第111話海と…晴斗の友達

旅館で昼御飯を食べて、凜と外を散歩していた。

「ごめんね、旅館に帰ってくると、手伝わされるんだ。」

「気にしてないよ、手伝いも楽しいかったよ…でも海‥見えないなぁ。」

「嬉しいか、声が甘えてるよ。」

「晴くんと‥二人きりの旅行が嬉しいんだよ。」

「学校の近くだと手繋いでくれないし、遠出は手繋げるから嬉しいな。」

「…知り合いと会わないって思うだけで嬉しいよ。」


二人は海まで歩きながら、何が嬉しいか言いあっていた。海に着くと、急に凜は砂浜を走り出した。

「晴くん来てよ。」


珍しく声を出した凜を、晴斗は追いかけ、捕まえて抱き締めると、座って海を眺めていた。

「晴くんの膝に座っていい。」

「いいよ。」


冷たい海風が吹くと、凜の手は冷たくなっていた、晴斗は上着を脱ぐと、そっと掛けていた。

「…寒くないの。」

「凜を抱き締めてるから、寒くないよ。」

「…本当は寒いでしょ。」

「まぁね、旅館に戻ったら温めて。」

「…抱き締めたら温もるかな。」

「ずっと抱き締めてくれないと、冷える。」

「…寝るまで抱き締めるね。」

「なら、お風呂も一緒だよね。」

「……それは‥ダメ。」

「そっか‥分かった。」


凜は「また、こっそり入ろっか。」と何故か小声で言われ「秘密が好きだな」と言うと、二人は笑いあっていた。


二人が一時間程海を見てたり、抱き締めたまま、砂に絵を描いて遊んでいると、二人に近付く数人の男女の影が近付いていた。


凜が居てもお構いなし、晴斗は急に背後からそっと目を隠され「だ~れだ」と女性から声を掛けていた。

「誰、知り合いだよな…知らないな。」

「佑真に晴が来てるって聞いたから。」


凜は振り向いたのか、抱き締めている体が動くと、震えていた。

「凜が怖がってるから、顔見せろ。」


晴斗が言うと直ぐに視界が広がった。振り向くと、サングラスを掛けてる人、ピアスが何個も付いてる人、タバコを吸ってる人、体格がいい人、黒髪は居ない…皆晴斗の幼なじみと友達だった。

「皆久しぶりだな、懐かしいな、半年ぶりかな、そうでない人も居るけどさ。」

「ずいぶん、イチャついて、見せつけてんなぁ。」

「なら、見んなよなぁ、寒いから抱き付いてんだよ。」

「何が寒いだよ。」


凜以外が笑い、晴斗が凜に怖いか聞くと、首だけを縦に振っていた。

「不良が来ると怖いって言ってるぞ。」

「晴が不良だろ。」

「違うわ、凜が不良は帰れってよ。」


晴斗は言いながら笑うと、失礼な彼女だなと、凜は顔を覗かれていた。

「凜泣かしたら、海水で水攻めだからな。」

「晴の冗談はたちが悪いな…凜ちゃん、怖くねぇから泣くなよ、分かったか。」

「言い方が怖いわ、ベロベロバーしないと凜笑わねぇよ。」


晴斗が言いながら笑うと、凜に腕を摘ままれていた。

「凜、冗談だよ、痛いから摘まんだらダメですよぉ。」

「凜ちゃんだよね、晴にバカにされてるよ。」

「凜どうした、友達見たいんじゃなかったのか。」


喋らない凜から手を離すと、凜に腕を捕まれ小声で聞いていた。

「本当に怖いのか…前に俺の友達なら怖くないって言わなかったか。」

「……怖いから‥離さないで。」

「分かったよ、何か飲みたいものあるか。」

「…イチゴジュース。」


晴斗は友達を見て「喉乾いた、イチゴジュースと抹茶買ってきて、お釣あげるよ」と聞いていた。


晴斗は二千円を取り出し、見渡すと手渡し「走れ、凜がイチゴジュースを買ってこいと、君に命令した」とふざけて言ったが、凜は消え入りそうな声で「言ってないです」と何度も言っていた。

「冗談って友達も分かってるからね。」

「凜ちゃん、冗談って分かってるから。」

「お釣で皆の買って良いよ。」


サンキューと言って10分で戻って来ると、タバコに火をつけないで咥えたまま、凜に「どうぞ」と優しく言って渡すと「…あ、ありがとうございます」と小さな声で、丁寧にお礼を言っていた。

「もう怖くないよね、見た目不良だけど、いい奴なんだよ。」


友達の女性が凜に近付いて「凜ちゃん怖くないからね…晴が居なかったら、怖い人たちなんだよ。」と言うと、凜は「…ヒィィ」と言って本当に怖がっていた。

「凜に変な声を出さすな、怖がらせるな。」

「つい、凜ちゃんの反応が面白いから、ごめんね。」


凜は晴斗が楽しそうに話していると、警戒心が無くなったのか、友達を見ていた。

「怖くなくなったか。」

「…少しだけ‥怖いかな。」

「凜から言ってやれ、タバコ吸うなって。」

「晴くんはお酒飲んで帰ってきたでしょ。」

「凜ちゃんやっと喋ったね~。」


友達に子供のように扱われ、凜はムッとした表情になっていた。

「…晴くん‥バカにされた。」

「違うよ、凜が可愛い反応するから、からかわれるんだよ。」

「……何でからかわれるんだろ。」

「知りたいなら、こっち向いて。」


晴斗がキスすると、上着で顔を隠していた。

「直ぐに、耳が赤くなるところとか、恥ずかしがるところ…。」

「……もう言わなくていい。」

「さっきまで、晴とイチャついてたのにね。」

「…うるさい。」

「凜ちゃんに怒られちゃったなぁ。」

「後で俺が怒られるな。」


笑いながら言うと、凜に胸を叩かれ、晴斗は手を掴むと抱き締め、謝ると抱き締め返されていた。


凜も晴斗から離れ、普通に話をして、一人海に足だけ浸けて遊んでると、皆で凜に付き合って遊んでいた。

…やっぱり冷たい、友達も冷たいのに凜のために、海で遊んであげてんだな。


遊び疲れたのか、晴斗の傍に来ると、抱き付いて「二人で散歩しよ」と言われ、友達と話をしていた。

「少し二人で砂浜歩きたいからさ。」

「邪魔してたな、また晴も凜ちゃんも遊ぼうな。」


二人で手を振り、友達が去っていくと、凜と砂浜を歩いていた。綺麗な貝殻があったのか、凜に何度も「…綺麗」と言って見せられていた。

「真っ白だな、虹色っぽいのもあって可愛いな。」

「持って帰っても良い。」

「良いよ。」

「…まだ、探してもいい。」


上目遣いで言われ「飽きるまで探せ、下見すぎたら人とぶつかるぞ」と言ったのに、凜は下をジーっと見て、佑真とぶつかっていた。

「痛ってぇ。」

「……ご、ごめんなさい。」


佑真が凜に絡んでたが、顔を上げて誰なのか確認しないのが悪いと思い、何も言わず貝を探していた。

「凜ちゃん、何か落とした、一緒に探そうか。」

「……な、何も落として…。」


声が聞き取れなかったのか、佑真は「えっ」と聞き返すと、晴斗まで走って抱き付いていた。

「……晴くん助けてよ。」

「見てみろ、佑真なんだよ。」

「えっ…本当だぁ‥怖かった。」

「佑真がシーって言うから、黙って見てたんだよ。」

「…やめてよぉ、本当に怖かったんだから。」


佑真に綺麗な貝殻を探してると教え、七海がいっぱい持ってると聞いた、晴斗は「また、自分でピアス作ってんだ」と一言いうと、凜は興味を持っていた。

「…晴くん、七海さんにピアス見せてもらいたい。」

「今から見に行くか、まだ貝殻探すか。」


凜はポケットから、ハンカチに包んだ貝殻数個を、二人に見せ「見て、可愛い貝拾ったんだぁ、七海さんの部屋に行きたいなぁ」と可愛い笑みを見て、佑真は子供を見るように、凜の頭を撫で「いっぱい拾えたな」と言うと、ムッとした表情になっていた。

「…晴くん‥頭触られて、バカにされた。」

「凜が子供っぽいんだよ。」

「凜ちゃんごめんね、ついでに姉さんの部屋で拾う貝殻は綺麗かもね。」

「何個か持って帰ろうか。」

「…ダメだよ。」


3人並んで旅館に帰ると、七海姉さんの部屋に向かった。

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