第108話春休み…旅行
春休みに入ると、二時間もかからない距離を、三時間程凜のペースに合わせ、休憩を何度もして、バイクで走り、二人は晴斗の地元に来ていた。
「…いつ着くの、疲れた。」
「もうすぐだよ。」
旅館近くのホテルにバイクを止めると、凜は「…旅館じゃない」と一言いった。
「泊まる場所は旅館、ここはホテル、無駄に儲かってるよ…まぁ知らないけどね。」
ホテルの建物を凜は顔を上げて、ずっと見ていた。
「泊まるのはホテルじゃないぞ、早く来て。」
見上げてた凜を少し待って、手を握って少し歩き旅館を見せていた。
「…旅館だぁ。」
「幼なじみの親が旅館もホテルも経営者だからね、良かったかな。」
「うん‥嬉しい。」
抱き付かれ、頬にキスされ、晴斗は裏口から堂々と入っていった。
「……勝手に入っていいの。」
「いいのいいの、ほら皆知り合いだから、何も言ってこないよね。」
「…ホントだ。」
通路を歩くと関係者以外お断りの看板を抜け…離れの家に入ると、部屋の前に来て、自分の鍵で開けようとしていた。
「…なんで、持ってるの。」
「俺の部屋なんだ、開いてた、狭いけどいいか。」
「…一緒ならいいよ。」
…掃除してくれたんだな。
部屋に入ると、和室になって、綺麗に掃除されていた。
「やっぱり掃除してくれたんだな、いい兄妹だ。」
「海が見えるよ。」
「走ってた時に見たいなぁって言ってたし、明日見に行こっか。」
「やったぁ。」
凜は子供のように、抱き付いてくるとキスされていた。
「少し休んでて。」
「…どこ行くの。」
「顔見せてくる。」
二人が話をしていると、ドアの方向から笑い声が聞こえ、振り向いていた。
「皆仕事か。」
「そうだよ、その子が妹。」
「あぁ、怖がらせるなよ。」
「怖がらせてないよ。」
凜は相手を見て固まっていた。化粧をバッチリした金髪を見て、怖がってると分かり、晴斗は凜の前でしゃがむと頭を撫でていた。
「凜は見た目で判断するな、雪は見た目はギャルだけど、同い年でいいやつだよ。」
「…うん。」
晴斗の幼なじみの雪は、凜ちゃんと声掛け、怖くないよと優しく言うと、凜は顔を上げる前に手を握られていた。
凜が安心すると、二人は自己紹介して、仕事があるからまたねと言って、部屋を出ていった。
「…女の子の幼なじみなんだね。」
「双子だから、もう一人は厨房じゃない。」
「…もう一人も女の子‥なの。」
「嫉妬してるのか、男だよここは四人兄妹だからね、うるさいかも。」
「双子かぁ‥会ってみたい。」
「厨房は人の口に入る物があるから、今は会えないよ。」
納得して、話をしながらテレビを見ていると、着物を着たおばちゃんが入ってきていた。
「晴来たなら言いなさいよ。」
「おばばか、今来た、雪が顔見せに来たよ。」
「晴‥手伝って。」
「今日は客なんだよ。」
「あんたは客じゃない、スタッフ。」
「あぁ、着替えてくる、凜は待っててね。」
疲れた凜を残して部屋を出ると、配膳など身の回りの使い方をお客に教えていた。
旅館服のハッピを着て、遅い昼御飯を持って凜の元に戻ってきていた。
「凜もお腹すいてるよね、持ってきたよ。」
「ありがとう‥良いの食べて‥初めてだぁ。」
「えっ、旅館泊まるの、初めて‥なのか。」
頷くと、晴斗は驚いていた、凜は「魚ばっかり」と笑いながら美味しいと言って、白魚のかき揚げや蟹の甲羅に入ったグラタンを食べていた。
「晴、もう来てたんだな。」
「おう、旨いって、佑真が作ったんだよね、練習中だし。」
「あぁ、嬉しいね…俺はお客さんに出せないから。」
幼なじみの佑真は美味しいですと目の前で言われ、照れながらありがとうと凜に言うと、晴斗の横に座っていた。
「厨房戻らないのか。」
「お客さんが食べるまで、洗い物終わったし。」
凜が小声で美味しいと何度も言うと、また照れていた。
「ここに居ると、照れるわぁ。」
「気持ち悪い、出てけ。」
「…晴くんそんなこと言ったらダメだよ。」
「凜ちゃん、晴は顔は良いんだけど、口が悪いよね…悪い人じゃないから仲良くしてあげて。」
頷くと、凜に晴斗は、茶髪の佑真に怖がらないんだなと聞いていた。
「…怖さがない。」
「佑真が凜見てニヤニヤ笑うからだな。」
「違うわ、料理の感想聞いて喜んでんだよ。」
凜にも見せない、楽しそうに笑う晴斗を見て、凜は「本当の兄弟みたいだよ」と言うと二人は兄弟だよと返していた。
「俺も晴も旅館で毎日客と遊んでたからね、俺も物心付くまで兄弟だと思ってたし、今は兄って感じなんだよな。」
「確かに佑真は、弟って感じだな。」
男二人が笑っていると、また違う男性がホテルのスーツを来て入ってきていた。
「晴、夜開けとけ、遊びに行くぞ。」
「蒼真兄ちゃん、またかよ、行かねぇよ。」
「彼女出来るまで連れて行くから。」
「凜が彼女だからさ、マジで行かねぇからな。」
凜を指差して言うと、スーツを着た少し強面の大学生の蒼真兄さんは、凜に何度も彼氏なのか聞いていた。
「…ち、違います。」
「はぁ、凜マジでふざけんな、俺が何処に連れて行かれるか言ったよな。」
「…知らない、晴くん怖い。」
「ごめんね、彼氏って言ってね。」
「…違う。」
「よし、晴嘘付いたから今日帰さない、もう走って逃げても捕まえるから。」
晴斗は佑真に助けを求めていたが「ドンマイ」と言われて晴斗は泣きそうになっていた。
「…浮気になるんだけど。」
「晴は、彼氏じゃないって言われたよね、文句あんの。」
「佑真と行けよ、キャバクラとか行かねぇ…居酒屋だけ行く。」
「久しぶり帰ってきた弟と行きたいんだよ、文句ある。」
「あるよ、まだ高校生で凜が彼女なんだよ…行かないから。」
蒼真兄さんは凜の前に座ると、何度も彼氏か聞いたが、違いますと答え、蒼真兄さんが部屋から出ていくと…晴斗は床を殴っていた。
「…凜は俺がどうなってもいいのか。」
「…怖いけどお兄さんなんでしょ。」
「怖くないけど、もう知らない。」
「…髪も染めて、怖かったの。」
「蒼真兄ちゃんは怖くないから、人を見掛けで判断するな。」
晴斗は夜になると……
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