第110話旅館の朝は…
朝早くに雪は部屋に入ってくると、同じ布団で寝ている、晴斗だけを蹴って起こしていた。
「…今日頭痛い。」
「バカじゃん、酒飲んだでしょ…浮気されたのに、一緒にお風呂入って、布団で寝るって…なんか変。」
「見てたんだな。」
「まあね。」
雪に笑われ、凜は真っ赤な顔で、晴斗に抱き付いていた。
「あぁ、蒼真兄ちゃんどこ。」
「ご飯食べてる。」
「あいつ、先に帰りやがって。」
晴斗が急に起きると、凜も眠たそうに起きようとして、時間を確認すると4時だった。
「寝てていいよ。」
「…晴くんと居たい。」
3人でご飯を食べに向かうと、皆揃っていた。晴斗は蒼真兄さんを視界に入れ、頭を軽く叩き「スマホ無くしたんだよ」と言うと、ポケットからスマホを取り出し渡された。
「車に落としてたぞ。」
「…良かったぁ。」
「よく鳴るスマホだな。」
スマホを確認すると、麻莉菜と祐希からのメールが届いていた。
「麻莉菜が遊びに来てって、祐希はデート忘れるなって。」
「…私も届いてたよ。」
席につくと、晴斗は七海姉さんが居ることに気づいた。
「七海姉ちゃん久しぶり、半年ぶりだね、冬休み居ないかったけど、高校行ってる、虐められてない。」
「行ってるし虐められてない、晴は帰るのが早いよ、私が居ない時に来て、居ても部屋に来ないし、部屋に行っても居ないし。」
「タイミングが合わないって、気が合うね。」
「はぁ、晴のマイペースは変わんないね。」
「変わんないねぇ、兄妹皆の顔見れて、幼なじみなんだけどね…ご飯食べれたし満足なんだよ。」
「そっちの子が妹なの。」
「そうだよ、ちょっと人見知りだからね。」
「…人見知りじゃない。」
「そっか、七海も雪も蒼真も佑真も爺もババアも‥妹の凜覚えてね、彼女だからね。」
一人一人、目を見て名前を呼ぶと叔母さんに怒られていた。
「晴、誰がババアなのかね。」
「怒られると元気なんだって、嬉しいんだよ、ずっと元気でいて、俺に寂しい思いさせないでね…凜も挨拶して。」
凜は皆にぎこちない挨拶をすると、蒼真兄さんは晴斗をからかいだした。
「見てて、彼女って分かってたけどさ、浮気したのかよ。」
「…分かってたなら、ホテル連れてくなよ。」
「ストレス溜まるんだって言ったからな、酔っぱらってる時に連れていった。」
「…意味わかんねぇから、キャバクラもだよ、服が臭くなる。」
「晴も男だね。」
「七海姉ちゃん、俺は男だけどさ…兄ちゃんの変態直してよ。」
「晴が帰って来ないと行ってないよ、兄さんは嬉しいんだよ。」
「蒼真兄ちゃん、マジで俺としか行かないのか。」
蒼真兄さんは恥ずかしそうに「嬉しいんだ」と言うと、晴斗は横腹を突っついていた。
晴斗が夜居ないうちに、雪と話をしたのか、仲良くなっていた。
「二人は仲良くなったな。」
「晴の浮気を教えたんだよ‥来たら毎回行ってるよね。」
「あぁ…雪は口が軽いんじゃ、凜は学校の名前と場所、教えるなよ。」
凜に「何で」と聞かれ、元カノと雪は何回も遊んだことがあって、場所知られたくないと教えていた。
「…教えちゃった。」
晴斗は目を大きく見開き、雪を鋭く睨んでいた。
「あいつに、教えるな。」
「何で嫌がるの、たまにメール来るよ…晴の場所わかったのって。」
「はぁ、いい忘れた俺も悪いんだよなぁ…会いたくないんだよ、着信拒否してるのに。」
凜は気になるのか、今元カノは近くに居るんですかと敬語で雪に聞いていた。
「居ないよ、場所だけ知らない、晴の場所だけ聞いてくる。」
凜は気になるのか、どんな子ですかと身の乗り出し何度も聞いていた。
「雑誌に載ってるよ。」
「えっ。」
晴斗は二人の会話を聞いていると、雪は雑誌を持ってきて「この子だよ」と教えていた。
「晴くん‥この子なの、私も知ってるよ。」
「二人はバカか、モデルなんてしてるはずなかろうが。」
「晴くん見て。」
晴斗は何度も見せられるが、別人にしか見えなかった。
「違うね。」
「晴、女性は化粧したら、変わるんだよ。」
「知ってるけど、本人に聞いたのか……このモデル化粧濃いな。」
「教えてくれたんだよ、だから晴に教えたんだよ。」
「違うと思うんだが、まぁ本人だとしても、今は凜が居るし興味ない…寝る。」
部屋に戻ろうとして、おばさんに止められ、旅館の手伝いをさせられそうになっていた。
「眠い、頭痛い、まぁ凜は休ませるから。」
「晴、後で呼びにいくから、一緒に寝てて良いよ。」
晴斗は凜と手を繋ぐと、部屋に戻り寝ていた…7時前に起こされ、ハッピに着替えると凜に「カッコいい」と言われキスをすると、給料の出ないバイトが始まった。
朝御飯の配膳を全部屋に、幼なじみとバイトと持って行き、時間が経つと…お帰りのお客に、丁寧な言葉使いで、何度もお辞儀や挨拶してる晴斗を、通路の奥から隠れて見ている凜がいた。
…ずっと隠れてるけど、バレてないって思ってんのかな。
小走りで、凜に近づいて行っていた。
「見てるけど、トイレの場所が分からんないのか。」
「違うよ…晴くん見てたの。」
「飽きるだろ、部屋でテレビ見て待ってて。」
「…飽きないよ、ずっと見てていい。」
「今から階段行き来するから、戻った方がいいよ。」
「…私も手伝えることないの。」
「あぁ、してみたいのか。」
「うん。」
「凜声出せないよね。」
「……ごめんなさい。」
本当に落ち込む凜を見て頭を擦り「叔母さんに聞いてくる」と言って部屋に戻らせていた。
直ぐに聞いて、部屋で待つ凜の元に向かうと、ハッピを手渡し着替えさせていた。
「お客さんが帰った部屋の掃除な、次のお客さんが来るまでにしないといけないからね、ゆっくり出来ないよ。」
「…晴くんと一緒だ。」
急いで着替えさせると、凜を後ろから付いて来させ、お客さんがいると、凜はお辞儀をして、晴斗は挨拶もお辞儀をしていた。
「声も出そうな。」
「…ごめんなさい。」
「怒ってない、信用を裏切ったらダメだからな…この部屋の布団のカバーを外して掃除して換気して、まぁ見せた方が早いな。」
「……」
晴斗が見せると、凜は無言でジーっと見ていた。
「分かんなかったら、教えるからね。」
「…うん。」
「うんじゃない、はいって答えるんだよ。」
「……はい。」
…からかうと面白いし…可愛いなぁ。
部屋の掃除が終わると、お菓子を補充して、次の部屋に向かった。二人で何部屋も掃除していると、直ぐにバイトの知り合いが部屋に入って来ていた。
「晴が来てたんだ。」
「聞いてくれよ、ばばあにさ、俺も客だろ、手伝えって、お金貰えないんだよ。」
「タダでご飯食べて、部屋もあって,客って笑っちゃう。」
「確かにな、人手が足りないのか。」
「足りてる、ホテルも足りてるよ。」
「今日は客多いな。」
「そりゃ、休みだから多いよ。」
「バイトも増えたな、教育できてる、俺に挨拶して来ないんだけど。」
「新しいバイトの子と思われてるんだよ。」
二人が楽しそうに話てると、凜は終わったのか、晴斗のハッピを引っ張って、チェックを待っていた。
「終わったのか…良いんじゃない、どうだバイト。」
「えっ私‥普通に呼んで…綺麗に出来てるよ。」
「良かったな。」
「…うん。」
「何て言った。」
「はいって言いま‥した。」
「違うよ、嬉しいです、先輩ありがとうございますって言って。」
「……」
晴斗はニコニコして、凜の頭を撫でて笑っていた。
「冗談だよ…妹の凜だよ。」
「可愛いね~。」
「凜は恥ずかしがり屋で可愛いよ。」
恥ずかしそうに俯き、晴斗は袖を捕まれると、振り向きキスをしていた。
「引っ張って、キスして欲しいのか、口で言ってね。」
「……怒るよ。」
「怒る前に、昼御飯食べて海行こっか。」
「いいの。」
「寒いけど良いよ、デートだからね。」
「義兄妹で恋人って…家も一緒でしょ、羨ましい。」
「しかも‥二人暮らしだからな。」
「いいなぁ。」
バイトに言われ、晴斗が自慢気に言うと、凜は真っ赤な顔で「早く行こ」と言われ、自分の部屋に戻っていた。
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