第112話旅館‥最終

三人で海から旅館に戻ると、七海姉さんの部屋の前に来ていた。晴斗はノックもせずに、一人で入ると、凜に止められていた。

「…勝手に入ったらダメだよ。」

「いいんだよ、七海姉ちゃんいるから。」


することがないのか、七海姉さんはだらしない格好でベッドで寝ていた。晴斗はベッドに潜り込むと抱き締めて起こしていたが、凜に怒られていた。

「凜ちゃん、晴は泊まりに来ると、俺か姉さんか雪の部屋で寝てるんだよ、一人だと寂しいって言ってね、たまに兄さんの部屋で先に寝てる時もある。」

「……子供だ。」

「今は家で二人は一緒に寝てるんだよね。」

「……うん。」


晴斗が添い寝をしてると、佑真と凜はこそこそ話をしていた。七海姉さんが起きると、晴斗は頭を七海姉さんに撫でられ子供のように笑みがこぼれていた。

「晴は変わんないね、身長だけ伸びたね。」

「七海姉ちゃん、髪伸びて綺麗になったよな。」

「彼女の前でそんなこと言って良いの。」

「抱き締めてもそんなに怒ってないし…いいんじゃない。」

「……聞こえてる、離れてよ。」


晴斗は起き上がると、七海姉さんのピアスを勝手に見ていた。

「凜来て…これだよ。」


近寄ると、ピアスを見せていた。凜は手作りの貝殻のピアスを見て「わぁ~‥可愛い」と感嘆の声を漏らすと、七海姉さんは嬉しそうに、照れ臭そうに、凜の顔を見ていた。

「七海姉ちゃん‥使わなくなったピアスないか。」

「雪にあげたけど、見てみるよ。」


手作りの貝殻ピアスと使わなくなった、リボンや星、ハートのピアスを受け取っていた。

「雪が使わなそうなやつだな。」

「凜ちゃんが付けるの。」

「違うよ、俺の従妹になった子だよ。」


七海姉さんは凜の耳を触って見ていた。

「凜ちゃんも開けて、付けたら良いのに。」

「…怖いから。」

「ビビりだからな、凜には無理だよな。」


プリプリと怒って晴斗を叩き、3人で凜を見て笑うと、凜は一人怒って部屋に戻っていった。

「笑いすぎたかな。」

「俺が謝っとくよ…七海姉ちゃんありがとね。」


お礼を言って部屋に戻ると、凜はふてくされていた。声を掛けても無視され、除き混むと俯き、抱き締めていた。

「笑われたのが嫌だったね、ごめんね。」

「…何で七海姉さんを抱き締めたの‥嫌だった‥怒りたくても、晴くんが嬉しそうだったから、怒れなかった。」

「俺の姉さんなんだから、嫉妬しなくていい、凜だけ見てるからね。」

「…浮気したのに。」

「……ごめん。」

「…私‥嫌いになろうって、頑張って悩んで‥でも嫌いになれなかった。」

「悩ませてごめんね、一緒に乗り越えていこ。」

「…この先、一緒に居てくれるよね。」

「凜に嫌われるまで居るから…凜も傍に居てね。」

「…うん。」

「晩御飯が出来るまで…海の約束して。」

「……抱き締めたら‥いいの。」


凜が布団を敷くと、呼びに来るまでテレビも点けずに、お互い抱き締めて話をしていた。出来たのか佑真が呼びに来て「お互い離れられない存在になったんだね」と笑いながら言ったが、凜は「うん」と嬉しそうに返していた。


晩御飯を先に子供だけで食べてると、凜が「美味しい」と何度も言うと、佑真は嬉しそうに照れていた。

「毎日、佑真が作るんだよ。」

「…美味しいです。」

「あ、ありがとう。」


雪が教え、お礼を言われた佑真が真っ赤な顔で照れると、皆にからかわれていた。

「ご飯食ったし、一緒にお風呂入りに行こっか。」


凜が食べ終わると、晴斗は直ぐに凜に、声をかけていた。

「……言わないでよ。」

「あぁ内緒だったね…蒼真兄さん居ないけど、昔みたいに皆で入ろっか。」


雪、七海姉さん、佑真、凜…皆に『入んないから。』と急に言われて晴斗は呆れた表情をして「照れなくていいのに」と答えていた。

『照れてない。』

「皆照れてないってなんだよ、姉ちゃんは一年前一緒に入ったよね、佑真は半年前入ったよね、雪は冬休み入ったよね。」

『晴が勝手に入って来たんでしょうが。』


幼なじみに怒られたが、晴斗は両手をテーブルに付いて「一緒に入ろうよ」と何度も誘ってると、姉さんも雪も佑真も口を揃え『一緒に入ってあげて、晴と入ったら……抱き付いてくる。』と真っ赤な顔で3人は凜を見て言った。

「今日も凜だけか、たまには皆で入りたいなぁ。」

「普通一人で入るんだよ。」

「人は人、俺は俺、比べんな。」

「…本当に変わり者だね。」


晴斗がずっと3人の幼なじみに言うと、七海姉さんは「凜ちゃん、早く連れて行って。」と言って、凜は晴斗の手を恥ずかしそうに掴んで連れていった。


お風呂場に来ると晴斗は納得していなかった。

「昔一緒に入ってたんだよ、もう恥ずかしいのかな。」

「……当たり前でしょ。」

「前も一緒に入ったんだよ。」

「…勝手に入ったんでしょ。」

「そうだけど、別に恥ずかしくないでしょ。」

「…恥ずかしいでしょ。」


晴斗は考えながら、服を脱いで、裸で凜を待っていた。

「早く脱いで、寒い。」

「……」

「もう、遅い。」


寒さのあまり、晴斗は服を脱がせていた。脱がせ終わると、凜は服で隠すが、晴斗はタオルを持たせて、先に頭を洗っていた。

「背中洗って。」

「少し待ってね。」


背中を洗ってもらい、先に浴槽に使っていた。体も洗い終わったのか、凜は隣にタオルを巻いて入ろうとしたが、晴斗は手首を掴んで、タオルを取って後ろに置いていた。

「温泉なんだよ、濁られたくない。」

「…ごめんね。」

「恥ずかしかったんだよね。」

「うん」

「足が伸ばせるっていいよねぇ。」

「……家のお風呂とは違うねぇ。」

「真似してるよねぇ。」

「…してないねぇ。」


真似する凜を見て笑って、笑い合っていた。明日帰るため、旅館は楽しかったか凜に聞くと「…晴くんの友達が怖い人ばっかり、でも優しくて皆面白かった」と友達の話をしていた。

「いい思い出になったかな。」

「…うん、貝殻も拾えたよ、一緒に温泉にも入ったよ、海にも行って砂浜に絵書いたよね。」

「俺も楽しかったなぁ、地元は最高だ。」

「…明日は何時に帰るの。」

「連れていきたい場所があるからね、早めに帰るよ。」

「…楽しみだなぁ。」

「今聞きたいか。」

「…明日まで待ってる。」


凜は「…どこだろう」と小声で言いながら、温泉に浸かっていた。

話をしてお風呂から出ると部屋に戻り、窓を開け、抱き締めて外を眺めていた。

「少し冷えるね、閉めてもいいかな。」

「…いいよ、横になろ。」


布団に入って、横になり、抱き締めて夜空を見ていると凜は「……また泊まりにきたい‥皆優しかった、雪ちゃんも怖かったけど優しかった。」と小声で言いながら泣いていた。

「泣かないで、また来よっか。」

「…二人で‥来よ。」

「いいよ、皆キスマークのこと言わないだろ。」

「…うん。」

「学校の人はガキって思ったろ。」

「うん。」


晴斗は笑いながら電気を消して、布団にもどると…凜の顔に月光が当たり「…凄く綺麗だ」と思わず声に出していた。

「……急に‥どうしたの。」

「月光で…凄く綺麗だって‥ドキっと‥した。」


凜の顔を見ながら言うと、急に緊張して片言で言っていた。

「…晴くんも私でドキドキして…私‥毎日ドキドキしてるんだよ。」


晴斗は急に頬を触られ、月光に照された真っ赤な顔で言われ、色っぽく男の理性が壊れそうになっていた。

「…急に言うな‥イタズラ‥したくなった。」

「…晴くん顔真っ赤だよ、旅館なんだから我慢して。」

「外行こ。」

「…今日はダメ、またにして。」

「…わかった…おやすみ。」

「…晴くん、おやすみなさい。」


凜の胸に顔を埋めて、二人で布団を被り…無心で寝ようとしていたが。

「凜、我は寝れぬぞ。」

「…ふざけないで寝なさい。」

「キスしてないから‥寝れないんだ。」

「毎日してたのに…楽しくて忘れてた。」


また、お休みを言ってキスをすると…眠りについた。








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