぁ」「本当に仲がいいだけか」女子からは「羨ましい」「キャー」と聞こえたが、晴斗は無視して学校をあとにした。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る